2009年9月mixiでのレヴュー。
塩屋って降りた事ある方ならご存知でしょうが、ひどく小さな町なのです。港町・下町なんて言うと情緒や趣き感じますが、降りて直ぐこそ中々の味わいがあるものの、暫し歩けばもう端に辿り着きあとは住宅街と山・海が広がるばかり。
いや、勿論生活臭と伝統が確りと結託した町並みは素敵なのですよ。ただ、こんな処で夜な夜な音楽の真理に遭遇するかの如しの催しが開かれてるとはお釈迦様でもわかるめぇー
駅からは歩いて5分もかからないのですよ。で、異人館前の踏み切りを渉る手前・・・はて、あの顔どこかで・・・大友さん!あわわわ・・・心の準備も間々成らぬ間にまさかの遭遇でありました。
で、着いたグッケンハイム邸。中庭に円陣を形成するかの様にゆる~く椅子が並んでいる。えっ!?野外?と訝しげさとトキメキに囚われつつ席に着いたのでした。
席の合間合間にピアノやギターやサックスが無造作にセッティング。
円陣の中央には紅いロープが伝わってるだけ。
それだけ。
お客さんの中に普通に悠治さん佇んでるし!落語家のお洒落な日常の様ないでたち。
おっ!お香焚かれてるなと思えば蚊取り線香だし、館の奥からはほんのりとカレーの匂いが漂ってくるし。
何だこの緩さは(笑)。
で、予定時間。姜泰煥さんのアルト・サックスからひっそりと始まったのでありました。大友さんがギターを被せて来、悠治さんがそこにピアノを乗っけてくる。場の空気は一気に引き締まりました。
そして、ふと気付けば田中泯さんが登場してた。すぐ気付かなかったのは地べたを這いずってたから。しかも全く以って地味な普段着のまま。キャップまで被ってる。その辺ウォーキングしてる感じだもん。
そこから怒涛の即興の音と身体による表現が続いたのでありました。
即興演奏とか、随分レコードで聴いてるもんで(レコードで即興演奏ってのも矛盾孕んでますが・・・)慣れてると思ってたものの、実際その場で味わうのは全く別物ですね。
姜さんはずっとその場でアルト・サックスを奏でていたのですが、大友さんと悠治さんは外の定位置と館内とを行ったり来たり、館の奥の全く見えない位置から聴こえるピアノの音など独特の距離感や音響効果があって乙でした。大友さんはギターだけでなくいくつかのパーカッション系の音なんかも挟み込んだりされてました。
いやー前半、非常にゆったりとした間合いでお互いに音を共振・反発・無視したりしつつも、大きなうねりの中で一方向に向かって進んで行く流れは場の空気も込みで独特の磁場を生んでました。旧グッケンハイム邸は海と山に挟まれた坂道の手前に建ってるのですが、線路・国道が直ぐ横を横切ってるので電車・車の音が引っ切り無しなのですよ。あと飛行機もね。そして虫達の鳴き声。そんなものさえ音の構成要素として取り込むぐらいの磁場が発生してましたよ。
そして泯さん。前半はズーっと地面に這い蹲り非常に細かい動きでの身体表現。皆固唾を飲んで見守っていたのでした。あの緊張感は半端無かったです。
場も暗くなって来た中盤以降。泯さんが立ち上がり、そして張られた紅い紐と絡み出した辺りから場の空気は緩やかに且つ着々と熱気を帯びてまいりました。演奏にもハードなトーンが混じり出し、皆一挙手一投足一鳴音逃すまいと緊張感増しました。時折シャープに場を突き刺す大友さんのギターが矢張り強烈。空気の中に広く柔らかくそして強く染み渡る悠治さんのピアノがまた美しい。
そして、いよいよ泯さんの動きが大きく、予想もつかない大胆さと、時折混じるユーモアや狂気を帯びてきた頃、演奏は凄まじいテンションに!アルト・サックスもギターもピアノも楽器の限界ギリギリまで追求したかの様な聴いた事も無い音を発し、場の我々すらもそれに引き摺られその相乗効果は最高潮に!
少しアクシデントもあったのですが、それすらもプラスに転化してしまう不思議な力があったのです。
そして、ゆったりとしたエンディングを向かえ我々も解放されました。
いやー、凄かった。
一応イベントのコンセプトも押さえてはいたし、中盤ぐらいまでは見ながらあれやこれやとその音や身体表現に何らかの意味や物語性を思い巡らせてみたりしてたのですが・・・途中で放棄しました。だって、そんなの必要無い。この凄まじい音と身体の表現が導く場の力の一部に自らを委ね、そして自らもそこに何らかを発してしまうぐらいになっちゃう訳だからさ、躍りゃな損々ですよ。
気持ち良かった。
ここ数ヶ月の様々な疑念は洗浄され、想いは肯定されました。
しかし、以前来た時の旧グッケンハイム邸でのライヴでも感じたのですがお洒落さん多い。
今回は悠治さんと言う事もあってか年齢層が幅広かったのだけれど、老いも若きもお洒落。それも無理の無いお洒落さんが多い。板に付いてる感ある。しかも女性の割合が多いのに吃驚した。確かに悠治さんや泯さんなんかには独特の色気があるのだけれど、この手の音にこんなに女性が集まるのは何だか嬉しい。しかも、とびっきりの別嬪さんばかり(が、目に入ってたのでしょうが・・・)。
スペシャルなライヴは何も三宮や大阪ばかりの特権でない。
JR新快速から乗り換え、少し寄り道気分するだけで、こんなにも未知なる体験へと踏み外せられるのだ。



