検察の正義 | 道玄坂で働くベンチャー課長だったひと

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Il n'est qu'un luxe veritable, et c'est celui des relations humaines.
Saint-Exupery(真の贅沢というものは、ただ一つしかない。それは人間関係の贅沢だ。
サン=テグジュペリ)
 

郷原信郎『検察の正義』(ちくま新書)
 
著者である郷原氏は変わった経歴の持ち主で、
元検察ですが、東京大学理学部卒業後、
三井鉱山に就職するが、会社の体質になじめず、
独学で司法試験に合格し、司法研修生の頃、
法律事務所への内定があったにもかかわらず、
検察教官にしつこく勧誘され、郷原氏いわく、
 
「要するに、私は自分から検事に任官したいと思ったことは全くない。
 検察の側の「策略」によって、弁護士になる道が閉ざされ、
 検察の組織に無理矢理引きずり込まれてしまい、
 仕方なく検事に任官しただけだ。」
  
その後、東京地検に所属し、公安部、特捜部を経て、
長崎地検次席検事になり、現在、郷原総合法律事務所を
開設し、弁護士のほか、各種委員会、講師等を勤めます。
 
『検察の正義』という書名は、正義を証明する為ではなく、
批判するためのもので、検察、とりわけ特捜に関し、問題提議しています。
   
まず、裁判官は特捜部の看板に弱く、同じ法曹資格者である
検察官の集団である特捜部が逮捕から起訴まで、
すべて自前に行い、しかも、検察が組織として起訴を
了解している事件について無罪判決を行うのは難しいのです。
 
また、特捜部が起訴する場合、最高裁に報告し了解を得た上で、
有罪にできると判断のもとに起訴しており、
特捜検察の根幹に関わる場合、裁判所の判断は、
最高裁でしか行い得ないのです。
  
ライブドア事件に関しても、東京地検特捜部が
大々的に強制捜査に乗りだし、「闇の部分」を
明らかにしようとしていましたが、結果的にすべて不発。
 
最終的には起訴されたのは、
「風説の流説」の事実と有価証券報告書の虚偽記載の事実の
2つの証券取引法違反だけであり、
前者は極めて軽微な違反事実、後者は会計処理方法の問題。
 
ライブドア株の下落の原因は、
粉飾決算の事実によってではなく、実際は、
検察が大々的に強制捜査を行ったこと自体でした。
   
司法関係に興味のある方は、ぜひ一度ご一読ください。
 
「特捜は ビッグタイトル 見切り発」 シチョウアタリ
 
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