1985/12月号の雑誌「月刊明星」にダンプの連載がありましたので引用します。
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男のパンツ、気持ち悪いから・・・
一生結婚しない!
「ねェねェ、なんかいい方法ない?最近、すごい悩んでんだよね。今のままだと、ヒザに負担がかかりすぎちやって、プロレスやるどころか、歩くのさえつらいんだ。
せめて、あと7kgでいいから、やせられないかなあ。
洋服だって、去年のやつが全然入らなくなっちゃってサ」
喫茶店に入り、昼食のエビヒラフをハクハクやりながら、最初にダンプの口から出た言葉がコレ。女ふたり寄れば、ダイエットの話は必ずテーマにのぼるとはいえ・・・。まァ、しばらく会話に耳傾けて!
「毎日、体重計にのってんだけど、ここのところ急上昇! おまけにウチのクルミ(犬)まで肥満児になっちゃってねェ。4kgだったのが、今や6.5kg。ポメラニアンなのにチャウチャウ化しちゃって、それはもうヒサンで歩けないくらいなの、重すぎて・・・。アイツ見てると悲しくなるね、自分の姿、見ているみたいでサ」
それで、やせるために今、何かやってる?
「やせ薬とか買ったんだけど、すぐ飲み忘れちゃうんだ。絶食して胃を小さくしようとも思ったけど、決心した2時間後に、もう肉マン食べてんの」
便は、ちゃんと出てます?
「やっぱ、ウンチ出せばやせるかなァ、出の悪いときはサドラックス飲むんだけど、アレ、けっこういいよ。気持ちいいくらい、大量のウンチが出てくれる」
断わっときますが、エビヒラフを食べながら・・・の会話であります。その後も、ウンチをいかに大量に出すかとゆーことに話題集中。私がベクニスとゆー便出し茶で3kgやせたと言ったら、紙ナフキンに"べくにす"と書き、ポッケにしまった。エビヒラフも、半分弱残した。もちろん、ダイエットのためにがまんして・・・。なんていじらしい奴なんだっ。なんてかわいい奴なんだっ。
私たち(ここでもう、すでに同志の気持ち)、やせたらもっと男の人にモテるようになるかなア。
「男?そんなモノのためにやせてどーすんのさ。自分(ダンプは自分のことを"自分"と言う)がやせたいのは、あくまでも、試合でおもいきり暴れるため。だいたい世の中、どこ見てもヤナ男ばっかじゃない。グジグジしてて、だらしなくて、ルーズで、あっちの女ついたり、こっちの女ついたり、いい加減だし・・・ああヤダ! その点、中村雅俊さんや西田敏行さんあたりだと、人情深そうでいいんだけどねー。なにしろふたり共、結婚してるでしょ。奥さん不幸にしてまで、自分が幸せになろうとは思わないから奪えないし・・・もちろんその前に、自分なんか相手にしてもらえないだろうけど、自分、多分一生結婚しないんじゃないかな。結婚した友だちとかによく話聞くんだけど、やれ姑がウルサイだの、やれ自由な時間がないだの文句ばっか。"じゃあ別れれば"っていつも言ってやるんだけどね。イヤなのにムリに一緒にいることないじやない。自分なんてハナっから男のために毎日掃除したり、食事作ったりなんて考えたことないもんね "アータお帰り何時?夕飯何がいい?"そんなことやってられつか、どう考えたってひとりの方が楽。それに、男の人のパンツが気持ち悪いんだよね。これはもう、昔っからそう。 お父さんの下着と、自分の下着をいっしょに洗われるのがイヤでねてよく洗濯機まわしてるお母さんを怒ったっけ」
決して男嫌いとゆーわけじゃない。恋愛経験も一度ある。中2のとき、サッカー部の男の子と交換日記をした。要するに、今、まわりにいい男がいないというだけのこと。好きな人さえできれば、けっこう尽くすタイフなんじゃないかな。
「確かに、いい奥さんにはなれると思うんだ、自分自分で言うのも何だけど・・・。料理だってひととおり金り金部作れるし、掃除だってガムテープでほこり取る取るくらい一所懸命やってるし・・・。でも、少なくとも今は、男の人を好きになることはありえないねだって頭ン中、フロレスのことしかないんだもん。悪役もイヤじゃないしね。」
人に嫌われる今の仕事がどーしようもなく好き!
