タバコ産業と水力発電で巨万の富を築いたジェームズ・ブキャナン・デュークの一人娘ドリス・デュークは、12歳で遺産を相続したことから「世界一裕福な少女」と呼ばれた。当然、好奇の目にさらされる。世間の煩わしさを避けるように海外に出かけ、その財産で美術品やワインを収集し、慈善活動に力を注ぐ。更に声楽を学び、ジャズ・ピアノを嗜む。
恋愛遍歴も華やかで結婚は二度だが、恋人は現代サーフィンの父と呼ばれるカハナモク公爵をはじめ、映画「ロビンフッドの冒険」の俳優エロール・フリン、イギリスのエース飛行士で政治家のアレック・カニンガム・リード、戦車軍団を率いたパットン将軍、「初秋」でピュリッツァー賞を受賞した作家ルイス・ブロムフィールド。女たらし列伝に並ぶ面々だ。そして、テディ・エドワーズとの共演やジューン・クリスティの名盤「Something Cool」で軽妙なピアノを弾いているジョー・カストロもその一人だ。
鍵盤を叩く度、金が出てくるので、彼女のいくつもある豪邸の一つビヴァリー・ヒルズの邸宅にスタジオを作って夜な夜なジャムセッションを開き、最新の機材で録音した。それらの音源をリリースしようと「Clover」というレーベルを設立したものの1枚出しただけだ。おそらく愛人関係のもつれだろう。その50年代後半の貴重な音源が日の目を見たのは10年前の2016年だった。チコ・ハミルトンをはじめコンテ・カンドリ等々西海岸のスターたちが並んでいる。なかにはノーマン・グランツも思いつかないテディ・ウィルソンとスタン・ゲッツの組み合わせもあり今聴いてもゾクゾクする。
ドリスは社交界の名士だけあり交遊も広くジャクリーン・ケネディ・オナシスやアンディ・ウォーホル、特に親交が深かったのは元フィリピンのファーストレディ、イメルダ・マルコスで、彼女が1988年に恐喝で逮捕された時は500万ドルの保釈金を支払ったという。純資産の評価は53億ドル・・・日本円に換算すると・・・やめておこう、庶民が手に出来ない金額だから。
