

『焼かれた魚』小熊秀雄 作(透土社)
英訳:アーサー・ビナード
(1冊に日本語と英語 そのため横書きの本です)
「絶望のとなりは希望です」
これは
やなせたかしさんの名言。
ボクが編集に参加してこの秋に出版された
『田邊稔の日本フィル物語』は
オーケストラの解散、解雇、分裂という
音楽史上初の絶望的な事件に遭遇した人の
生き方と、それを応援した人々の物語で、
絶望を希望に変える生き方の実話として
今、大変話題になっています。


さて最近、
グラフィックデザイナーのKさんから
おすすめの本として、童話の
『焼かれた魚』(大熊秀雄 作)が送られてきた。
これは以前、
アーサー・ビナードさんのお薦めで
読んだことがあったが、改めて読んでみた。
一匹の秋刀魚(さんま)が
捕らえられて、運ばれて、魚屋の店先に並んで、
誰かに買われ、焼かれて、食卓に並んでもまだ、
「海に帰りたい!」という
強い願いを持ち続ける話。
焼かれた秋刀魚がまだ「生きて」いて
確固たる「思い」を持っているだけでも
類まれなユーモアだと思う。
秋刀魚が海に帰るために、自分を海に
連れて行ってくれうように最初に頼むのは、
焼かれて食卓に並んだときに、
「美味しそうな」自分のそばに寄って来た
飼い猫のミケちゃん。
この「仕事」を猫に頼むのかよ⁉️😆
これもまた並外れたユーモア。
この任務には最も不向きなのが
猫だと誰もが思う。
秋刀魚としては、もう時間がなかった。
まもなく食べられるのだから、
一か八かだったろう。それでも
いちばん無理そうな相手に最初に
頼むとは、秋刀魚の願いの切実さを
物語っているし、これも
作者の絶大なユーモアだと思う。
その後、海にたどり着くまでに
ネズミや犬やカラスに頼むが、ことごとく
裏切られる。
自分の体を、そして両目まで
運ぶ御礼として差し出したが、
約束は果たされなかった。
それでも少しずつ海に近づいた。
最後には蟻の王様に頼み、たくさん蟻の兵隊が
海辺まで運んでくれる。
そのときはもう、
目のない頭と骨だけになっている。
そんな体になっても、
骨と頭だけになった秋刀魚は大いに喜んで
海を泳ぎ回る。しかし
その喜びは長くは続かず、数日で海岸に
打ち上げられ、やがて砂に埋まってしまう。
作者の大熊秀雄は
1901年小樽市まれ、
1940年に40歳で亡くなった。
戦前の詩人、童話作家。さまざまな仕事を転々として、20代前半で
旭川新聞の記者になった頃から、
詩や童話を書き始めた。
23歳になる前にこの作品は発表されていた。
1923(大正12)年のに書かれたとすれば
それは関東大震災の年である。また
宮沢賢治が自費出版の童話集
『注文の多い料理店』や
心象スケッチ集『春と修羅』を
書き上げた年でもある(出版は翌年)。
1931(昭和6)年、30歳のときに満州事変、
1937(昭和12)年、36歳のときに
日中戦争が始まる。
このような戦争に突き進む時代にあって、反戦の声を上げ続けた詩人である。
日本政府がアジア侵略に突き進む時代に、
アジアの民衆への連帯の詩を発表した。
そういう内容のものは
「発禁」にならないとしても
世に出ることはなかった。
小熊秀雄の作風は、
突拍子もないユーモアや世間への風刺や
社会への批判精神にあふれて
それが混じり合った
独特な味わいであると思う。
数少ない童話作品であるこの
『焼かれた魚』は、裏切りと
報われない自己犠牲の連続で、一見
救いようのない悲しい物語に思う人も
いるかもしれない。
あらてめて読んでみると、
どんなに絶望でも決して諦めない生き方を
描いたものだと思う。
それはボクが体験した数えきれない絶望感と覚悟を決めて何度も方針転換したときに訪れる
希望ある出来事とも似ている。
秋刀魚は、運び屋に何度も裏切られるが、
しかし
その度に海に近づいて行った。最後は親切な蟻たちに助けてもらって、
願いを果たす。頭と骨以外の体がなく、
目もなくなったが、懐かしい海に
戻ってくることができた。その後のいのちは長くはなかったが、
どこかの家で食べられるよりは、長生きした
とも言える。
初めから蟻に頼んでいたら決して
海にはたどり着かなかったろう。
何度も裏切られながらも、
最後には、願いを叶える。そのためには
莫大な自己犠牲があったけれども……
食卓で食べられるよりも、
たくさんの体験をして、そのかん
長生きもした。
そこに救いがある。
自己犠牲と目標の実現のバランスを
どう捉えるか……
数えきれない絶望や裏切りを体験したボクが
この物語を読むと、
悲しいだけの話には思えない。
どう生きたいのか?思いを持ち続け、誰かに頼っても一歩前に進み続ける生き方で、
かすかな希望が見えてくる。
そのかんに「自己犠牲」が必要な場合、
喜んで、自分を差し出さなくてはならない。
そのことなしに、
絶望を希望に変えることはできない。
信頼を裏切られながらも、少しずつ
目標に近づいてゆく。
ボクが体験したことと似ている。
ぜひお読みください。
◉地球音楽工房主催コンサート/落語会お申し込み
yagirin88@gmail.com
080-5379-4929(やぎりん)年中夢求♪
公演継続支援金も受付中
1口¥2000でコンサートのライヴCDを返礼にします♪
■口座
★郵便振替口座
0018-2-612135
八木倫明(ヤギリンメイ)
(ゆうちょ銀行〇一九店 当座預金 0612135)
★三菱U F J銀行 高田馬場支店
普通0051411
八木倫明(ヤギリンメイ)
★三井住友銀行 光が丘支店
普通0724543
地球音楽工房 代表 八木倫明
(ちきゅうおんがくこうぼうだいひょうやぎりんめい)

