石井光太氏と絶対貧困の世界 | 道玄坂で働くベンチャー課長だったひと

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Il n'est qu'un luxe veritable, et c'est celui des relations humaines.
Saint-Exupery(真の贅沢というものは、ただ一つしかない。それは人間関係の贅沢だ。
サン=テグジュペリ)
 

先日、阿佐ヶ谷ロフトにて、
『レンタルチャイルド』出版記念として、
石井光太氏トークイベントに参加してきました。
 

道玄坂で働くベンチャー課長

(右から2番目が石井光太氏)
 
石井光太氏の著作は、『絶対貧困』がきっかけで、
自身相当なショックを受け、貧困というものがここまで、
構造化されていることに無力感で呆然としました。
 
その後、『物乞う仏陀』を読み、今回のイベントに参加しました。
 
『絶対貧困』は全体を俯瞰的に、客観的にとらえているのに対し、
『レンタルチャイルド』は1つのテーマを徹底的に追求しています。
 
貧困世界を映像(映画)でとらえると次のような作品があり、
より立体的にとらえることができます。
   
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ウガンダでの紛争を子どもたちの視点で描いた「ウォー・ダンス」
http://www.wardance-movie.com/
 
インド・カルカッタの売春窟の子供を描く「未来を写した子どもたち」
http://www.mirai-kodomo.net/


http://ameblo.jp/dupondt/entry-10348296631.html
  
バングラデシュ・ダッカを舞台にした「アリ地獄のような街」
http://www.arijigoku.net/
 
ケニアを舞台にした「チョコラ!」
http://www.chokora.jp/  

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自分は当初、石井光太氏は『深夜特急』で有名な沢木耕太郎と
スタイルが近いのかと思っていましたが、読み進めていくうちに、
また、実際に本人にお会いし、全く異なることを確信しました。
 
それは、沢木耕太郎が自分探しの旅であったのに対し、
石井光太氏は仕事としての完全な取材旅行。
 
トークショーの中で、石井光太氏が繰り返し述べていたのが、
ノンフィクション作家としての自身の商品価値、唯一性、絶対性で、
一職業人として、非常にシビアに見ています。 
 
著者は貧困世界に思い入れがあると思っていたのですが、
実際、必ずしもそうではなく、現在、国内でHIVに関する取材をしているように、
他人があまり扱わないテーマを、独自の手法、取材で、書き起こしていきます。
 
石井光太氏の特長は、見えない部分を描く点です。
 
それは写真で撮れない場面や匂いや熱気などの情景、人の気性。
 
また、いろんなひとと接する中で、何気ない言葉のやりとりにおいても、
なぜ、その人がそういう発言をしているのか、
その裏や真相をとらえようとし、実際に付き合いを重ねていく中で、
その事実をつかんでいきます。
 
自分は、石井光太氏が貧困世界を改善したいという思いで、
作品を描いているのかと思いましたが、それも思い違いのようでした。
 
当然、作家としてその事実を周知するという役割がありますが、
それがイコール貧困世界の改善ではありません。
 
長期に渡り貧困世界に滞在し、その闇の深さもわかっており、
人間ひとりを救うこと、変えることの大変さ。
 
石井光太氏はトークショーで、書くやりがい、喜びとは、
「読者の心をゆり動かすこと」であると語っていました。
  
それを聴いて、自分は腑に落ちる気がしました。
 
貧困世界が良くなるかどうかは結果論であって、
それを第一目的にしているのではなく、
テーマが何であれ、作品を通じて読者の心が少しでも変わること。
 
そこには、ノンフィクション作家として透徹した眼光があったのでした。。
 

道玄坂で働くベンチャー課長

 

 

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