リザード好きの症状 | Electronic Dolphin Eats Noise

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空論上の九龍城

2010年7月のmixiのBlogの転載。

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造形美としてのりょうが堪らなく好きだ。
“誰だってロケットがロックする”あの唇とか、何もかも見透かす様な眼差しとか、しなやかな野生動物を思わす様な首筋からのラインとか…
いや、喋るとかなり可愛い人だし、身近にいたら絶対近づける努力しちゃうなーぐらいに人間的な魅力もありそうなんっすが。

さて、彼女のファンとしては、正直これと言って彼女の(私が感じてる)魅力が存分に発揮されてる作品が無いなー、と。
ドラマを見てないってのもあるんだけど、TVサイズには彼女は不釣合い。やっぱスクリーンで観たいよね。
映画だとちょこちょこ良い作品に出てはいるんだけどメインじゃないんだよなー。ちょい役とか、メインなのだとあまりに奇抜な役過ぎるのが多いし。
折角のあのヴィジュアルと佇まいを誰かもっと活かしてあげて!と悶々しちゃいます。

『とかげ』と言う作品を何故書店で手にしたのか記憶は曖昧だ。
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収録されている「大川端奇譚」が凄いなんて噂を耳にしてたのかもしれない。
購入したのは一人暮らし始めた頃。ちょっと色々あって抜け殻の様になってた当時の気分にあまりにすんなりと嵌った。
吉本ばななさんは私が中学生~高校生の頃物凄い売れ捲くってた訳で、映画化も相次いでた。でも、何かちょっと気取ったイメージ(何でそんな風に思ってたのだろう?)があって手は出してなかったんだよなー
噂に聞いてた「大川端奇譚」は矢張り凄かったのだけれど、表題作も強烈な内容だったのにとっても愛おしくって、ちょっと踏み外れそうだった当時の私の手をそっと(且つ確りと)引いてくれた。

で、「とかげ」を読みつつ、あれ?そう言えばこれりょうと塚本晋也監督で何かやってなかったっけ?と記憶が蘇ったんですよね。
その時は舞台でやってたんじゃなかったっけ?と記憶が混同してましたが、TVで放映された朗読劇だったのです。

この日曜、神戸新開地のアートビレッジセンターでの塚本晋也特集に行ってました。
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『BULLET BALLET』のプレミア(海外公開)ヴァージョンや『鉄男 THE BULLET MAN』の公開で再び注目を集める『鉄男』『鉄男Ⅱ』、そしてその鉄男シリーズのベースにもなった監督の原点『電柱小僧の冒険』…うんで『とかげ』。
日替わりで色々上映作品は入れ替わってたんですが、この日曜は『鉄男』→『電柱小僧の冒険』→『とかげ』と言うベストなラインナップ。
『鉄男』は当然ながら見てはいましたが、スクリーンでは初。これをスクリーンで観れる日が来るとは!!!
『電柱小僧の冒険』と『とかげ』は見た事無かったからね。

さて、『とかげ』。
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約50分。1カットの長回し!
ある廃アパートを舞台に、りょうが只々「とかげ」の文庫本を手に朗読する。
まぁ、その緊張感は半端じゃないんですが、只の朗読では決して無い。
りょうは朗読しながらもアパートの室内を時折移動し、その場所場所の光や影、様々な家具等も利用し、そして当然ながらも自身の身体性すら最大限に活かし、全身(+環境)で朗読をする。そしてカメラはそれを巧に写し取る。
当然細かい部分まで打ち合わせ計算尽くなんでしょうが、よくもまぁ1カットでここまでできたな~。溜息が出る程の美しいカットが何箇所も出てくる。間を溜めるシーンとかも絶妙だもんね。
あと舞台となる廃アパート(当然仕込んでるんだろうけど)の朽ちっぷりも素晴らしい。家具なんかが1時代も2時代も古く(私が子供の頃辺りの感じ)、食卓上のカビた食事すら見とれちゃう。
それと音響も凄いよねー。時折小説の内容とシンクロするSEもあまりに自然で…この朗読を音も込みでCD化しても面白いかもしれない。
残念ながら現時点では単体でのソフト化はなされておりません。ボックスでしか見れないのだ…

因みにこの方も昔朗読してたのです…
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刊行から間髪入れずになんだから流石。

肝心のストーリーにはあんまり触れない方が良いかな。未読の方には激しくお勧め致します。短編で手に取り易いのに、一生残る程の読後を味わえますから。
“とかげ”と(主人公が呼ぶ女性)と私(主人公)の二人の奇妙な愛の形。しかしその奇妙さこそに人が他者を求める心理の真理が剥き出されていて私達の心を捉えて離さないのだろう。

原作のとかげを読んでいた時から頭に浮かぶ“とかげ”像はりょうでした。
ひょっとしたら彼女の最大の当たり役なのかもしれないね?
ますます惚れました。