蒸気機関車に託された文化大革命の凄まじき圧力、軋み。
からの、積もる雪の静寂が喪失の空白を代弁し、宙を彷徨うやり場なき想いは無償の愛としてあのボードに焼き付く。
チャン・イーモウ、真っ裸の傑作。
正直なところチャン・イーモウにここ10年惹かれるところなかったので然程期待してなかったんだけど、コン・リーとの作品だし観ておくかぐらいだったのが、まさか此処迄のもの撮っちゃうとは…
個人的には初期作品のあの興奮に次ぐ。
あの序盤のピークである駅での逃亡劇の終焉迄の画の緊密度が先ず素晴らしい訳ですが、そこからの中盤以降、緊張が解けてからが尚好い!
想いが一層際立つ静寂、20年間取り返しつかぬ程に積もってしまった諦念…
チャン・イーモウ✖︎コン・リー作品はいずれも、先ずそのカメラに魅了されてたものでしたが、今作も溜息出る程の美しさ!
特にラスト、雪舞う駅のホームのあの画なんて!
画を信頼しているからこそ、例えばその空白の20年間を語らなくとも映画として成立するのだ。
いや、そもそも、今作、その背景を殆ど語ってはいない。
バレエ、調律、餃子…人力車…名前を書いたボード…
本作の“記憶”を弄る描写はどこもやり切れなさが胸に迫る。
あのピアノの調律のシーンはズルいよね…
外れてしまった記憶の音階を弄る様。
あれが今作を象徴してた気がする。
そして、あのボード…改めて名前を書き直そうとして、思い出せず確認するとこなんてね…
夫婦が本編の最後に辿り着く諸々を越えての崇高な迄の愛は、そこに至る道を語らないからこそ、より強度と深度を増す。
チャン・イーモウとコン・リー、それぞれのキャリアの最高峰である気がする。
そう言えば『唐山大地震』にも『妻への家路』にも餃子が出てくるんだよね。
あの長きに亘る心の空白、そこを埋めたかったであろう想い。
それを一つ一つに詰めていたのであろう。
