HMC連続ウェブ小説 ALL BLUES 第1話「カテゴライズ」 | HMC

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練馬区で参加費100円のジャズ練習会を行なっています
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2030年某日、四谷三丁目、有限会社ジャズライフ近くの喫茶店で行われたロングインタビューを書き起こした記事です。








(この物語はフィクションです。各種ハラスメント、決めつけ、差別等、読まれた方が不快になる内容も含まれる可能性があります。登場人物や場所は全て架空のものです)











本日はお忙しい中お時間を頂き、ありがとうございます。

 

いやいやこちらこそ。

 

さて、現在コンテポラリージャズギター界を席巻されているSさんですが、デビューは50歳代と遅咲きです。それまで何をされていたんですか?

 

いや、まぁ、色々とね(笑)ジャズを始めたのは40歳を超えてからだね。

 

えっ、そうなんですか!?意外です。40歳を超えて音楽学校に入られたということですか?

 

うーん、オレの場合ジャズの真似事を始めようと思って、最初にやったのは【区役所に行く】だったんだよね。

 

えっ!?

 

カルチャークラブとかで安く勉強できないかと思ってね、、、そこでいい出会いがあり、HMCというジャズ練習会グループを作った。メンバーは最初自分一人だったけど、参加してくれた人達から色々学んで、、、まぁ、HMCがオレにとっては音楽学校みたいなものだったね。凄い奴等がいっぱいいたよ。

 

そうなんですか、、、そんな始め方で世界を牽引するギタリストになれるなんて意外です。こういった言い方は失礼かもしれませんが、遊び感覚で始められたのですか?

 

はっはっは、、、まぁ、そうだね(笑)今でも遊びだよ、音楽は。

 

余裕のある発言ですね。

 

余裕なんてないよ。ただね、どれだけ指が動いて速いフレーズが弾けるかとか、どれだけ複雑なボイシングで曲を彩るかとか、強力なグルーブを作るとか、正確なリズム、ルーズなリズム、シンプルに伝えたいことだけを弾くとか、大きい音で他の楽器を圧倒するとか、誰でも歌えるキャッチーなメロディを作るとか、やりたいことをやるとか、人の音を聴くとか、全体のバランスを考えるとか、挨拶をちゃんとするとか、顔で弾くとか、人を感動させるとか、いい気分にさせるとか、人間性とか、そういうのを真面目にやろうと思うと面倒でね。

 

シンプルなことも否定。複雑なことも否定。精神論も否定。それではまともな音楽はできないじゃないですか。

 

まぁそうだよね(笑)何でそこそこ売れたのか謎だよ(笑)

 

そういう面倒くさがりな音楽性に時代がついてきたということですか。

 

言うね(笑)

 

質問を変えます。Sさんのフレーズは古き良きビバップフレーズと前衛的で刺激的なフレーズが同居していると思います。相当色々なアーティストのフレーズを研究されたのでしょうか。

 

いい質問だね。オレの場合コピーはほとんどしていないんだ。チャーリーパーカーのフレーズはいくつかコピーしたかな、、、

 

ちょっと待ってください。そのセリフ、ジョーパスのパクリですよね(笑)

 

よく分かったね(笑)

 

伊達に記者やってるわけではないので。ジョーパスは好きなんですか?

 

好きなんてものじゃないよ!オレはいつだってジョーパスみたいに弾きたいんだ。でもそれが出来ないのでプリングやハンマリングでごまかしてるのさ。

 

、、、それはジョンスコフィールドが昔インタビューで言ってたセリフです、、、

 

凄いねキミ(笑)

 

チャーリーパーカーとジョーパスを通過してコンテンポラリージャズに行き着いた感じですか?

 

うーん、オレは自分がやっていることがコンテンポラリージャズだとは思っていないんで、何とも言えないね。そもそも音楽をカテゴライズすること自体が間違っていると言える。キミだってそうだろう?家に帰ればお父さん、会社に行けばサラリーマン、楽器を持てばミュージシャンだ。なら本当のキミはいったい何者なんだい?、、、嫌だろ?カテゴライズされるのって(笑)だいたい、オレがストラトを使って変なことをやっているから、みんなはオレをコンテンポラリージャズギタリストだと思っている。本人は至って普通にビバップの真似事をしてるだけだよ。フルアコのハウリングで散々痛い目にあったからストラトを使ってるだけ。深い意味はない。

 

フルアコ、、、のくだりはエドビッカートのインタビューじゃないですか、、、知ってますよ。初期の頃あなたが飲み代に困ってギターやエフェクターを売りさばいて、しばらく奥さんのアコギに200円のピックアップつけて最悪の音でプレイしていたのは、、、あと、アコギとフルアコは違いますよ。アーチトップのギターにマグネティックピックアップを付けるのがフルアコで、アコギにマグネティックピックアップを付けるのはフルアコとは言えません。

 

ワオ!よく知ってるね(笑)まぁ、あれはあれでいい思い出だよ。ギターの基本はアコギにあると言える。ピッキング位置とかボイシングとかね、アコギで修行したんだよ。エレキより分かりやすいからね。でもアコギだとハウリングが酷いのでソリッドにして、弾きやすいボディの形にして、まともなピックアップを付けて、、、それがたまたまストラトだっただけだよ。テレキャスで素晴らしいサウンドを出すミュージシャンはたくさんいる。でもジャズ系でストラトだとニアフェルダーくらいだろ?オレはそういう変わった奴が大好きなんだ。

 

先日のニアフェルダーさんとの共演はどうでしたか?

 

それはお客さんが決めることなんで、オレからは何とも言えないよ。

 

大盛況でした。私も聴きに行きました。演奏が終わってもしばらく感動で身動き出来なかったです。

 

来てくれてたんだ?ありがとう。ニアはね~、ああ見えて結構、、、いや、、まぁ、そういうのはいらない情報だよね(笑)

 

気になりますね(笑)昨年の上原ひろみさんとの共演はどうでしたか?

 

ひろみはね、、、