◎不要不急の仕事
コロナ騒動によって、音楽が「不要不急」の
仕事に分類された。
なくてもよい仕事だという意味だが、
この件を自分の心の中で整理して
納得しないことには今後、
先に進むことはできない、と思った。
なくてもよい仕事に価値はあるのか?
それをつづけることに
どういう意味があるのか?

◎音楽は生き方
3年間の哲学で辿り着いた結論は、
音楽家が音楽をするのは仕事ではなく
生き方だということ。
生き方とは命の使い方であり、
それは使命だということ。
この氣づきについては、
今まで何度かこのブログにも書いた。

◎「仕事」と「生き方」の違い
それでは一体何が仕事で、
何が使命(生き方)なのか?
ベートーヴェンの仕事と使命を例にすれば
わかりやすいと思う。

◎仕事とはすぐにお金になること
確実にお金になることが仕事である。
その意味で、ベートーヴェンには、
二つの仕事があった。
ひとつは、貴族の娘にピアノを教えること。
ベートーヴェン先生をピアノ教師に選べる貴族は
かなりの大金持ちである。
高いレッスン料が保証されている。
ついでに恋もできる。
ベートーヴェンは、
何人ものピアノの生徒に恋をした。

もうひとつの仕事は、貴族の集まるサロンで、
ピアノの即興演奏をすること。
即興と変奏曲の天才だったベートーヴェンは、
サロンの参加者から出された
三つか四つの音を元に短い旋律(テーマ)を作り、
それを即興的に変奏させていく。
第一変奏、第二変奏、第三変奏……どんどんと
即興的に作曲しながら演奏し、
貴族たちを感動の渦に巻き込んだ。
貴族たちからの「投げ銭」は莫大だった。
ベートーヴェンにとって確実に
お金を稼げた仕事はこの二つ。

◎難聴という絶望
耳が遠くなっていく絶望感の中で
ベートーヴェンは、ピアノ教師の仕事をやめ、
サロンへの出入りもやめた。
貴族たちと普通に会話ができなければ、
サロンに行く意味もなかった。
手っ取り早く稼ぐ道(仕事)はなくなった。
自殺も考え、遺書も書いたが、
彼に自殺を思いとどまらせたのは
藝術の力だと思う。

◎五線紙に向かう「生き方」
即興演奏、変奏の天才だったベートーヴェンだが、
その場で消えてなくなる使い捨てのような
音楽のあり方を良いとは思っていなかった。
その場限りの称賛を受けて満足する
ベートーヴェンではなかった。
すぐお金になる「仕事」はやめた。

そのとき彼はひたすら五線紙に向かった。
それは彼の「生き方」だった。
ピアノ・ソナタ、交響曲、弦楽四重奏曲の
作曲に没頭した。
演奏会の主役が歌だった時代に、
歌のないジャンル、つまり一般聴衆に
なかなか受け入れられにくい分野に集中して
作曲のエネルギーを向けた。
そうして五線紙に残された作品が
200年後の今も、ピアニストや音楽家を刺激して、
ボクらに感動をもたらしてくれる。

ベートーヴェンは、
作曲という「生き方」によって
使命を果たした。
作曲は、作品の価値が認められて
楽譜が出版されないとお金にならない。
録音や放送のない時代である。
ベートーヴェンの希望の価格で出版権が
売れるとは限らない。
そこでベートーヴェンは、貴族への作品の
献呈ということを考えた。
楽譜に「献呈辞」を書き込み、貴族に
プレゼントするのである。しかし
御礼の金額がいくらなのかは
もらってみるまでわからない。
「生き方」(使命)を貫くことは、
なかなかお金にはならない。

◎頼まれなくても描きたいもの
(葉祥明さん言葉)
画家で詩人の葉祥明さんとは、
絵本『ひろいかわのきしべ』で一緒に
仕事をすることができた。これは、
ボクが訳詞した《広い河の岸辺》が
もたらしてくれた無数の幸運のひとつ。
今年の2月、葉祥明さんに会いに行った。
親戚に絵本作家志望の美大生女子がいるので
アドバイスをいただきたいと思って
彼女と連れ立って行った。

葉祥明さんがおっしゃった。
「誰にもたのまれなくても描きたいものが
あるかどうかが大切です」。
「頼まれなくても描きたいものがあれば
それは100年後に残る可能性があります」

頼まれて描いたら、それはお金になる
「仕事」である。しかし頼まれるかどうか、
わからない。頼まれなくても描くことは、
お金にはならないことを覚悟しても
本当に描きたいか、ということ。
それだけ強い思いがあるか、ということ。

