母の肌は、石膏の彫像のように白く美しく透明になり、琉生に別れを予感させた。
細くなった腕には、血管から注射液が漏れて青紫の痣を作り、訪問する看護師が注射をする場所がないわと嘆いた。
琉生はできるだけ明るい話をした。
「お母さん。先生がね、子供美術協会に送った絵がdermes激光脫毛特賞になったって教えてくれたよ。県下ではぼくだけが特賞だって。」
「まあ、すごい。何を描いたの?」
「空想の街だよ。空中をチューブで移動するんだ。」
「そう……琉生の絵は、色が優しくてお母さんも大好き。琉生の絵の才能はお父さんに似たのね。お母さんと琉生のお父さんは、絵画教室で知り合ったのよ。お父さんが先生だったの。」
「へぇ……?そんな話、初めて聞いた。」
「そうでしょ?初めて話すんだもの。」
母はうふふっと声を上げた。
「琉生にはいつか、お父さんのことを話してあげようと思っていたの。結婚してからは時間が無くて、大好きな絵も描けなくて可哀想だった……」
「何となくだけど、覚えてる。お父さんも絵を描くのが好きだったよね?」
「ええ、すごく。大学の先生が、自分のアトリないかって言ってくれたくらい才能も有ったみたい。でも、好きなことを職業にするのはとても難しかったの。美術の教師は、募集が無くて……」
「ふ~ん……」
「琉生がお腹にいる頃は、お母さんはつわりが酷くて働けなかったから、お父さんが一人で働いたの。琉生が大きくなったら、いつかみんなで一緒にスケッチ旅行に行こうって楽しみにしてたのだけど、忙しくてとうとう叶わなかった……。」
今はない父が、どんなふうに夢を語ったのか琉生には見える気がした。
姿を思いだそうとしてもおぼろげだが、きっと父は自分を膝に乗せて絵を描きながら、時々は尊がするように、背後からぎゅっと、琉生のdermes 價錢存在めるように抱きしめていたと思う。
なぜなら不思議なことに、琉生は尊にそうされるのが、とても好きだから。
抱きしめられると、心地よかった。
「お父さんの描いた絵、見たかったな……この家にはないんでしょう?」
「あるわよ。いつか、お父さんのスケッチブック見せてあげる。内緒で押入れの奥にしまってあるの。それとね、最後に県展に出した絵が特選になったのを、大学病院の先生が買って下さったの。」