北千住落語会/読み語り会

一橋学園
喫茶Roダん落語会/アイリッシュ読み語り音楽会

11月22日(土)午前11:10開演
横浜市保土ヶ谷区 岩間市民プラザ(定員185)
全席指定¥1500
(045)337ー0011

やぎりんトリオ・ケルティカ
Xmas 読み語りつきアイリッシュコンサート
12月13日(土)
日本橋 アートスペース兜座(かぶとざ)
昼の部2:30開演
夜の部6:30開演
小泉八雲・再話「鳥取の蒲団の話』ほか


2026年冬 自由の風コンサート
お客様感謝特別料金¥2000

セントパトリックデイ・コンサート2026
3月18日(水)としま区民センター
◆ご訪問ありがとうございます。このブログを
訪ねて下さった方々の幸運を祈ります。
大好評♪絶賛出版♪
やぎりん(文)+小澤一雄(絵)
絵本『わくわくオーケストラ楽器物語』
ポトス出版(03)6794-8687 ¥1800(+税)


『世界が終わっても音楽と愛が残る』第2集
(歴史に残る絶望名歌たち)
“想いが届く日。森と風と海と星たちに”
1. 想いの届く日★☆
A.L.ペラ作詞/C.ガルデル作曲/やぎりん訳詞
2. コンドルは飛んで行く★☆
D.A.ロブレス作曲/やぎりん作詞
3. つばめよ☆
N.S.セビージャ作詞作曲/やぎりん訳詞
4. 鳥の歌★ カタルーニャ民謡/やぎりん訳詞
5. 鶴★
R.ガムザートフ作詞/Y.フレンケリ作曲/やぎりん訳詞
6. 広い河の岸辺★◎
スコットランド、イングランド民謡/やぎりん訳詞
7. 思い出のサリーガーデン◎★
アイルランド民謡/やぎりん訳詞
8. 埴生の宿 H.R.ビショップ作曲
9. ふるさとのナナカマド★
C.オリファント作詞作曲
(スコットランド民謡)/やぎりん訳詞
10. ローモンド湖の美しい岸辺☆
A.スポティスウッド作詞作曲
(スコットランド民謡)/やぎりん訳詞
11. あなたの肩を借りたら/
You Raise Me Up★☆◎
B.J.グラハム作詞/R.ラヴランド作曲/やぎりん訳詞
12. 海はふるさと(大海啊故郷)★
王立平 作詞作曲/やぎりん訳詞
13. 空中散歩★
H.ブレイク作詞作曲/やぎりん訳詞
14. ふるさと銀河に還る★
E.モリコーネ作曲/やぎりん作詞
歌:渡辺麻衣★/Tommy☆
演奏:やぎりんカルテート・リベルタ
八木倫明(ケーナ、ナイ)
藤枝貴子(アルパ=パラグアイ・ハープ)
清永アツヨシ(ギターと歌)◎
菅野太雅(チェロ)
演奏:やぎりんトリオ・ケルティカ
八木倫明(アイリッシュ・フルート)
田中麻里(アイリッシュ・ハープ)
清永アツヨシ(ギターと歌)◎
菅野太雅(チェロ)ゲスト
【CD番号】
LIBERTAD-CD88612
本体価格¥2800(+税)
地球音楽工房
◎お申し込みは、やぎりんへ
yagirin88@gmail.com
税送料込みで¥3000にいたします。
*******************
◎エッセイ『広い河の岸辺』
必然と偶然が時を得て生み出した、大いなる奇跡!
この歌は今後50年、
100年と歌い継がれて
日本の歴史に残るでしょう。
湯川れい子
やぎりんBOOK『広い河の岸辺』(主婦と生活社)
¥1000+消費税
やぎりん作詞《コンドルは飛んで行く》
やぎりん訳詞《つばめよ》
吉田桂子編曲
合唱譜が出版されました。
女声三部/混声三部の2種類。
それぞれに、易しい二部合唱の楽譜も
収録されています。
¥1300(+税)全音楽譜出版社

やぎりん監修の合唱譜が発売(全音楽譜出版社)。小川類・編曲
☆女声三部/二部
★☆混声三部/二部
《広い河の岸辺》(スコットランド民謡)
《思い出のサリーガーデン》(アイルランド民謡)
2曲セット。
定価¥1200(+消費税)

葉祥明さんの絵本(文:八木倫明)『ひろいかわのきしべ』(国土社)
発売しました

絵本『ひろいかわのきしべ』推薦文の
帯付きは初版のみです。
クミコさんと湯川れい子さんの言葉が
載っています。
クミコさんいま世界にあってほしいと思うものが
この絵本の中にあります。それは
暗い空をてらす、希望の光です。
湯川れい子さんこの歌は、これからの時代に愛され、
その時代を踏み越えて、
未来に継承されていくと信じています。

合唱のスコアもついた
《広い河の岸辺》CD
You Tubeには載っていない合唱バージョンが
このCDには収録されています。
女声合唱団「青い鳥」が
素晴らしい演奏をしています。
★エーリッヒ・フロムの愛の論理と音楽
























