恋がしたい幸福になりたいお金も欲しい
タイトルから、「何の本だ?」と思うに違いない。本書は、雑誌「SAY」の連載で、著者と女性とのやりとりをまとめた本だ。女性が質問し、村上氏がそれに答える形式だ。本書は、「お金編」「仕事編」「恋愛編」の3部から成っている。
「限りなく透明に近いブルー」で圧倒的な地位を築き上げ、今ではカンブリア宮殿などの知的なテレビ番組の司会者として活躍する村上龍氏だからこそ、この混沌とする世の中に対し、何かしらの解決策を持ち合わせているのではないか、と微かな期待を胸に質問を投げ描け、自分の期待する答えを待つ、そんな構図が想像されるが、そうではなかった、本書は。
たとえば、「尊敬できる人がいない環境で働くのはツライと思いません?」という投掛けに対し、仕事がないよりは恵まれています(以下略)と答えたり、また、「月曜日に会社に行くのがおっくうです。どう気持ちをきりかえたらいい?」との投げかけに対しては、僕は小説を書くのがイヤになることはありません。と答えたりしている。
きっと、投げ掛けた本人たちは、背中を押して欲しかったのかもしれない。それに対し村上氏は、村上氏の経験から導き出される主観と、世の中の流れを汲み取った客観、二つの答えを淡々と答えるのみに留まっている。村上氏が答えを持っているのか持っていないのかはわからないけれども、持っていてそれを質問者の目の前においても、本人のためにならないと考えていると評者は思う。“あなたの軸は何ですか?”と逆に問い返しているようにさえ見える。つまり、本書は、「考えることを与えてくれる本」なのである。
ここから評者の勝手な推測。男女雇用機会均等法が制定され、女性が社会進出するようになってきて何十年?経過したのか定かではないが、おそらく女性のキャリアパスがまだ、どの分野においても確立されていないことが、今の女性特に20代の女性を悩ましているのだと評者は思うのだ。
職場においても目指すべき人がいない、メンターがいない。だから真似することも手本にすることさえもできない(数が少ないという意味)。その上、日本経済は、過去の高度掲載成長期のように、仕事が勝手に舞い込んでくるわけではなく、自ら取ってこなければならない時代だ。そんな中で対応できる唯一の道(策)は、自ら考え考え抜いて行動する、これしかない。
従って、女性に向けて書かれた本のように見えるが、実は男性にも当てはまることが数多く散りばめられている一冊だ。最近、考える時間が少なくなったな、と思う方は、必読の一冊。
-------≪目次≫-------
第1章 お金編
第2章 仕事編問題はとにかく「分けて」考える
第3章 恋愛編
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-------≪以下本文抜粋≫-------
◆「安い服を着ている」とバカにされるのがイヤでついつい高い服を買ってしまいます
「人間は中身だ」と言われたって、中身なんて見えない
非常に貧乏だけど非常に尊敬できるという人は非常に少ない気がします
高そうなコートを着ていても、「何かの方法でもうかったんだな」と思うだけです
他人から見たら、安い服も高い服も大して変わりません
◆飲み会に3000円払うのがイヤで、会社を休んでしまう私です
飲み会が嫌いだという人は、逃げられるものだったr、適当ないい訳をして休んでしまえばいいんです
3000円を払う価値はないと思っている
◆毎月の美容院代がお給料の1/15です・・・・・・
個人で判断される時代になると、見た目もすごく大事になってくるんです
◆「1000円貸して」と言われたら村上龍さんはどうしますか?
かりに信頼している人が「お金を貸してくれ」と言ってきたら、帰ってこないものだと思ってあげるとか、そういうことになるでしょう
断る勇気を持たないと、一歩も前に進みません
◆貯金は、いくらぐらいあれば生きていけるものですか?
貯金があればそれだけ選択肢が増えます
最近は深爪したといって救急車を呼ぶ人がいるくらいですから
◆ブランドものへの欲求や、お金持ちに勝つ方法を教えて
それを買うことで気分が晴れたり、生きていく希望のようなものが持てるなら、買ってもいいんじゃないですか
安くてもメイド・イン・イタリーだから、数千円とかで、結構いいバッグがあるんですよ
差を恨んでグチをこぼしながら生きるのか、好きなことに出会って努力していくのかをまず考えることが大事です
◆給料日前に残高が減っていくと精神的に貧しくなりますね
精神的に貧しくなるというより、不自由になるんです
◆同じように1万円使うなら、何に使えば「自分磨き」に有効ですか?
そもそも「自分を磨く」って、何なんですかね
「いい女になるための本」?それって何ですか?きっとプルーストとかドストエフスキーじゃないんでしょうね
◆新婚の友人は、共働きでとてもリッチ。結婚できるって勝ち組に見えます
結婚した人の良いところばかりを見て比べるよりも、自分をどう進歩させるか考えた方がいいでしょう
◆退職後、年金をもらえない間はどうやって生活したらよいでしょう
自分の身は自分で守るしかない
◆35歳、手に職なし。取り残された私はどうしたらいいですか?
