こんなに終わってしまうのが切ない映画体験もなかったよ。
空気人形 豪華版 [DVD]/ぺ・ドゥナ,ARATA,板尾創路
始まって直ぐ一気に世界へ引き摺り込まれ、タイトルが出た辺りにはもうこの作品がここ10年で自分にとって特別なものになるだろうと確信しておりましたよ。
是枝監督がここ数年の邦画界でも屈指の監督である事は、その映画デビュー作『幻の光』から周知の事実ですが、まさかここまでの作品を撮りあげる事になろうとは・・・
リー・ピンピンの透ける切る程の冷たさと蒼さに潜む、空気の柔らかさと懐かしさを捉えるカメラ。
ワールズ・エンド・ガールフレンドの物語の歩調にそっと寄り添う音楽。
このともすれば空回ってしまいそうなお伽噺にリアルな息吹を吹き込む美術陣や役者陣・・・
皆・皆・みーんな愛おしい。
そしてペ・ドゥナである。
何だこの存在感は。人形(それも性欲の処理道具として生まれた)が心を持ち恋をする。単純な様でいて、役者としての根源を突かれてしまいそうな難役を、もう瞬きから呼吸から言葉使いまで完璧にこなしてしまった!
いや、もう、これを演じる為に生まれてしまったかの様な嵌りっぷりだ。
世の中を知り、更に世の中を知ろうとする無垢さ。
恋をし、自らの(人間として)欠けてる部分を補おうと果敢に挑むいじらしさ。
好きな人に空気を入れられ満たされた時の恥じらいと恍惚の表情。
そして人形だった彼女が私達に遺してくれた物・・・
これを見て彼女に恋しない男を僕は信じない。
てか、是枝監督心の底から惚れてるね!
是枝監督は喪失を見つめてきた監督である。
私達の持ってしまった心はとても脆く儚い。誰かへの依存で孤独を紛らわさなければ壊れてしまう程に。そんな弱さを彼はいつも写してきたのだ
しかし、彼はその先も見ている。そして私達をそこへ導こうとする。
ともすれば、それは残酷な手法に捉えられる危険も孕んでいる。しかし躊躇はしない。
そこに是枝監督の限界を見るか、もしくは神業を感じるか・・・
勿論私は後者である。
あー、しかし、完全にペ・ドゥナに心を持ってかれてしまいました・・・誰か私にも空気を吹き込んでくださいませ。