【第二回目】お前と表彰台の差はコンマ数秒数cm | 同志社大学ボート部公式ブログ

第二回目は、ボート速く漕ぐためにまず知っておかなければいけないテクニックにふれていきます。当たり前のことから入っていきますが、ボートは当たり前ができるかできないかで、ただの体が強い人間か、オリンピック選手かを分けることになります。当たり前を疎かにしない。これ大事。

 

 

ボートというスポーツは、キャッチしてからドライブ、フィニッシュしてからリカバリー、リカバリーしてフォワードしてキャッチ、という一連の動きをだいたいどの種目も約220回程繰り返します。(チームによっては大きく異なるかもしれません。)
この中で重要になってくるテクニックは

 

①キャッチから次のキャッチまでの動きの中で、できるだけ短い時間で、できるだけ遠くへ艇を進め、なおかつできるだけ休む。

②一漕ぎ一漕ぎで艇速をリセットしない。

③220回の動きの中で、最後まで同じポジションを守る。(スタート等は除く)

④艇を上下左右無駄なく真っ直ぐ、進め続ける 。

⑤コンディション、艇、スピードにあった漕ぎ方をする。

 

の大きく5つになります。これら一つ一つに具体的に触れていくのは後の回でやるとして、これをまず理解していないと、日本一は不可能でしょう。
ここには入れていませんが、ユニフォーミティはもちろん、勝つということを考える上ではレースプランの建て方や、勝負どころでの勝負の仕方や、レース当日までのコンディショニングなども外せません。ですが、風呂敷を広げすぎても分かりにくくなるので、一旦はこのローイングの基本的なテクニックについて触れていくことにします。これらの5つの事がいかに大切なのか、例をあげて考えてみましょう

 

 

①キャッチから次のキャッチまでの動きの中で、できるだけ短い時間で、できるだけ遠くへ艇を進め、なおかつできるだけ休む。


シングルスカルで考えてみましょう。ランニングスタートで0m地点へ突入、そこから2000mまで一定の動きをするという前提で

まず1ストロークでの距離の差の影響を考えてみましょう。

 

rate32で、

 

ワンストロークで、8.2m進められるA
ワンストロークで、8.0m進められるB

 

がいたとします。


A君はこのペースだと、7分36秒でゴールしますが、B君はこのペースだとなんと7分48秒。1ストローク手の平分の差が、2000mでは12秒にもなってしまうのです。

では、キャッチから次のキャッチまでの時間の差ではどう影響するか。

 

1ストロークが8m

 

キャッチから次のキャッチまでが1.875秒(rate32)秒のA

1.818秒(rate33)のB

 

このペースだとA君は、7分48秒ですがB君は、なんと7分34秒です。たった0.057秒の差が14秒に化けるのです。

この2つを合わせると、

 

1ストローク8.2m、レート337:23
1
ストローク8.0m、レート327:48

 

手のひらと0.057秒の違いだけで25秒も差がつきました。恐ろしいものです。

勿論ただレートを高くするだけだと疲れるだけなので、水中で推進力になってない時間、水中以外で休んでいない時間をできるだけ減らすことが大事になってきます。

 

 

②一漕ぎ一漕ぎで艇速をリセットしない。


どんな艇に乗っても、上に乗ってる人間の重さの合計は、艇の約4~7倍になります。もしそんな重さの塊が艇の上で前に突っ込んだら、艇がどんな動きをするかは想像に容易いはずです。
ただ艇が止まるだけならまだしも、止まった艇を動かすのは、走り続けている艇を動かすよりもしんどいです。もしこれができなければ、周りか軽く漕いでいる中、あなたは延々重く漕がなければいけません。

小艇に乗るとレートが出にくいという人はだいたい、キャッチ前で艇を止めて、なおかつブレードが遊んでいます。0.05秒の差でレート一枚の差なので、その辺の無駄な動きにはできるだけ気を配らないといけません。大艇になるとごまかしが効くのでわかりにくいので、選手全員が小艇で漕いだときに自分がどんな動きをしてどれくらいのタイムが出せるのかを把握する必要があります。それがクルーボートのユニフォーミティの練習の第一歩目です。日大などが組んで間もないクルーでも高い完成度でインカレで勝てちゃうのはこういうことを知っているからなんですね。

 

③220回の動きの中で、最後まで同じポジションを守る。


例えば同じテクニックを持っていて、同じエルゴタイムを持っている選手でも、第三、第四クォーターとなるにつれて、漕ぎ方が崩れる選手と、毎ストローク全く動きが変わらない選手では確実に後者の方が先にゴールするでしょう。
大切なのは、疲れても体がぶれずに水中やリズムを維持し続けること。
エルゴタイム強い=レース後半に強い
ということにはならない。数値ではなく中身を見るべき。

 

④艇を上下左右無駄なく真っ直ぐ、進め続ける 。


これは一番わかりやすいですね。左右ぶれずに真っすぐ進めるのは特に瀬田にいる我々が苦手なことです。舵手なし艇などで顕著に上位クルーと差が出るのがこれです。

仮に500mごとに自レーンの端から端に斜めに進めてしまうと、2000mで約12、3m余分に漕がなければなりません。勝負の分かれ目に大きく関わる距離です。

上下のブレはいわゆるピッチングというやつです。ピッチングしながらも力強く、ピッチングしない艇より進められててそれを2000m維持できるならそれでもいいですが(実際国によっては全然しないところとまあまあするところがあります。)やはり水の抵抗をできるだけ減らすには、しないほうが良いでしょう。

また、艇の急激な加速も水の抵抗を増やす原因になります。詳しく知りたい人は物理を勉強するか、実際に試してみて下さい。艇を急激に加減速させることなく安定した艇の進め方をすることが、目には見えづらい強さの秘訣です。

 

⑤コンディション、艇、スピードにあった漕ぎ方をする。


イメージしてください。
猛烈な風を出し続ける巨大扇風機に向かって走るときと、巨大扇風機を背にして離れながら走るとき。必ず同じように走れないはずです。ボートも同じです。
スピードが出る順流の時と、スピードが出にくく重くなる逆流の時、必ず漕ぎ方が変わるはずです。
大切なのは、どのようなコンディションでも確実に1ストロークで艇を運ぶこと、そしてその感性を働かせること。瀬田川は順流と逆流があり、その練習は寧ろやりやすいはずです。順でいいタイムが出たけど逆でポンコツではレースでは勝てません。

また、艇の速さは乗る艇によっても違います。1×と4×では同じスカルでも1分以上違います。もちろん流れる水の速さも違うので、順風と逆風の時と同じように、基礎は同じでも求められることは少し違います。選手はそういったことにも気を配り、どの艇はどうやると速く進むのかを知っておく必要があります。

 

 

以上5点、大切なポイントを絞りました。これらに対してどうアプローチしていくかがとても重要ですが、まずはこれらのポイントを理解しましょう。