シャンドライの恋 | Electronic Dolphin Eats Noise

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空論上の九龍城

2008年7月にmixiで書いてたレヴューより転載。



本作は公開前から異常な盛り上がりをみせてましたが、監督のベルトルッチてこの時点ではもう過去の人になってた感あったじゃないですか?
これの前作があの『魅せられて』でしたから、期待と不安が入り混じった状態で見たのでした・・・果たして結果は・・・ 
もう堪らん映画でしたね!個人的にはベルトルッチで一番好きな作品になりましたし、数ある恋愛映画の中でも群を抜く傑作かと。 

ベルトルッチといえば古くは『暗殺のオペラ』『暗殺の森』『1900年』や『ラストエンペラー』等の重厚な政治ドラマ(と言い切れないですが)が有名ですが、一方で『ラスト・タンゴ・イン・パリ』や『ルナ』(これ結構好き!)なんて官能的な作品も手掛けてるのですよね。
彼の多くの作品を手掛けてるカメラマンのヴィットリオ・ストラーロの艶かしい映像美と、高尚な音楽性(坂本龍一とのパートナーシップは有名ですね)も世界中の映画ファンの心を鷲掴みにしました。

但しファンの皆様は『ラストエンペラー』以降、本来の彼が持ってたギラギラした野心や蒸せ返る様な情熱が薄まって行ってたのに不満を感じてたのでは? 

そんなところへ届けられた本作、彼がウォン・カーウァイやハーモニー・コリンといった若き才能に激しく嫉妬して作らずにいられなかったというだけの事はあります。
 
物語は政治活動が原因で投獄された夫を持つ主人公シャンドライがローマへ亡命したところから始まります。
彼女は医学の勉強をしつつあるピアニストの元で住み込みの家政婦をして暮らしてます。そのピアニストは非常に寡黙なのですが彼からは花や指輪などの贈り物が届きます。戸惑い気味にその贈り物を返しに行った彼女に彼は突然のプロポーズをしてしまいます。
自身の感情表現があまりに下手な彼にはそんな方法でしか愛情を伝える術が無かったのですね。しかし、その強引な行動に反感を持った彼女は自分の夫を解放してくれと彼に言い放つのです。
ここから彼の信じられない行動が始まります。
果たして彼はどんな行動に出たのか?彼女はその行動にどう応えたのか?そして夫の運命は? 

彼のとった行動には賛否あるでしょうが私なんかには本当共感を覚えるものでした。世の中にはこんな形でしか愛を伝えれない男がいるのですよ。 

勿論この作品の魅力はストーリーだけではありません。
二人のバックグランドを一瞬で把握させるかの様なアフリカの生命力溢れる大地とローマの清楚な街並みの対比、非常に印象的に効果的に用いられる彼の住居の螺旋階段やリフト、そして彼の感情そのままに変化していくピアノの時に切なく時に情熱的な美しい調べ。
特に掃除するシャンドライを見つめつつ昂ぶる気持ちがどんどんピアノの演奏を官能的にしていく辺りは映画史に残る名シーン! 

ピアニストを演じるデイヴィッド・シューリスの透明な炎を想起させる独特の存在感と、シャンドライを演じるサンディ・ニュートンのしなやかなのに凛とした強さを感じさせる美しさ。どちらも役者人生に残る名芝居でありますよ。 

真夏の夜の熱気で眠れない夜にどうぞ!