手っ取り早く稼げる仕事をやめて
すぐにはお金にならない作曲という
生き方(使命)に向かったベートーヴェンと
同じだと思った。
ベートーヴェンは頼まれなくても
書きたい音楽を書いた。
それが200年後にも必要とされる作品になった。

◎ベートーヴェンの仕事も不要不急
ここまで書いてきたように、
すぐにお金になる「仕事」というものは、
やはり「不要不急」である。
ベートーヴェン先生からピアノを教わった
貴族の娘が成長して大ピアニストになった
という実績はない。つまり、
後世には何も残らなかった。
即興演奏はすぐにお金になったが、
それ以外には何も残らず、
歴史的には不要不急の仕事だった。

こうしてみると、
人間を育てる教育というものは
不要不急の仕事でなく、
未来をつくる使命なのだとわかる。
ピアノや歌の指導も教育のひとつである。

ベートーヴェンの交響曲の演奏会でさえも、
それを実際に聴くことができた人の
人数を考えたら、ウィーンに住む人々の中の
ごく僅かな人たちでしかない。つまり、
ベートーヴェンの作品が演奏される
コンサートでさえも、当時は、不要不急だった。

しかしベートーヴェンがそういうコンサートを
開かなくてはならない理由があった。
出版社の社長を招待して、自分の作品で
聴衆が熱狂しているところを見せる
必要があったのだ。
楽譜が出版されないと、作曲という使命が
お金にならないし、未来にも伝わらないから。

◎頼まれなくても唄いたくなる歌
ボクの訳詞作品を、進んで唄ってくれる
歌手はいなかった。
無名な作詞家だから当然のことである。
いつも声楽家に「頼んで」唄ってもらっていた。
「仕事」として頼むのである。
歌い手は「仕事」としてそれを引き受けて
唄ってくれる。「仕事」として唄うのだから、
今振り返ってみると、それはみな
不要不急のことだった。
そして歌い手は「仕事」の中だけでそれを唄い、
そのほかの場所ではその歌を唄うことはない。
その程度の関わり方だと、
その歌い手に何度仕事を頼んでも、
唄い方は変わらなかった。

ボクが頼まなくても、歌い手が唄いたくなる歌を
書かなくてはいけない。と同時に、
頼まなくてもボクの作品を唄いたいという
歌い手にも出遭いたかった。つまり
「生き方」としてボクの作品を唄う歌手である。
その歌手にとって、
頼まれなくても唄いたい歌の中に
やぎりん作品が入るのかどうか。
そこにやぎりん作品が含まれているならば、
それをより良く表現することを
自分で工夫するだろう。表現力が高まれば
より良く伝わる歌になっていくはずだ。

◎歌手との遭遇
生き方としてやぎりん作品を唄う歌手との
最初の遭遇は、大前恵子さんだった。
《広い河の岸辺》は頼んで唄ってもらったが、
それをボクの仕事とは無関係なところでも
唄って広めてくださった最初の人。 

その後、
《ローモンド湖の美しい岸辺》
《鳥の歌》《鶴》など、
すでに著名な作詞家によって
日本語歌詞の楽譜が出版されている歌の
訳詞をボクに依頼してくれた。
著名な作詞家の作品を
超えなくてはならないボクは
かなりプレッシャーを感じたがどの歌も
大前さんの期待以上の使命は果たしたと思う。

二人目は、クミコさん。最初はやはり
《広い河の岸辺》を頼んだが、
氣に入ってださったクミコさんは、
すぐにレパートリーにされた。
「私のいちばん好きな歌。生涯唄い続ける歌」
と言ってくださった。

三人目は、渡辺麻衣さん。
クミコさんによるヒットのことは
全く知らずに、
”The Water Is Wide”を日本語で唄いたくて
ネット上で
《広い河の岸辺》の歌詞に出遭い、
ボクとは全く無関係なところで
それを唄い始めた。
児童合唱団にもそれを指導した。
コロナ騒動をきっかけに《広い河の岸辺》の
動画をアップしたのでボクは
麻衣さんと出遭った。

自分の意思でボクの作品を選び唄う人の歌は、
やはり違う。唄い込むほどに良くなっていく。 
頼まれて「仕事」として唄うか、
頼まれなくても「使命」として唄うかの
違いである。

◎100年後にも歌われる歌を書く
ベートーヴェン自身によるコンサートも
ボクのコンサートも、それ自体は不要不急だと
わかっていただけたと思う。だから、
コンサート会場がガラガラなのは仕方がない。
もう慣れた。
しかしお金にならないこういう演奏会は
これに参加されるお客様の人数から判断すれば
不要不急なのだけれど、
お金にならないのにつづけるのは、
これはボクの使命だからとも言える。
誰にも頼まれることなく、
自主企画制作するコンサート♪
100年後にも歌われる作品を伝えるために
それを現代に問う。
その場に来てくださる方々は、
未来人の心を持った人たちなのである。

