ポランスキー 初期四作+α | Electronic Dolphin Eats Noise

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空論上の九龍城

2013年8月。
@ KAVC。

『ロマン・ポランスキー初めての告白』+初期四作品上映
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『ロマン・ポランスキー 初めての告白』観てからの『水の中のナイフ』『反撥』だったものだから、何層にも亘って楽しめる事出来た。
やっぱ、60年代ポランスキーは別格。
不気味過ぎて、笑うしかない。
いっそ、『袋小路』も『ローズマリーの赤ちゃん』も一気に観ちゃいたかったね。

しかし、ポランスキー、惚れっぽいんですなぁ。
そして公私混同し過ぎ(苦笑)!
でも、憎めない。
けど、けど、けど、ホント今が幸せそうで良かったよ。

個人的には、好きな作品のその背景に作家自身の生い立ちなんかを余り知り過ぎたくないもんで、なるたけそんな本であったりインタヴューであったりに触れない様にしてるんだけれど、『ロマン・ポランスキー 初めての告白』発➡初期作品の流れはグッと来過ぎた。

これが一人の男の一生に起こり得る出来事か!?と耳を疑う程の波乱に富みつつも、その男がその人生の大半を第一線の映画監督として過ごし続けていると被されば、尚更その告白に耳を傾けざるを得ないだろう。
ポランスキー、愛されてるな。

あの幼き頃の戦争の体験、その後の映画監督へと至る道、シャロン・テートの悲劇、淫行事件の顛末、そして今の幸福。
勿論断片的には知っていた情報なれど、本人の口から語られる真実(当然本人からなので一方的ではある)には目から鱗。


観てて残るのはポランスキー良い奴(しかし惚れっぽ過ぎ!)ってとこ。周囲の人間からの愛され方がその証明かな。
勿論才能に対しての信頼も込みなのかもしれないけれどさ、それだけじゃあ、ここまでついて来ないよ。


今回同時に上映される初期四本がどう言う経緯で、その作品の背景に何があったのかが、実際の作品そのものと楽しめる訳だから理想的ですよね。中々こんな機会はないです。
パンフも四作への詳細な言及ありでマスト!

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『水の中のナイフ』『反撥』『袋小路』の三本は昔シネマ大好き(読売テレビで深夜に放送されていた映画番組)で纏めてやった時(やりましたよね?)に一回見てた筈なんだけれど、『反撥』は録画しただけで見てないかもしれん?いや、絶対的に見てない程に初見感半端なかったわ


まぁ、『水の中のナイフ』は文句無しに傑作!
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テーマに設定に撮り方、理想的なデビュー作なんじゃなかろうか?
1962年、母国ポーランドでは拒絶され、一方海外からは熱狂を以って受け入れられたってのも納得。

あの、旧世代に突き付けられるナイフの鋭さと、しかし何処か隙ある可愛らしさ、の不気味なバランスは、同日に観た『台風クラブ』にも通ずる。
三浦友和演じる教師との電話でのやりとりとかね。


ここでの奥さん演じたウメツカさんって、全くの素人なんだってね!これ、ちょっと信じれないな。
しかも、偶々ポランスキーがプールで見掛けてスカウトしたらしい…
恐るべし、ポラのスカウト眼!


ポランスキー初長編は、確信に満ちた野心と、瑞々しいまでの図々しさが、ミニマルな構成と、挑発的な演出で以って、今も突き刺さる。
突き刺す側、突き刺される側で意見が分かれる分岐点の様な作品。
天晴れ。いや、出来過ぎで恐い。


ボートの上での倦怠期迎えた夫婦と見知らぬ若い男。

三人それぞれが何を象徴してるのか?ってのが読み解け出すと一気に引き摺り込まれる。
特に船内でのやり取りは凄いな、あれ。


ここに漂う不気味さの極みは、ほんの一日の休暇を終えて、一見何も変わってない車内の夫婦が、決定的な齟齬と(形勢の)反転を迎えてしまってるところ。
それもたった一人の異物の侵入によって。
しかもその異物は外から見ればいなかったも同然なのだ。


『水の中のナイフ』、ナイフの煌めきの、そのスピードまんまなジャズもまた刺される。
ロックでは未だ未だ辿り着けなかったスピード。


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『反撥』に関しては、ここまで直接的な描写に溢れてるとは夢にも思わんかった。

ちょっとバランスに欠けてる気はするけれども、抜群に面白いし、何よりマジ怖い!


