美容皮膚科医として思う ~選んでもらうということ~
今回は美容皮膚科として働く日々で感じることを書いてみます。美容医療を受けようか迷う方にとっては僕の視点で何を思うのか、何を見ているのかは興味のある内容かもしれません。以前内科として勤めていた僕からすると、美容クリニックならではの診察時の気遣いや考えがいくつかあります。今回はその点についてお話ししてみようかと思います。【目次】1.美容診察と内科診察の違い2.美容医療の業界事情3.選んでもらうということ【1】美容診察と内科診察の違い美容の診察は非常にデリケートです。内科以上に心情を意識する必要があります。一般的に医療というのは「病気を見つける」 (診断)↓「治す」 (治療)という流れで行われます。その点では美容の場合も同じ流れなのですが、ここで大きく異なるのは「病気かそうでないか」。病気の場合は見付けることが基本的に正義になりますし、患者さんも「この先生に診てもらって良かった。」と思います。しかし、美容の場合は必ずしもそうではありません。本人が悩んでいないところを指摘してしまうと嫌な思いをさせてしまう事があります。友達にならまだしも、プロとはいえ初対面の人間に「ここのシワが…」なんて言われるのは嫌な人も沢山いると思います。心の壁の厚さ、枚数は1人1人違います。最初から人とフランクに話せる人もいれば、長く時間を共にしないと気を許せない人もいます。初診の時というのはそれはもう一瞬のことで、初対面から5分とか長くて15分の中で「この人の言うことなら信用してみようかな」と思ってもらう必要があります。信用していない人の話を聞こうなんて思わないからです。保険診療という枠組みではないため、どうしても美容医療にはお金がかかります。限られたお金をどうやって有効に使うか、そしていかにして売り込みを回避するかに敏感になった状態で患者さんが来院します。僕がどれだけ純粋にその方を綺麗にしたいと思っても、相手の扉の鍵穴と僕の用意した鍵が合わない時はそれを伝えるところに辿り着けません。これは内科の頃には抱えてこなかった苦悩です。【2】美容医療の業界事情現在美容医療の分野は急速に拡大しています。以下は日本美容外科学会からの資料です。④2017年、非外科的治療(1,6302,738件)で件数の多い項目は何か? 1位 脱毛 2割強 2位 ボトックス 2割弱 3位 ヒアルロン酸注射(乳房は除く) 1割弱 4位 しみ・イボ治療(レーザー など) 1割弱 5位 非手術的痩身 *非外科的というのは簡単に言うとメスを使った手術ではないということです。この資料から分かることは・1年間で1630万件の非外科的治療が行われている。・脱毛以外が7割以上(1100万件以上)を占めている。などです。また、市場規模(どれだけのお金が消費されているか)も伸びています。日本においてどれだけ美容への関心が高まっているのかを示しています。美容クリニックのオーナーになりたいという経営者も増えていますし、それに伴ってクリニックの数も増えています。しかしこの時問題となるのが医師の数です。クリニックとして医療を提供する以上は医師がいないと成立しません。しかし現在の日本に美容医療を専門的に学ぶ大学や研修先というのは存在しません。その結果「医師がいる」→「クリニックが出来る」という順ではなく「クリニックが出来る」→「医師を集める」という順であることが増えていると考えられます。僕の身の回りでも医師の募集は常に行われています。こう書いてくるとそれが悪いことのようなイメージになってしまうかもしれませんね。でも、これはある分野が成長している時期には当然のことです。例えばIT関連が伸びている時にはその技術者が求められます。もちろん良い側面だけでは無いものの、日本の美容医療が進歩していることの証とも捉えられます。【3】選んでもらうということ視点を僕と患者さんのレベルに戻します。エリアにもよりますが、患者さんからするとクリニックは数え切れないほどあります。選ぶのも面倒だと思いますが、選べる立場にいます。そういう意味では僕は値踏みされる立場であったりするわけです。正直なところを言うと、僕は患者さんが満足してくれれば自分の所で治療を受けなくても良いわけです。例えば僕が料理屋さんのシェフをしていて、料理を提供しているとします。その理由が「おいしいものを食べて喜んでもらうこと」だとすれば、他のお店で美味しいものを食べてもらっても達成することが出来ます。自分のお店で食べてもらう理由があるとすれば、その顔が見えることだったり自分の修行の成果を認めてもらえることだったりするでしょう。つまり、自分の満足が理由になります。それが悪いこととは思いませんし、むしろその純粋な気持ちには好感が持てます。ただ、その仕事を選ぶ根本的な理由はそうでなくても満たされるということです。でもやっぱり、信用してもらえた時は嬉しいですね。選んでもらえた時も嬉しいです。喜んでもらえた時はもっと嬉しいです。以前の記事にも書いたのですが、僕は医者になりたての頃に点滴や注射をするのがとても嫌でした。自分よりも上手い人がいるのに、自分がするのは申し訳ないと思ったのです。でも、技術が上がれば上がるほど「誰かに任せるなら自分がした方がこの人のためになる」と前向きになれました。僕の技術はこれからも進歩し続けるでしょう。昨日よりは今日、今日よりは明日。毎日同じ日はありません。たまに息切れする時があっても、楽しい毎日です。楽しいことは楽とは違います。今日も明日も新しい出会いがあります。その人の人生の一部を任せてもらえるような自分でいようと思います。【最後に】今回は美容皮膚科医の視点で思うことを書いてみました!参考になる方は少ないかもしれませんが、伸びている分野なので興味のある方は多いと思います。今後も美容に限らず誰かの役に立つものを提供できればと思います!今回もありがとうございました!