スコットランド民謡《ナナカマドの木》
やぎりん訳詞《ふるさとのナナカマド》
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◆ご訪問ありがとうございます。このブログを
訪ねて下さった方々の幸運を祈ります。




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天使と悪魔の絶望名歌集
「世界が終わっても音楽と愛が残る」
歌:大前恵子(★印)
演奏:やぎりんカルテート・リベルタ(1〜16)
 高橋泉(チェロ)
 藤枝貴子(アルパ)
 清永アツヨシ(ギター)
 八木倫明(ケーナとナイ)

演奏:やぎりんトリオ・ケルティカ(17〜18)
 田中麻里(アイリッシュハープ)
 清永アツヨシ(ギター)
 高橋泉(チェロ)【ゲスト】
 八木倫明(ケーナとアイリッシュフルート)

読み語り:河向貴子(5と7)

1. ガブリエルのオーボエ
  (E.モリコーネ作曲)
2. 『銀河鉄道の夜』〜白鳥の停車場
  (藤平慎太郎・作曲)
3. ふるさと銀河に還る★
  (E.モリコーネ作曲/やぎりん作詞)
4. あなたの肩を借りたら
 【You Raise Me Up】★
 (B.グラハム作詞/R.ロヴランド作曲/やぎりん訳詞)
5. [読み語り]
  パラグアイの先住民族グアラニーの伝説
6. チョグイ鳥 (パラグアイ民謡)
7. [読み語り]
 ニュージーランドの先住民族マオリの伝説
8. ポカレカレ・アーナ★
 (NZマオリ民謡/やぎりん日本語詞)
9. 鳥の歌 (カタルーニャ民謡)
10. 聖母の御子★ (カタルーニャ民謡)
11. 愛は花、君はその種子★
  (A.マックブルーム作詞作曲/高畑勲・訳詞)
12. アマポーラ (J.M.ラカーリェ作曲)
13. もう一度愛の言葉を[切れた絃]★
  (ロシア民謡/やぎりん訳詞)
14. 鶴★【ウクライナ名歌】
  (R.ガムザートフ作詞/Y.フレンケリ作曲/やぎりん訳詞)
15. ワルツ 切れた絃 (ロシア民謡)
16. 小さなオルゴール (ウニャ・ラモス作曲)
17. 思い出のサリーガーデン★
  (アイルランド民謡/やぎりん訳詞)
18. 広い河の岸辺★
 (スコットランド、イングランド民謡/やぎりん訳詞)
19. ムーン・ダンス (清永アツヨシ作曲)[ギター+ケーナ]

CD番号
LIBERTAD-CD8686 【¥2800+税】
◎お申し込みは、やぎりんへ
yagirin88@gmail.com
税送料込みで¥3000にいたします。
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◎エッセイ『広い河の岸辺』
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クローバー必然と偶然が時を得て生み出した、
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この歌は今後50年、
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湯川れい子

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《広い河の岸辺》(スコットランド民謡)
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完成した絵本表紙
ドキドキ葉祥明さんの絵本(文:八木倫明)
『ひろいかわのきしべ』(国土社)
発売しました!!


絵本『ひろいかわのきしべ』推薦文の
帯付きは初版のみです。
クミコさんと湯川れい子さんの言葉が
載っています。

ドキドキクミコさん
いま世界にあってほしいと思うものが
この絵本の中にあります。それは
暗い空をてらす、希望の光です。

ドキドキ湯川れい子さん
この歌は、これからの時代に愛され、
その時代を踏み越えて、
未来に継承されていくと信じています。


クミコジャケ写
合唱のスコアもついた
《広い河の岸辺》CD
You Tubeには載っていない合唱バージョンが
このCDには収録されています。
女声合唱団「青い鳥」が素晴らしい演奏をしています。

★《広い河の岸辺》の本質
『小さな死』からの出発。
http://amba.to/1oBdnE3


★地球人が渡るべき河のこと
http://amba.to/1t0E3O6

***********************

「なにも知らない。なにもできない。
なにもない。
なのに、なにかを求めている。
自分の微力は、よく承知している。
とるに足りない才能についても自覚している。

でも、せっかく生まれて来たのだから
感動したい。共鳴したい。
おなじ心のひとに会いたい。

それがせめて
みじかい生命の軌跡の中で
ぼくらが望むものではないか。

ところであなたは・・・。


★『詩とメルヘン』サンリオ刊
1982年4月号編集後記やなせたかし
◎やなさたかしさんの限りない優しさ
*********************
★エーリッヒ・フロムの愛の論理と音楽