映画「仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼」 | 牧歌組合~45歳からの海外ミュージシャン生活:世界ツアーに向けて~

映画「仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼」


オリジナルサウンドトラック 仮面ライダー響鬼 映画音劇盤 (仮)


カブキ


トウキ


ハバタキ


ニシキ


キラメキ



白倉 伸一郎
ヒーローと正義

 9月3日に公開された映画「仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼」を観て来た。


 念のため、最初に感想を。非常に面白い映画だった。面白い映画だった…。


 これを書くだけでも何となく疲れる。次、何から書き始めよう。ブログ文章を書いてきて、これだけ悩むのも久しぶりだ。何故かと言えば、御存知のかたも多いであろう、先週からの仮面ライダー響鬼のスタッフ異動の話である。こちらは所詮、1ファンである。この異動が公式発表されたものか否かもよくわかっていない。


 先週、仮面ライダー響鬼の脚本家のクレジットが変わった。僕は、その脚本家(=井上敏樹氏)が純粋に「モノカキ」の才能に優れた人であることを知っており、過去からファンであったので、「これまで構築された作品の物語世界を語る上での人材補強」と解釈して、単純に喜んだ(参照 )。プロデューサーのクレジットに、響鬼の作品世界を今まで構築してきた高寺氏の名前がなかった(?)ことは気付かなかった。毎週閲覧している、響鬼ファンの方々のブログを読んでから、何かが起こったことに気がついた。だが、その時点では交替した脚本家が何故そこまで罵られているのか、意味がわからなかった。そのまま一週間、映画を観に行くまで、敢えて「響鬼」関連の情報には触れないようにしていた。


 今日、家族と映画を観て来た。わかった。映画のプロデューサーは高寺氏でなく、アギト、龍騎、555を担当した白倉氏。脚本も井上氏。これは知っていた。だが、描かれた映像、TV版で高寺氏が展開してきた世界観を継承したものではなかった。乱暴に言えば、白倉&井上氏の独自の解釈に基づく「響鬼」であり、熱心な高寺氏版「響鬼」の世界を愛してきたものにとっては、挑発、挑戦、全否定とも捉えられかねない内容だった。敢えてネタバレはしない。だが、ここまで、こういった特撮作品で冒険が行われることは、近年異例なことであると思う。


 そして異例のプロデューサー&脚本家途中交代説。重ねて言うが、公式発表の如何は知らない。女房と幾つかのたとえ話を出し合った。失礼があったらお詫びしたい。だが、この人事異動はある意味、以下のようにショッキングなものだと思う。


・富野ガンダムと思ってみていたら、途中で監督が西崎義展氏に変わった。

・ビートルズと思って聴いていたら、いきなりミック・ジャガーが歌いだした。

・アガサ・クリスティーを読んでいたら、いきなり明智小五郎が登場した。


 まずこういうことは他の文化ではありえない。なぜなら、そこには「作家主義」の伝統が息づいているからだ。「作家主義」が守られているからだ。


 ビフォー&アフター、どっちが良い or 悪いじゃない。そういう例ではない。この人事異動が語っていることは、創造から約半世紀の歴史を経た今もなお、いまだ特撮番組においては「作家主義」という伝統が根付いていない現実を示しているのだと思う。


 作品はプロデューサーのものでも、監督のものでも、脚本家のものでもなく、スポンサーの玩具製造販売会社と、テレビ局のものになってしまっている。悲しいけれど、そういった現実しか、今回の事件から見えてこない。だが、視聴者の我々の目の前にインタフェースとして存在するのは、ヴィジュアル→役者→台詞→脚本家→監督→プロデューサーであり、背後の資本なんて気にすることがない。背後の資本は、視聴者の「高寺作品主義」に対する敬意を尊重していない。その背後の力が、「作家主義」「作品主義」に対する冒涜的行為を取ったのだ、と自分なりに解釈している。だが、結局作品を愛する心というものは、「作家主義」から発生するものだ。今回のような異例な異動は、「作家主義」そのものを自己否定し、平成仮面ライダーが発展させてきた「世代を超えて楽しめる仮面ライダー」という財産に対して、資本自らが泥を浴びせ掛けたような行為であることを、僕らが言うよりも、資本が自ら気付かない限り、今後特撮映像の発展はないのではないか。暗い気分になる。


 さて。以上を踏まえたうえで、の白倉&井上作品「仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼」の感想。基本的には、彼らがインタビューで述べていたり、「アギト」「555」で語ってきたテーマ、そして白倉氏が「ヒーローと正義」で語っているテーマ、


  人間社会から排除された異型のヒーローとしての仮面ライダーの葛藤


を、石ノ森作品の根幹と捉え、響鬼の初期設定である日本民俗学=「オニ」という概念との融合を図ろうとした意欲作。面白い作品であった。


   Em7
   o   nisa  n ko chira-
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B:-5---5-3---2-5---3-5-----|
G:-4---4-2---2-4---2-4-----|
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E:-0---0-0---0-0---0-0---0-|
   te- nona  ruho  u he-
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 「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」。 非農耕民族として差別され、ふつうの人々から忌み嫌われた鬼。今回の騒動は、プロデューサー、脚本家たちが、同じような扱いを受けているのでは、と寂しい気持ちになる。今朝放映分感想は、もう少しよくよく考えてから書きます。


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