まぁ、当時のオレにとってはどこもレベルが高すぎたね。例えば、ブルースセッションに行けば暑苦しくて泥臭いアマチュアブルーズマン達がアンプ持参で本気で歌ってた。そこで学んだね。ブルースは「歌」なんだよ」。3コードだから簡単だろ、なんて迷い込んで行ったオレは完全に場違いだった。ああいうセッションはみんなほんとにギラギラしてる。だがそこがいい。聴き専で行けば楽しめただろうな。
そうですか。
逆に、練習会的なものはほんと馴れ合いが凄いからな。その中に一人で入って行くのも相当勇気が要るし「初心者の方大歓迎です」なんて書いてある広告も結構あるけど、あれほとんど嘘だからな「はじめまして!ギターSと申します!よろしくお願いします!」なんていい子ぶって参加して、「何やりますか?」「何でもいいです!」「じゃあSpainやりましょう」「えっ」みたいな感じだった。当時オレはそんな曲知らなかったから、ほんとに何もできなかった。手拍子だけはしたかな(笑)以後オレは絶対に「何でもいいです」は言わないことにした。いい勉強になったよ。
そうなんですね。
あと、マイルスカフェはほんとにオレには合わなかったな。
そうだったんですか?
全てが気に入らなかったね(笑)まず、到着して、オレは外の喫煙所で喫煙してた。そこにホストの人が来て「参加される方ですか?今日はよろしくお願いします!」と言って握手してきたんだ。
いいですね。緊張もほぐれたことでしょう。
そうか?ここは東京だぜ?ニューヨークじゃないんだ。初対面でいきなり握手してくる奴をオレは信用しないことにしている。ちょっとイラっときたね。
そうなんですか。
それで演奏が始まると、その途端ストップをかけられた。「あのー、ギターさん達は伴奏弾かないでください」分かった伴奏は弾かない。またストップだ。「あのー、そういうノリ違うんですよ。ジャズでは足でリズム取ったりしないんです」分かりました足でリズム取りません。
当時Sさんはロックだったんですか?
そうでもなかったと思うけどね。でも足でリズムとかって、今思えばジョーパスなんか凄く足でリズム取ってるだろ?何であんな事言われたのかな、、、よっぽど変な動きだったのかもな(笑)
ジャンルごとのマナーというものがありますからね。
あー、、、もう面倒くせえ、、、これでどうだ!オレは自分のソロの時スイッチング奏法で滅茶苦茶にかましてやった。いいや、もう帰れって言われるんだろ、って感じでな。そうしたらどうなったと思う?「凄いですね!あんなの初めて見ましたよ!どうやったんですか!?」だとよ(笑)要は、こっちの「男気」しか見てないってことだ。自信なさげに適当に伴奏を入れたり、ふわふわと足でリズムを取ってた時点では舐められてた。ふてくされた態度でカッコよくスイッチング奏法したら認められたんだ。そんなバカな(笑)おかしくないか?一応ジャズだぞこれ?そういうところで判断しないでほしい。オレは「音」で会話しに行ったんだ。音なんて全然聴いてくれてないじゃないか。
そうなんですか。
最初にネームプレートに名前と何を目標にして今日は参加したのかを書かされた。ああいうのもちょっとね、、、「出来るだけ具体的に書いてください。上手くなりたいからとかはダメですよ」なんて言われたかな。
いいじゃないですか。
そういうの苦手でね(笑)ああいうの書かせる奴って、ビジネス書の読みすぎだろ(笑)オレはただ遊びでギターを弾きに行っただけで、特に深い意味はなかった。
そうなんですか。
ああ、だが、奴等のそういうやり方に影響は受けたのかもしれない。それからというもの、オレはジャムセッションの度に自分の中で毎回違ったテーマを決めて臨んだ。そして、そういう活動の延長がグラミー賞に繋がったのかもしれないな。