カンブリア宮殿に出演する女性や、企業の広報や秘書をしている女性たちが、 圧倒的に幸せで、のんびり暮らしてる人が不幸せだとは思えないのです。
競争に向いていない人というのもいるんです
◆営業成績が悪い私に、上司が「そんなだから恋人もできない」と
営業の現場にいる人をやる気にさせるのが本来の仕事なのに、 逆効果になることをしているのだから、マネージャーとしてもまるでたいしたことがない。
まずその上司はたいした人間じゃない。営業成績を上げれあ、何もいえなくなるはず
◆派遣社員として、ルーティンワークをしていると不安になってきます・・・・・
自分を向上させるためにはいま何が嫌で、何を改善したいのかわからないとダメなんです
◆尊敬できる人がいない環境で働くのはツライと思いません?
ヘレン・ケラーにしてもマザー・テレサにしても、尊敬される人というのは、 そうたくさんいないから 歴史に残るんです。
◆結婚もしたい、子どもも欲しい。でもこの厳しい社会では働き続けるのは厳しい?
「何かを選ぶというのは、何かを捨てるとういことなんです」 というのが、その先生の言いたかったことです。
◆月曜日に会社に行くのがおっくうです。どう気持ちを切りかえたらいい?
朝起きたときはイヤであっても1日を過ごすうちに気分が晴れるということもあるはずですよ
◆通勤時間が長いと近くに住んでいる人に比べてソンだと思いませんか?
ただしこういう選択をするときに「あれも、これも」というのは良くありません。
◆体育会系の人は、実際よりも仕事がデキるように見えてトクですね
体育会系出身の女性は姿勢がピシッとしてる?だったら自分も背筋を伸ばせばいいじゃないですか
◆50歳の叔父が窓際に追いやられて・・・・・・。年をとると会社員はいらなくなるんですか?
どんなに頑張っても時代に合わなくなる、というのはあるんです。
◆村上龍さんから見て、良い経営者、ダメな経営者って、どんな人?
掃除が行き届いていて、きちんと整頓されているところや、役員室などがなくて社員が自由に行き来しているのは良い会社
◆仕事もつまらなくてプチうちになるんです
人間が病気の中に逃げこむという考え方もあるんです
◆これからの働く女性が、幸せになるためにどうしたらいいですか
みんな「誰かと比べれば自分はまだましだ」と思って生きているようなものです
幸・不幸というのはあくまで相対的なものだということです
20年、30年と生きてくれば、自分がどういうときによい気分になれるか、気持ちいいと感じられるか、 だいたいわかると思うんです。
自分にとっての幸せ、をイメージできないと幸福にはなれないのです
◆結婚できる人は仕事を辞められていいですね
「いま自分は何がしたいのか」がわかっていない人は、決断の基準がないので、 あれも嫌、これも嫌、となってしまいがちなんですがきっとそういう人は多いんでしょう
「何をしたいのか」わからないという人はとても多い気がするんですが、 そういう状態でただ年だけをとっていくというのは、かなりやばいです。
◆私はオバサンになりたくないんです
オバサンという存在は、話を聞かないことですね。
「自分を高めたい」という人が集まると、最後は目の前の仕事を一生懸命やろう、みたいな話になるそうです。
◆理想の男性と出会いたいんだけど、どうやって見つけたらいいんでしょうか?
女性が理想の男性像を知りたがる要員として、ひとつにはやはり安心したいという気持ちがあるからでしょう
◆最近の男性はおごってくれませんよね。ケチが多いと思いません?
飲み会の顔ぶれを見た瞬間。「これはワリカンだ」という場合があるのもごく自然な気がするんです
よりお金を持っているほうが払えばいいと思いますよ
◆彼氏が画家を目指してフリーターに。「お金がない」とグチるようになり魅力がなくなった感じがします
同じことをずっとやっていても、まったく飽きることがないというのが、才能なんです。
夢を追うのをあきらめるって、そういう言い方がよくわからないんです。夢を追いかけてどうするんだろうとよく思います。 何かを望む場合、たいてい夢ではなくて現実なんです。
◆お金持ちの男と、性格は合うけど貧乏な男、どちらを選べばいい?
どちらにしようか迷っているということは、どちらもそんなに魅力がないということじゃないですか。
「どっちがいいか」ではなくて、「どっちがイヤか」も重要だと思います。
◆恋愛してないと死ぬほどさみしい。どうしても耐えられません・・・・・・
歩けるようになると、母親から離れていく。このとき赤ちゃんには、すごい喪失感があるそうです。
◆彼氏よりも収入のある私。彼はすごく気にしてイヤミを言ってくるんです
年収を気にしない男は、よほど自身があるのか、無神経で傲慢なのか、どちらかでしょう
◆最近、生きることに虚しさを感じるのです・・・・・・
それはギリシャ時代からみんなが考えてきて、いまだに答えがわからない問題です。
きちんと食べて寝るというのは、ひとつの出発点にはなります。
◆あまりに余裕がなく働いていると婚期を逃したりしませんか?
仕事と結婚を、対立するものとして考えるのはちょっと違う
コンパより、仕事を通じて知り合った方が、どんな男かわかるのではないでしょうか
◆ドラマのような幸せな結婚をしたいんです。どうすればできますか?
社会と世間が提供する「幸せ」や「理想」というモデルには、惑わされないほうがいい。
人はあるとき、自分自身の希望に、「出会う」のだ。
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