レビュー8 サウンズ・オブ・サイレンス(後編)Simon & Grarfunkel | 秋 浩輝のONE MAN BAND

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はじめに言葉はない

ひとつ思いだしたのだが、ポールがロンドンにいる頃、恋人キャシーに送ったとされるテープが見つかり、ブートレッグCD化されたものを数年前に買った。(S&Gに関するブートは、ほとんど購入している)フォーク・ブルース風のアドリブ曲も数曲収められていたが、これが「バート・ヤンシュ」や「ジョン・レンボーン」のフレーズ、演奏法にほとんどソックリだったのである。いかにポールが、その当時、彼らの影響を受けていたのかがよく解った。

 

⑦リチャード・コリー
なぜか「ウイングス」もライブで演奏している。(ただし歌っているのは、ポール・マッカートニーではない)S&Gのライブでは、ほとんどの曲がポールのアコギ1本の伴奏だが、そのほうがオリジナルのバンド演奏より素晴らしいことが多い。それほどにポールのアコギは巧いのだ。このアルバムでは、⑤⑩(この2曲はライブでは一度も演奏されていない)以外は、すべてポールのアコギ1本でライブ演奏されているが、「リチャード・コリー」と「ブレスト」は、変則チューニングによるギターで、オリジナルのバンド伴奏よりも遥かにかっこいいと思う。詞は、次の曲「とても変わった人」と同様、自殺に関するものである。

 

⑧とても変わった人
この曲もライブのアコギ1本の伴奏のほうが良い。ギターは「スカボローフェア」のアルペジオを4拍子に変換したパターンを使っている。ポールがロンドンに滞在していた時、新聞で自殺した人の記事を読み、それを元に作ったそうだ。アパートに住む独居老人の孤独死のイメージだが、どこの国でも同じ問題なのかもしれない。

 

4月になれば彼女は
まるで童謡のような素朴で美しい曲。4月に彼女と出会い楽しい日々が訪れるが、8月に彼女は死んでしまい(原因は不明)、9月には秋風が冷ややかに吹き、恋は色褪せて…エンディングとなる。ただ、この詞は、未来形(WILL)が多用されており、空想物語と解釈すべきかもしれない。(死の表現は倒置法を用い、die she must(彼女は死ぬに違いない))ボーカルはアートのソロ。「ポール・サイモン・ソングブック」では、ポールの歌が聴けるが、この曲はアートの軽い声質、丁寧な表現のほうが合っている。特質すべきはポールのアコギの素晴らしさ! ライブ・バージョンもあるが、なにより、このスタジオ・バージョンが勝っている。(歌も演奏も)

 

⑩はりきってゆこう
冗談のような日本語タイトルだが、曲そのものも「どこにもいないよ」同様、間に合わせで作った感じがする。イントロのメロディは「アンジー」の中のアドリブ・フレーズ、「Work song」のメロディをそのまま借用。詞の内容(悪いニュース!彼女に振られちゃったよ~!)の軽さといい、ポール流の冗談ソングだと位置づけたい。

 

⑪アイ・アム・ア・ロック
シングル・カットされて、かなりヒットしたようだ。詞の重さに比べてアレンジが軽い。漫画家「柴門ふみ」は元祖引きこもりソング(笑)と言ったが、まさにそのとおりかも。この歌の主人公は、愛や友情を否定し、誰も入ることの出来ない壁を作って本の世界に閉じこもる。そして自分は岩だ、島だと叫ぶのだ。それらは痛みも感じないし、嘆くこともないと。この詞のイメージをきっちり表現しているのは、「ポール・サイモン・ソングブック」でのポールの歌とギターである。良くも悪くも感情がこもっていて、あまりにも暑苦しいと感じさせなくはない(笑)