<前回の続き>
前回、自分をコントロールするには「理性」と「忍耐力」をもって「ブレーキを踏む」ことが重要だと書いた。
ここまでで、自分をコントロールするには「力を入れる」と「力を抜く」と「ブレーキを踏む」の3つを挙げたことになる。
ところが、これで自分をうまくコントロールができるかといえば、そうはいかない。
もう1つ、決定的なことが抜けている。
それは「方向を変える」ということだ。
つまり、車で言うところの「ハンドル」がこれに相当する。
どんなに車の運転が上手でも、「アクセル」と「ブレーキ」だけでは目的地に辿り着くことはできない。
方向を切り替えることのできる「ハンドル」がついているからこそ、自由自在に移動し、目的地に到達することができるのだ。
今の世の中、誰しも問題を抱えていることだろうと思う。
ところが自分が抱える問題について、考えても考えても、うまい解決策が出てこないことがある。
それどころか、考えれば考えるほど、悪い方向に思考が向かってしまう、ということは誰にでも経験があるのではなかろうか。
そんな時、周りの人はこう忠告する。
「あんまり考えすぎてはいけないよ。」
そう言われると確かに自分でも考えすぎだと思って、自分で「力を抜く」や「ブレーキを踏む」などして、「考えること自体」をやめようと試みる。
ところが、時間が経って、また同じことについて考えを再開すると、やっぱり同じような結論になってしまい、堂々巡りになってしまう。
こういうときは、「考えすぎるから解決策が見えてこないんだ」と結論づけるべきではない。
「考える方向が1つに偏っているから解決策が見えてこないんだ」と意識すべきだ。
人は誰でも自分なりの「価値観」を持っていて、その価値観に従って物事を考えたり、判断したり、行動したりする。
ところが、自分の「価値観」というものはそうそう変わらない。
1つに固定された価値観を基準に物事を考えていっても、結局は同じ答えしか見つからない。
そこで「方向」を変えてみる。
「方向を変える」ということは、自分の価値観とは違う方向で物事を見てみるということだ。
これは言うは易く、行うは難し、である。
考え方の方向を変えると言っても、どうすれば良いのだ?
一番シンプルなのは、「真逆」を想像してみることだろう。
例えば、仕事がたくさんあって、なかなか終わらなくて困っていたとしよう。
終わらないから、仕方なく残業をする。
最初は1時間の残業だったのが、それでも仕事が終わらなくなってくる。
だから、次第に、2時間、3時間というように残業時間が増えていく。
これは、仕事が終わらないから、残業時間を増やしていく、という考え方だ。
しかし、一時的な繁忙期ならこれで乗り切れるかもしれないが、慢性的にこの状態では、大抵これでは問題は解決しない。
むしろ、長時間労働で身体をこわすなど、余計に問題を悪化させてしまうことだってある。
そこで、「考え方の方向」を「真逆」にしてみる。
つまり、「仕事が終わらないから残業しよう」ではなく、
「仕事が終わらないから、早く帰ろう」という考え方だ。
仕事が終わらないのに早く帰ろうとは何事だ!と叱られてしまいそうだが、これは、まずは「早く帰って休む」ことを目標にすべきという意味だ。
「定時に仕事を終えて帰る」を実践するためには、業務時間中の時間の使い方を見直さなくてはならないだろう。
もしかしたら、自分がやらなくても良い仕事までやってしまっているのかもしれない。
あるいは、本当は時間をかけなくてはならない仕事にあまり時間を割いていないことが、仕事全体の効率を下げているのかもしれない。
忙しい時こそ、早めに帰ることを意識すべきだが、「早く帰ろう」という考え方がそもそも選択肢の中になければ、絶対に早く帰る日はやって来ない。
このように、自分が当たり前だと思っている「仕事が終わらない→残業すべき」という図式を、自分の「価値観」に逆らって「真逆」にしてみると意外に問題が解決したりする。
もちろん、自分の「価値観」に逆らって「真逆」に考えるということは簡単なことではない。
しかし、真逆とまでいかなくても、自分の考え方が一方向だけに偏っていないかを見つめなおすだけで、それまで決して思いつかなかった発想を見つけることはある。
自分をコントロールするには、「アクセル」と「ブレーキ」だけでなく、「ハンドル」を駆使して縦横無尽に自分の思考を走らせてやると良い。