幼稚園のころ、私はいじめにあっていました。
同じ社宅に住む同級生4人のうち、
1人が主犯格で、
もう1人の取り巻きと一緒になって、
私を仲間外れにしていました。
大人の前では笑顔で接してくるのに、
その目が届かなくなると態度は一変しました。
私だけを無視したり、急に冷たくなったり──
その落差に、子どもだった私は毎日怯えていました。
正直、当時のことはあまり覚えていません。
思い出そうとすると、
胸の奥がざわざわして、
今でも苦しくなります。
でも確かに、
ずっと仲間外れにされたり、
置き去りにさかれたり、
そんなことが頻繁にあった気がします。
ある日、みんなでテレビゲームをしていたとき、
私はずっと見ているだけでした。
面白くありませんでした。
私もやりたいのでそう言ったけれど、
主犯格の子は「ダメ!」と一言で拒みました。
私が嫌な思いをするのを見て楽しんでいるようでした。
なんでいつも私だけダメなのかは分からないけれど、
ただ我慢するしかありませんでした。
あるとき、ずっと嫌なことが続いたので、
私は母と姉に「○○くんがいじめてくる」
と相談しました。
ほんの少しでも味方になってほしかった。
助けてほしかったんです。
でも返ってきたのは──
「やり返さないからやられるんだよ」
「そうだよ、やり返さないのが悪いんだよ」
という言葉でした。
母と姉は、私のことを責めるように言いました。
それができたら、とっくにやっています。
相手の方が強いんだからやり返せなくて困っているし、
どうしたらいいのか分からないから相談したのに。
こういうことを言うとかえって怒られることになる──
そう思った私は、家族も味方ではないと思い、
嫌なことがあっても黙ることにしました。
その日から、私は
「自分のつらさを外に出してはいけない」
と思うようになったのかもしれません。
どんなに心が苦しくても、誰にも見せない。
見せたら、もっとつらい思いをするだけ。
そうやって、
私はひとりで抱え込むクセを身につけていきました。
小学校に上がっても、
主犯格の子とは同じクラスでした。
置き去りにされたり、
仲間外れにされたりといったことも、
やっぱりあった気がします。
私はある日、別の子を誘って、
先に帰ることにしました。
でも、主犯格と取り巻きが近道して先回りし、
私の家の近くで待ち伏せしていたのです。
そしてその日、私はその子に殴られました。
一緒に帰った子は、「俺が言いだしたんじゃないよ」と、
自分は悪くないという感じで言いました。
それに対して、主犯格の子はこう言いました。
「だからやった」と。
殴られたことを家族に言えたかというと、
やはり言えませんでした。
言うとさらに怒られるかもしれないと思ったからです。
そのときには、
私は心の奥で決めてしまっていたのだと思います。
人に近づくと、こうなる。
助けを求めても、誰も味方になってくれない。
だれも信用できない。
そんな"生き方のルール"が、
知らぬ間に私の中に根づいていきました。
小学校1年生の秋に、私は転校しました。
いじめはそれで終わりました。
でも、その体験から形成された心のルールは、
その後の人生に静かに、
けれど確実に影響を及ぼし続けました。
なんでいつも私だけダメなのかは分からないけれど、
ただ我慢するという出来事も
繰り返し起こることになりました。
それを誰にも言えないで抱え込むこともありました。
人と親しくなるのが怖い。
深く関わろうとすると、どこかでブレーキがかかる。
「どうせまた傷つく」と、心がささやいてくる。
嫌なことがあっても言わない方が良い。
そんな"生きづらさ"の正体は、
あの幼い日々にあったのです。
あのとき、私はよくがんばって生き抜いてきました。
あの体験があったからこそ、
今の私があるのだと思います。
「なんでいつも私だけダメなのかは分からないけれど、
ただ我慢する」──
そんな幼い私の心の声も、
今なら優しく受け止めてあげられます。
心理学を学んでいく中で、
あの頃の私に何が起こっていたのか、
その理由と仕組み、
そして解きほぐす方法が見えてきました。
子どもの頃の私が身につけた"心の防御システム"は、
たしかにあのときは、精一杯の生き抜く術でした。
でも、もう私はあの頃とは違う。
あのルールに従わなくても、
生きていける今がある。
だから今は、自分にそっとこう伝えています。
「もう、ひとりで我慢しなくてもいいんだよ」
「助けを求めていいし、つらいって言っていいんだよ」と。
これまで抱え込んできた"思い込み"の扉を、
少しずつ開いていく。
それが、私にとっての「性格を変える」ということでした。
ほんの少しだけ、今までより自由に。
ほんの少しだけ、今までより軽やかに。
そんなふうに、
自分の人生を選び直していけたらと思っています。
私自身、
「どうせ誰も守ってくれない」と思い込んで、
心を閉ざして生きてきた時期がありました。
でも、心理セラピーに出会って、
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