『自由が丘で』
『へウォンの恋愛日記』
『ソニはご機嫌ななめ』
観れば観る程に、ますます混乱し、そして後引く魅力に囚われる。
ホント、貴方何者!?
ホン・サンスなんて、同じくKAVCで今月観た『次の朝は他人』が初めてで、その混乱と興奮も醒めやらぬ内の今回の三本立てな訳で、まだまだ、咀嚼中で御座いますが、それでも、これ、相当に手強い。
面白い。でも、その面白さを言葉に変換し難い。
坂道、出会い(主に再会)、お酒、師弟(or先輩/後輩)関係、そして恋愛。
の五つのエレメント。のみ。しかも、全部絶対使う。だけで、ここまで毎回画が豊かに躍動するのか!?と驚嘆する。
何か街並みも毎回同んなじ様な場所選んでるし、キャストも重複し捲り。
油断した頃にズームはするし、OP/EDなんてどれも一緒。
でも、それぞれに似て非なる個性も魅力もある。
ホン・サンス作品、徹底して繰り返されるモティーフにこそ、日々の変わらぬ営みから滲み出る愛しさや可笑しみ、哀しさが見えて来る。
けど、それらをガッサーと掻っ攫うモノにこそ目を向けにゃならん。
あの只事でない“くちづけ”の衝動!
観た四本共に、そのキスシーンの熱量は半端ない。
『自由が丘で』
僕が今月KAVCで観たホン・サンス四本の中では一番完成度高かった気がする。
加瀬亮と言う翻訳者が巧みに機能してた面もあるんだろうけれど、あの手紙や小説の、作品/監督の狙いの理解の手掛かりとして配置に唸るよね。
言葉にワンクッションないと通じない面々が軈て熱い抱擁交わすゲストハウスの空間性、ビール届かずワインでベロベロな三人呑みの構図、落ち着きに行きつつ何や落ち着かん自由が丘。
閉じ込められたトイレでの一息…
錯綜する時勢、欠落した文脈。
故に戸惑い感じる作品かも?なのを、風に飛ばされた手紙の束と、主人公が読み続ける小説のテーマと絡ませる事で、相乗に“理解”を助長させる。
ってのがスタイルのみに陥らない。のが技あり。
あの時勢が行き来する事と、一枚(?)物語が抜け落ちる事で、最新の残像に折り重なる過去、欠落を埋めんとすイメージ、温度差に流れ込む想い等々が心地好いカオス生み、あの坂道を往来する。
加瀬亮演じる主人公が常に手放さない“時間”。
そう、彼は片時も手放さないのだ。
“どんな小説なの?”と聞かれての答え。にでなく、それへの反応にこそ注視したいところ。
何だかなぁー。ホント、ごめんなさい。と、あの人この人…達に謝って行きくなる、そんな作品。
男と女、そのズルく・身勝手で、恐ろしくも後引く愛おしさ。
夢か?現か?いや、恋愛か。
何より素晴らしいのが、あの焼肉屋での席の配置だ。
アレしかない!なその的確なバランス。
ホン・サンスの画の躍動は、人物の完璧な配置で以って約束されたも同然。
故に、いつも呑みの卓を囲み、坂道で出会うのである。
オープニングに登場するジェーン・バーキン。
彼女のへウォンへの無防備な抱擁は、ホン・サンスと言う才能への彼女なりの愛の証であろう。
もう、完璧にタイプやわ、ソニ。
堪らん!
一緒に、届かぬチキンを肴に酒呑みたい!千鳥足で雨の中送って貰いたい!
そんな映画です。
以上。


