リンダ リンダ リンダ | Electronic Dolphin Eats Noise

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空論上の九龍城

シネパス41/48本目『リンダ リンダ リンダ』
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2015年2月 @ 加古川イオン・シネマ

10年越しの念願!やっとスクリーンで会えたよ! 

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※サントラ、DVD、パーランマウムのミニアルバム

10年前、購入したDVDで初めて見た訳ですが、その時感じた心のざわめきは、10年経ても、朽ちるどころが、より際立つ。

青春映画、そして音楽映画の金字塔である。


所謂青春邦画の常套手段である学園祭物の一つであるんだけど、そう言えば前日観た『花とアリス 殺人事件』の前作『花とアリス』もそうだった。

この二作が同時期に作られている事は結構重要かもしれない。

『リンダ リンダ リンダ』(2005年)と『花とアリス』(2004年)、学園祭を舞台に、その“終わらない日常”を描いたこの二作は、サブカルにケリをつけた二本だったのかもしれなあなぁ。


『リンダ リンダ リンダ』から10年、近い題材での最新作『味園ユニバース』で熟練した腕を魅せた山下敦弘監督と、『花とアリス』から11年で、その前日譚『花とアリス 殺人事件』をより瑞々しく描いてしまう岩井俊二監督。 


バンドブーム直撃世代なれど、あの波に全く乗れなかった私にとって、ブルーハーツって中高生の頃の音楽LIFEの鬼門でもあった(因みに同い年の山下監督も余り思い入れなかったそうだ)。 

実際ラストにブルーハーツのオリジナル流れるんだけど、断然パーランマウムのヴァージョンにこそ高揚する訳で…
パーランマウムの音源は未だヘヴィーリスニングリストに登録されている。  


さて、『リンダ リンダ リンダ』に至る山下敦弘監督のフィルモグラフィーは
『どんてん生活』(1999年)
『ばかのハコ船』(2002年)
『リアリズムの宿』(2003年)
『くりいむレモン』(2004年)
だ。どれも好きだったなぁ。 

今作に至る山下敦弘監督のフィルモグラフィーから滲み出る、あの周囲が高揚する事への自らの距離感への違和を語るに、文化祭、そしてブルーハーツは最適だよな。
時に批評的/自虐的であるのに、今作ではそこが瑞々しく煌めく。


先ずは矢張りあの韓国人留学生をバンドのヴォーカルに誘う迄の展開であろう。

あのオープニングの一連の流れで、バンドと友情、その相関図が一気に辿れ、しかも巧みにペ・ドゥナ演じるソンさんをそこに落とし込む。


そもそもブルーハーツを引き当てる件が素晴らしいよね!

急遽(3日前!)ギターを弾かなくちゃならなくなった為に、難しいの(林檎!)は無理、って流れで古い(推測するに12-3年前)楽譜やテープ入れた箱が見つかったものの、ボーイもユニコーンも知らない…たまたま見つかったジッタリンジンのプレゼントの歌詞に引っ掛って、それのカセットテープを再生しようとしたら、中身がリンダ リンダだった!だなんて、胸ワクワクするわ! 

あのカセットテープ(あれはTDKのUDじゃねぇ?)、香椎由宇演じる恵が、よく知らないからだろうけど、読み取り部分を下向けてラジカセに突っ込もうとするんだよね。あの辺の細やかさ! 


実は今作企画の段階からロックンロール宜しく軽やかに二転三転してて、そのエピソードの転がり方だけでも映画一本撮れそうな程に面白い。
その経緯はDVDに付属したブックレットに詳しい。 

例えば、そのアイデアの大元は2002年の“ブルハの子供たち2002”ってライヴイヴェント迄遡れたり、映画化の噂があった大槻ケンヂの『リンダリンダラバーソール』との混同避けて『ブルハザウルス17』ってタイトルだった時期もあったり… 

第一稿では結果的に脇役に収まったme-ismの山崎優子演じる中島がメインを張っていたり、その中島も最初期には木村カエラでって案もあったり(改訂してる内に売れっ子になってしまったそうで、彼女は特別感謝としてクレジットされている)…

そして、ペ・ドゥナに韓国人留学生を演じさせてVoをやらせるだなんて飛び道具を持ち込んだのは途中参戦となった山下敦弘監督。
これで一気に今作の成功への扉が開いたと言えよう。


例えばここに描かれる思春期の女の子達の厄介な愛憎の中、言葉や文化違うソンさん(ペ・ドゥナ)がいる事で、そのダイレクトさが解きほぐしてくれたりするんだよね。 


藤井かほり演じる教師が、先生なりに一生懸命日韓交流の企画持って来る訳ですが、結局それは頭ごなしでしかなくって、何の気負いも衒いもない“バンド”が言葉も文化も越えちゃうんだから痛快。 

ところで、ここでもペ・ドゥナにチラシを配らそうとしてるのが技ありやね!


何が最高かって言ったら、あの軽音部室だよね。
あの部屋に貼り捲られたポスター群。
約10年前(物語の舞台は2004年)の高校生達は果たして何を聴いていたのか?が、何となく掴める。か? 

軽音部室のポスター群で、先ず目に付くのがやっぱTHE MUSICか。その横にツェッペリンとズボンズって並びにニンマリ。

THE MUSICのポスターに小ちゃなビョークの写真貼ってた? 

他には…コレクターズとか、あとマリリン・マンソンいたよね。

何故だかYとMとOの落書きがあったのも印象的。

前田愛演じるドラマー響子の部屋には宇多田にaikoにデリコ、エゴラッピングなんかのCDも。プリンスの『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』もあった気が…?
ザゼン・ボーイズもどっかで見掛けたな。


因みに本編で異彩放つラモーンズさんとピエールさんですが、勿論ラモーンズさんは偽物で(ロケしてた群馬で選りすぐられた外国人で結成)、ピエールさんは本物。
当初瀧はビョークの予定だったのが、似てる人がいなかった(そりゃそうだ)!