美少女の人格崩壊スレスレな怪演って事で言えば、ここでのドヌーヴと、同日に観た『セーラー服と機関銃』のひろ子は…(無理から接点)。
だって、あのアイロン当ててるとこの表情なんてカ・イ・カ・ンでしょ!


神経を剃刀で逆撫でしてくかの様な心理サスペンスと、肉体へと直で切り掛るモダンホラーとの、鬩ぎ合い。を、主人公の女性の精神の衰弱と重ね合わせ、どこまでが現実で、どこまでが幻想なのか…
その辺りのバランス歪さはあるものの、それを上回る面白さと恐怖に慄く!


ちょっと今なら問題有りな精神衰弱の描写もありつつも、ドヌーヴの常軌逸した熱演(あの虚な目!)が観れちゃう訳だから。


1960年代、映画の技術や演出の多様な進化の中で、ホラー映画がその恐怖の可能性を人智を越え増殖させてた辺境で生まれてしまった異端の異潭。
ここでのアレやコレは驚く程後のホラー映画に引用され捲ってる。


まぁ、御本人はお金やより自由な創作環境得る為に撮った、ある意味で不本意な作品らしいけれど、そんな作品だからこそ持ち得た“厭らしさ”が旨味として効いてるんだろうな。


『水の中のナイフ』➡『反撥』と、日常に不意に侵入した異物が、潜んでいた齟齬を浮かび上がらせ、そのズレから狂気漏れる瞬間を撮らえる。


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今、この時代にニュープリントで『ローズマリーの赤ちゃん』を観れると言う至福を何に置き換えればオールモストに伝わる?

下手したら20年振りぐらいに見たけど、血やモンスターを出さなくっても未だにここまで怖い!って何事?古典にして最深・最恐。完璧。

生きてる内にフィルムで観れたよ!


しかし、ポランスキーって肝座ってよなぁ。
ローズマリーの赤ちゃんなんて、120分ぐらい何も映さないんだもん。
気配だけ。
だから、若しかしたら妄想なのかな?と、結末知ってても混乱する。
ここまでのって異例だよ。

だからこそ、キョ・ウ・レ・ツ!


あの色(=覇気)が落ちてくミア・ファロー、まぁ、美しい。そして可愛い。
ヴィダルサスーンな髪型。
ヌードにまでなっちゃって(改めて観るとヒッピー&サイケデリック感が結構強い)。
また『フォロー・ミー』が観たいぞ!


ダコタの空撮、室内(実際はダコタではない)、幻想のシーンetc.
あのフィルムの淡さと深み…


ミア、あの友人招いてのパーティーのシーンで不安に泣き崩れるとこ。
当時結婚してたシナトラ(!)が、女優業続ける彼女に怒り離婚届を撮影現場に届けたその日に撮影されたそうだ…
マジ泣!?


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『袋小路』はもう、ポランスキーの才気が本人ですら所々放棄してるかの如き迸り魅せる未曾有の大傑作!

こんなん若手で撮っちゃう!?ってレベルのふてぶてしさもある。
もう、ストーリーとか途中からどうでも良く成る程の圧倒的な画と、メイン三人の怪演に巻き込まれる!


シチュエーション的にデビュー作『水の中のナイフ』と比べてみると面白いんだけれど、オープニングとかさ、何じゃこりゃ!?だよ。

あのテレサが泳いで帰って来る脅威の長回しなんて椅子からズリ落ちそうになったわ!




たまたまベルトルッチ➡ゴダール➡ポランスキーと続いた所為もあるものの、KAVCでの60's×モノクロームのデジタル上映は、もうここでしか味わいたくない!ってぐらいにフィットする。
単純にモノクロのデジタル感が美しいってだけでなく、60'sのスピード感ね。編集や音楽、台詞等々。

色彩の情報量が少なくなる分、そこで捉えられた光と陰の濃淡のグラデーションが際立ち・泡立ち、鳥肌立つ。
勿論ファッションやインテリアも外せない。


あと初期ポランスキーってウォン・カーウァイが結構引用してる気がするんだけれど…気の所為?
『袋小路』のオープニングなんて『ブエノスアイレス』みたいだし、彼方と此方彷徨う『反撥』や『ローズマリーの赤ちゃん』の主人公の姿には『恋する惑星』のフェイ・ウォンの姿がダブる。
他にもチラホラ…