前回のテーマは「考える」についてだった。
何かを身につけたり、何かを理解しようとする際、ただ「覚えよう」とするだけでなく、「考えよう」という意識を持つと良い、ということを書いた。
しかし、「考えれば考えるほど悪い状態になる場合もあるから、あまり考え過ぎるのは良くない」という人もいるだろう。
確かにそうかもしれない。
しかし、そうではないかもしれない。
「考える」と言うと、まず「深さ」に目が行くかもしれないが、もう1つ重要な要素として「方向」が見落とされがちだ。
つまり、どれだけ「深く」考えを掘り下げても、考える「方向」がそもそも悪ければ、考えれば考えるほど悪い状態になるのも当たり前だ。
目の前に問題があって、考えても考えても状態が改善されない時は、「1つの方向」でしか考えていないのではないかと自問すると良い。
問題を解決していくには、1つの方向だけではなく、まずは自分が既に考えている方向とは別の方向を探す必要がある。
真逆の方向とか、ちょっとひねった方向とか、それらの中間の方向とか。
常に一方向だけで思考を深めていくと、その方向と異なる考え方をする人と対峙した時に摩擦が生じたり、衝突したりする。
あるいは、勉強をしていても、例えば文法書を読んでも、なかなか正しい理解に辿り着けなかったりする。
複数の方向で考えるというのは、イメージで言うとこんな感じだ。
自分を中心に円を描くと、360度の思考の「方向」があることに気づく。1度に1つとしても360通りの考え方がある。
更にこれを3次元でイメージし、ある球の中心に自分を置いてみる。すると、360度×360度の数だけ「方向」が見えてくる。
普通は、人が何かを考え始めると、自分が向いている「前方」だけに思考が向きがちだ。しかし普通なら向かない方向にだって考える要素があるはずだ。
「考えれば考えるほど悪い状態になるから、考えるのはやめよう」というよりは、
「自分が自然に考えてしまう方向を敢えて避けて、別の方向を探しながら更に考えてみる」という方が問題は解決しやすいのではないか。
しかし、「自分が自然に考える方向とは別の方向で考える」というのは、本当に思考力が必要だ。
こんなことを書いている私だって、たいていは1つの方向に凝り固まって考えてしまうことの方が多いと思う。
1つの方向に偏らない為には、自分を肯定すると同時に否定したり、あるいは自分を信じると同時に疑ったりすると良い。
要するに、自分の中で「矛盾」を持つことが大事なのだ。
「矛盾」というと悪いイメージがあるかもしれないが、とんでもない。
「矛盾」があるから色々な方向へと考えていけるのだ。
少なくとも2つの真逆の方向に両極を捉えることができれば、そこで少なくとも「バランス」を取ることはできる。
1つの点ではバランスは取れない。
2つ以上の点があればバランスは取れる。
複数の方向からバランスを取るように「考える」を深めていけば、少なくとも「考える」を始める前よりは状態は良くなるのではないかと思う。
ブレーキを踏んでいれば事故に遭う確率は下がるかもしれないが、ブレーキを踏みっぱなしでは決してゴールに辿り着けない。
だからと言ってアクセルばかりでもゴールに辿り着けない。
アクセルを踏んで、さらに「ハンドル」で方向を変えていくからゴールに辿り着けるのだ。
「考える」のがうまい人は、「思考のハンドル」さばきもうまいのだと思う。