http://www5.ocn.ne.jp/~himecine/20120525.html
抑圧の中で漏れる色香と満ちる怒り。
サンザシの樹の下で Blu-ray/チョウ・ドンユィ(周冬雨),ショーン・ドウ(竇驍),シー・メイチュアン(奚美娟)

文化大革命下の中国を舞台に、許されぬ恋愛に溺れる若者を描いたチャン・イーモウ監督作品。
これは、もう想像した通りのベタベタなメロドラマである。
故に中々に評判も良かったようで、前回の例会の『ソウルキッチン』との雲泥感には・・・(笑)。
個人的にはチャン・イーモウには振り回されてる気がするなー
一番最初に見たのが『菊豆』で、これにはもうお手上げに嵌り捲くった。
禁欲的な美意識から漏れる噎せ返る程の色香、生理に刺さる紅。
あんな映画が当時の中国から生まれたと言う驚嘆を、更に越えたとこの衝撃だった。
そっから初期の『紅いコーリャン』や『紅夢』と追い掛け一時はフェイヴァリットな監督に上げてた時期もありましたっけ。
その流れを踏まえてのだから『秋菊の物語』『活きる』は随分感動的でした。
だからこそ、暫く経てからの『初恋のきた道』の大ヒットには違和感あったな。話も画も薄口だなーと。それなら同時期の『あの子を探して』にこそ彼の本領は見えてた(と、当時は履き違えてたんだな)。
その後はご存知な様にハリウッドで『HERO』『LOVERS』なんて暴走もありましたが(これも誤読だろう)。
しかし、そのフィルモグラフィを俯瞰してみれば、浮気性な様で確りと芯の通った男気が見えなくもない。
彼はひょっとして中国人としてのアイデンティティとプライドを、エンターティメントを通して、ある種いやらしいまでに時代の波や海外からの視線までをも計算して流布したいんじゃないのかしらね~?
そこに使命感すら感じているのかも。
そう考えるとゴイゴイとオリンピック開催に向けて勢いを増して行った中国と、そのより戻しからの世界からの反発って流れと、彼の作風の変化はシンクロしていた気がするし、それ以前もそうだったのでは?
とかね、結局難癖付けながらも、今もずーっと気になる監督なのである。
さて、『サンザシの樹の下で』は、『初恋のきた道』直系の純愛物語。
主演二人のあまりの純朴な佇まいには“やり過ぎ!”と突っ込み入れたくもなるものの、進めば進む程に、この物語を背負うにはそれぐらいじゃなきゃなと納得。
小枝を使った小川越えや、密会時の弟妹達の可愛らしい気の使い方、仕事場抜け出しての逢引きでのあの水着、足を怪我した時の包帯に、とどめの風呂桶。
細やかで小憎らしい演出の数々に身悶えている内に自分の中の箍は崩壊した。
ラストシーン、当然の如く感動の波はピークに達するものの、スタッフもキャストも感覚が麻痺してしまったのか?ちょいとメーター狂ってしまった画なんじゃ???と心配したものの、会場には啜り泣きが溢れてたのでそれは私の思い過ごしであろう。