2004年だと、僕個人としてもまだCD売ってる側の人間だったからギリ当時の前線の状況掴めてたんだけど、どうだったっけなぁー?メロコアやスカコアも一段落してたっけ?バンド自体にリアリティが薄れてたかも? 

そうなんだよなぁー。2004年なら多分バンドを組む事自体が既にオルタナ側だった筈で、その滑稽さも何処か孕んでる。

一方で面白かったのが、学園祭の出し物で“CLUB VENUS”なんてのをやっちゃってる強者がいて、教室を真っ暗にして本人は拘りのレコード回してるのに、そこは初老の方や子供の休憩場になっちゃってる(笑)。 


山下敦弘監督だけに日常の描写が好いよねぇ~

あの前田愛演じる響子の日常のリアル。
風呂上がりでドラム練習してる無防備なとこに意中の彼からの電話!
それを伝える兄(近藤公園!)、唐突に腕立て始めるし(笑)。


あと何気に好きなのが香椎由宇演じる恵の自宅に、ギター持って来た萌(演じるは湯川潮音!)、二人が割と深刻な話してたとこに、恵のお婆ちゃんが横切って“中に入って貰いな”と腰折っちゃうとこ。

あのオフなビート! 

バンドの四人でベースの望(Base Ball Bearの関根史織!)の自宅で、髪を乾かすのも忘れ、卒業アルバム見つつ軽く恋バナしちゃってたりのリアリティ。

その直前の買い物も楽しい。望の世話焼きっぷりとか。

 女の子達のあの自宅での気取りなしの無防備さ、そのリアリティは、後々の『もらとりあむタマ子』に通ずる訳だ。 

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一方で、四人が学園祭を抜け出し、知り合いのスタジオに練習に向かうバス内に流れる空気は『超能力研究部の3人』のあの名シーンへと通じた。


すっかり忘れてたけど、あの恵(香椎由宇)の元カレのバンドマン、三浦誠己さんやった!


はぁ~、呟いても呟いても呟やき足りない!
金曜迄のシネパス期間中、もう一回ぐらい観られるか?
本音言えば残り四回全部行きたい!

んだけど、やっぱ、35mmで観たくもなったんだよなぁ…
今回のシネパスでのDCP画質、そこ迄悪くなかったんだけど、例えば校庭遠景でペ・ドゥナ捉えたショットとかちと輪郭が滲んでたり…ってのは気になった。


むかーし『リンダ リンダ リンダ』について書いてたblogあった。


うんで、おかわりシネパス!
月曜日観たばっかなのに、やっぱ、ワクワクするし、笑えるし、泣かせるじゃない。
そして、こんなにも僕らの青春を代弁してくれた映画もなかったのでは?と。


香椎由宇演じる恵子の“意味なんてないよ”って台詞が本作の温度を・空気を的確に捉えている。
意味なんて見出せない、終わりなき日常。
が、僅かにスピードを早め、歩み方を変える。その一瞬に放たれる煌めき。


やっぱ四人のバランスだよね。
見事なキャスティング、配置。
演技面をバンマス“前田亜季”と、演奏面のバンマス“関根史織”で、どっしり固めておいての、香椎由宇とペ・ドゥナの相対から散る火花が美しい。


ペ・ドゥナの一人カラオケのシーンが猛烈に可愛いよね!
ブルーハーツ練習するも、疲れて結局韓国語であの名曲歌っちゃってるし(笑)、店員役の山本剛史とのやり取りも最高!


ペ・ドゥナがねぇ、何であんな奇跡的な在り方出来たのか…?
韓国からの留学生と言う土台を崩さぬイントネーションを保ちつつも、日本語の・あの世代の微妙なニュアンスを使い分ける。
凄い!

あの三浦誠己さん演じるバンドマンに、“恵の元カレ?”と聞くあのニュアンス。
夜の学校に忍び込んでる時に、他メンバーに“パンツ丸見え”と笑い転げ様。
あんな何て事ない日常を、ペ・ドゥナが鮮やかに塗り替える。

あの無人のステージでメンバー紹介の形を取りながら、それぞれへの感謝を語るソンさん(ペ・ドゥナ)にグッと来る。
そして、ライヴ直前、緊張と高揚でくわっ!と瞳孔開いちゃってるソンさん!
すげェよ。


因みに、ペ・ドゥナ演じるソンさんに、恋焦がれ告白するマッキーを演じているのはブレイク前の松山ケンイチ!


事件の発端となる萌を演じたのはメジャーデビュー間もない湯川潮音。
彼女の制服姿ってのもまた乙ですが、すくっと歌う立ち姿の圧倒的なオーラは流石。
昨年の
港町ポリフォニーを思い出した。


香椎由宇演じる恵の母親がりりィさんだったのを、改めて観て思い出したんですが、10年前のりりィさん、随分印象違うな。
昨年の『
ぶどうのなみだ』なんかでのあの姿が強烈に残ってるから余計に。


オープニングの長回しがまた素晴らしい。
最近映画のオープニングでどれだけその世界にシンクロさせてくれるか?ってのが気になるのですが、あの流れは巧みだ。
横移動、奥行き。
状況、事件、人間関係を一気に辿れるのだ。


このシネパスのタイミングで元映や立誠では『超能力研究部の3人』を、そして『味園ユニバース』と京阪神跨ぐ怒涛の山下敦弘梯子、やってみたかった!