サイパンの記憶 | 道玄坂で働くベンチャー課長だったひと

道玄坂で働くベンチャー課長だったひと

Il n'est qu'un luxe veritable, et c'est celui des relations humaines.
Saint-Exupery(真の贅沢というものは、ただ一つしかない。それは人間関係の贅沢だ。
サン=テグジュペリ)
 

昼スキューバをしていたこともあり、
身体的に疲れていたため、夜はわりと静かに過ごしていました。
 
他の社員は、外に出かけたりしていましたが、
自分は、しばらくホテルの部屋にいました。
 
テレビをつけるといろんな番組がありますが、
その中にCNNがありました。
 
大学時代、AV教室等でときどきみていたこともありましたが、
生のCNNは初めてで、なかなか見ていて興奮しました。
 
それというのも、アメリカに来るのは、これが初めてであり、
ひさびさに英語を使えるチャンスだと、張り切っていました。
 
しかしながら、実際にサイパンに到着してみると、
アメリカというよりも、沖縄のイメージに近いのです。
 
街中の看板の表記は英語ですが、
もともとサイパンは、チャモロ人の島で、
彼らはチャモロ語で話します。
 
なので、サイパンは純粋なアメリカ人というのは少なく、
東南アジアから移住してきた人が多いのです。
 
そういうわけで、当初期待していた
ネイティブのアメリカ英語に、
あまり接する機会がありませんでした。
 
なので、テレビでCNNを見て、
自分が期待していた通りのアメリカ英語が、
使われているのをみて、それだけで、
魅了されてしまいました。
 
その時の番組は、ジョージ・ソロスが、
インタビューを受けていて、
さすがCNNだと思いました。
 
日本のテレビ局では、なかなか
ジョージ・ソロス級の人にインタビューするというのは、
難しいと思います。
 
ただ、NHKスペシャルの取材班であれば、
容易にやってのけそうな気がしますが。

しかしながら、いくらCNNがおもしろいからといって、
ずっと部屋でいるのももったいない気がして、
夜、ホテルの近くの浜辺を一人で散策していました。
 
5分、10分と歩くうちに、ひと気がなくなり、
だいぶ、静かな雰囲気の場所にいました。
 
社員旅行を含め、旅行というものは、
どうもせわしく、ざわざわしているため、
自分ひとりの時間というのが、なかなか確保しづらい
環境にあります。 
 
そういう精神的疲労感もあり、
ひとり、浜辺にあるリクライニングに
横たわりながら、ただひとり、
暗やみの中で、押しせまる波の音に聴き入っていました。
 
そうっと目を閉じると、本当に心地よく、
自然と対話しているような感じになります。
 
旅行の中で、スキューバも印象的でしたが、
最も自分にとって、回想して一番良かったのは、
この波の音を聴きながら、
静かに瞑想にふけっているときだったと思います。
 
世の中の楽しみには、2つあると思います。
 
1つは、人と共有して、協力して、
何かを成し遂げること。
主に団体競技や会社での仕事は、
これに該当します。


もう1つは、あくまで自分ひとりの世界で、
他の人と共有しない自分だけの楽しみ、
享楽であるということです。これは、
芸術や個人競技、読書もそうであるかもしれません。
 
どっちがいいとか優劣をつけるつもりは、
毛頭ありませんが、自分は、どちらかといえば、
独自の価値観が強いため、後者よりの人間だと
思っています。
 
ただ、そうはいっても、ひとりで
成し遂げられることには、限界があり、
大きなことをしようと思えば、
他人の協力なしには、絶対に実現できません。
 
そういうわけで、2、3時間は、
そうして暗やみの中で、うたた寝をしていたのでした。
 
旅行で、スケジュールをみっちり組むのもいいですが、
こうやって、空白の時間を設けて、
ひとりボーっと思索にふけってみるのも、
悪くないと思いました。