「電子書籍の真実」 出版業界における課題 | 道玄坂で働くベンチャー課長だったひと

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Il n'est qu'un luxe veritable, et c'est celui des relations humaines.
Saint-Exupery(真の贅沢というものは、ただ一つしかない。それは人間関係の贅沢だ。
サン=テグジュペリ)
 

よくニュースでも電子書籍の話題が取り上げられているように、
最近、マイコミ新書にて出版された『電子書籍の真実』を読んでみました。
  
目次は次のようになっており、電子書籍の概要、歴史から、
最新の話題、日本の出版業界が直面している問題等を網羅しており、
現在、発刊されている電子書籍本ではこれが、

一番よくまとまっているかもしれません。  
 
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<目次>
第1章 2010年電子書籍元年
第2章 日本の電子書籍の歴史
第3章 電子書籍とは何
第4章 課題1-フォーマットおよび日本語の問題
第5章 課題2-流通の問題
第6章 課題3-権利の問題
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電子書籍はアメリカが大きく進んでいて、
キンドルが端末のリーダーとして普及していることもあり、
かなり一般化されている印象があります。
 
日本における電子書籍が遅れているのはいくつか理由はあるのですが、
その1つに、日本語という特性が第4章に解説されていますが、
要因としてあります。
 
現在使っているパソコンのキーボードでさえ、
もとはタイプライターであったわけで、数字等の特殊な文字を抜けば、
アルファベット自体、26文字で構成されています。
 
それに対して、日本語はまず、ひらがな、カタカナ、漢字の3種類があり、
漢字の中にも旧字体もあれば、人名漢字でも微妙に異なりますし、
同じ読み方や意味でも異なる異体字も存在します。
 
コンピュータ上では、文字を表示させるのに、画像として認識しているのではなく、
各文字ごとに文字コードが存在し、仮に"A"であれば、"0001"とかという風に、
構成されているわけですが、日本語の場合、膨大な数になります。
 
その上、ルビをふったり、フォーマットが縦書きであったり、
横書きであったり、そういうことをやっているとアルファベットに比べ、
日本語は生産コストが1桁異なるといいます。
 
先日、開催された東京国際ブックフェアでも、
デジタルパブリッシングコーナーは大盛況で、
こういった課題をクリアするべく、各企業が展示紹介をしていました。

 


道玄坂で働くベンチャー課長

 
日本の電子書籍を語る上で避けて通れないのが、
再販制度です。

wikiによれば、再販売価格維持とは、
ある商品の生産者または供給者が卸・小売業者に対し
商品の販売価格を指示し、
それを遵守させる行為で、メーカーが小売業者に対し、
商品の小売価格の値段変更を許さずに定価で販売させることです。
 
つまり、ひらたくいえば、書店が本の値段を決めることができず、
割引してセールで販売したくても、それらができず、
あくまで定価でしか販売できません。
 
そういう再販制度が日本には存在するので、
ブックオフはそこに市場を見出し、中古本のプラットフォームを構築し、
1割で買取、半額で販売という事業形態が誕生しました。
 
しかし、その分、書店は本を出版社から入荷するわけですが、
その時点で出版社から買い上げているわけではなく、
売れた分はお互いの収益になり、のこりはそのまま出版社に戻すような仕組みで、
よく話としてあるのが、入荷すれども一度も店頭に並ばずに、そのまま返品される
というケースが発生します。
 
本1冊における関係者が誰であるかというと、
作家、出版社、印刷会社、流通・物流業者、取次店、書店、購入者に
区分されます。
 
日本の場合、作家への印税は通常10%で、
書店側の取り分は30%で、残りは出版社側になります。
 
そうして考えると、電子書籍の場合、根本的に関係者の構成が異なるわけで、
ただでさえ、出版業界が縮小し、雑誌の廃刊が相次いでいる中で、
いままで再販制度に守られていた部分が、大いに企業が変化に対応するが、
求められている時代になっています。
  
いままでであれば、出版社であれば企画力勝負であったわけですが、
電子書籍の登場により、構造が根本的にくつがえり、
出版社にしても、印刷会社にしても、取次店、書店にしても、
それぞれが自身の立場、役割を再考する必要があります。
 
電子書籍に関しては、今後もいろんな角度から論じていきます。。
 

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