「客に"ダンプ死ね!”なんて叫ばれたりすると、もう、身震いするくらい、気持ちよくなっちゃうんだ。感情のおもむくまま、痛めつけたい奴を痛めつけられる。快感だね。ああ、でも、こないだのファン殴打事件は失敗だった。あんまりうるさくつきまとうからバスッと殴ったら鼻折っちゃって。もうひとりの子もチンチンけとばしたら、そーとー痛がってた。警官まで来て大騒ぎになっちゃって、まずったなアレは。自分、ファンとゆー存在が、大嫌いでね、体ベタベタさわってこようもんなら、ぶっ殺したくなる、ファンレターだっていっさい読まないよ中に切手が入ってるかどうか調べて、あとはみんなゴミ箱行き。切手入ってたら返事書くのかって?!? まさか、みんなもらっちゃうんだ"色紙送って下さい" なんて千円札でも入ってたら、もうけもんだしねー。とにかく、ファンだからって甘えるんじゃないよ、気に入らない奴はファンだろーと有名人だろーとぶっとばしてやる」
とても、「乳姉妹見てたらボロボロ泣けてきちゃってエ」と言った人と同人物とは思えないような迫力ある言葉。目の前で、ニコニコしながらジュースをすするこの人が、しゃべってて、とても暖かい気持ちにさせてくれるこの人が、本当に自分のフアンを痛めつけることなんてできるんだろうか? それから2日後、生まれて初めて生で女子フロの試合を見た。場所は大宮スケートセンター外人レスラー相手に暴れまくってるダンフが目の前にいる。石油カンをおもいきり相手の頭にぶつけてる。竹刀で首をしめてる。狂暴だ。憎らしげだ。でも・・・すごくイカしてた。
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色々と当時のことが書かれています。
まずは体重について。この頃はおそらくダンプが一番太っていた時期だと思われます。
1987年くらいになると、引退や芸能界も意識してスリムになっていくのですが、この頃は「体重があることがレスラーとして有利」につながるためにあえて体重を増やしていたと思います。一緒に愛犬にもエサを与えすぎたのか、それまででも巨大だったクルミ(犬)がさらに太ったようです。
続いては結婚観について。一生結婚しないのではないかとこの時点で自身で話されています。
理由は一言で言うと父親からのDVのせいのようです。父親のパンツは見るのも気持ち悪かった、というのはダンプ後年の著書にも書かれていますので、おそらく本当でしょう。ドラマにも父親の暴力は描かれていましたし、ダンプは母親のために父親を殺したかったという話もありました。小学生のころ、「洗剤を洗い流さずに父親に食事を提供していたが、一向に死ぬ気配がなかった」と書かれていますし、男性恐怖症みたいなところもあるのかもしれません。
最後にファン殴打事件について書かれています。
当時のプロレスは地方大会などは距離も近いですし、観客とのケンカになることは日常茶飯事であったと思われます。さらにクラッシュファンによる石投げやドロボー、怒声罵声など頻発していましたので、ちょっと叩いたら鼻が折れたという警察沙汰になったようです。ダンプはほとんど観客に対して暴力は振るっていないと思いますが、たまたまちょっと当たったたら観客が骨を折ったようなことは、けっこうあったのでは・・と容易に想像できます。私的には、当時は観客の行き過ぎた行為は多発していたので、ベタベタと体を触るような変態もいたでしょうし、観客にも責任はあったと思います。もっともダンプにベタベタ触ってくる観客は自殺行為だとは思いますが(^^;
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