エベレストでの決断 of 野口健 | 道玄坂で働くベンチャー課長だったひと

道玄坂で働くベンチャー課長だったひと

Il n'est qu'un luxe veritable, et c'est celui des relations humaines.
Saint-Exupery(真の贅沢というものは、ただ一つしかない。それは人間関係の贅沢だ。
サン=テグジュペリ)
 

そんなことで、彼も、
若くして、無事、7大陸制覇をし、
当初の願業を遂げたわけであります。
 
ただし、ヒマラヤに関しては、
1回目で成功したのではなく、
3回目にして、ようやく踏破できたのです。
 
彼は、その失敗から、
さまざまな教訓を学んでおり、
特に引き返す勇気、決断が大事であるといっています。
 
それといいのも、ヒマラヤ登頂には、
いろんなものを背負っていくわけなのであります。
 
それは、物理的な荷物ということではありません。
 
まず、お金にしても、一回に数千万円は、
必要とされます。
 
それらの額は当然、自分のお金ではないわけで、
スポンサーがいくつもいて、
応援してくれているわけになります。
 
また、日本の登山会もありますし、
様々な関係者の協力、期待があって、
成り立っているわけであります。
 
そういうことを考えてしまうと、
是が非でも、登頂に成功しなければならず、
どうしても、勢い込んでしまい、
無理な挑戦、アタックをしてしまうといいます。
 
そうするとどうなるかといいますと、
やはり、遭難する確率が圧倒的に、
高くなってしまうのです。
 
かといって、失敗しましたといって、
日本に帰国すれば、世間から、
何で登頂を果たさずに、途中で、引き返してきたのかと、
冷徹な扱いをされることは必至で、
スポンサーにとっても、山頂を果たさなければ、
宣伝効果がないわけで、出資する意味がないのです。
 
しかし彼は、それらを覚悟の上で、
死んでしまっては、もともこうもないと、
決断して、引き返したというのです。
 
こういった登山隊に対するバッシングが多いのは、
日本や韓国であり、対照的に、欧米では、それらがほとんどなく、
それだけ、登山者、山に対する理解が深いともいえます。
 
もとから、欧米は、他人の行動に対して、
いい意味で関与しないであり、
日本は、とかく人の行動に干渉する傾向があり、
歴史的にも「村の文化」である以上は、
仕方のないことかもしれません。
  
ようやく彼は、3回目にして、
登頂に成功し、凱旋帰国を果たしたわけでありました。