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刑事弁護人の憂鬱

日々負われる弁護士業務の備忘録、独自の見解、裁判外の弁護活動の実情、つぶやきエトセトラ

1年以上ぶりのブログである。多忙すぎて、書く暇が全くなかった。

 

刑事系のこまい話は、しらべるのがめんどくさく、目の前の仕事処理に追われる毎日である。

そこで、若干どうでもよいITネタをつらつらと書く。

 

さて、仕事用で使っていたガラケーをこの春、アンドロイドスマホ(Googleピクセル3)に切り替えた。

すでにプライベート兼、情報端末専用のiPhoneは3Gから使っていたので(現在はiPhoneX)、スマホデビューではないのであるが、アンドロイドは初めてでアンドロイドOS9(現在はOS10にアップデート)は使用感は新鮮な部分(細かい設定ができる)とiPhoneのiOSと操作性に遜色ないことに結構満足している。

最近のiOS13ないし13.1のアップデートでダークモードが導入されたが、すでにアンドロイド10でダークモードが導入されているので、操作性はやはり変わらない感じである。また、iOS13からiPhoneでもマウスが使えるようになったが、これはようやくアンドロイドに追いついた感じである。

ちなみに音声入力は、若干iOSのほうがアンドロイドより優れているが、SiriとGoogleアシスタントを比較すると、後者の方が優れている。iOSでもGoogleアシスタントを使ったほうがよいと思う。

そうそう、両方のOSで使えるが、Googleグラスの画像検索(文字スキャニングもできる)は優れものである。こういうのソフトウェア、AI系はGoogleがよいですね。ナイトモードカメラもiPhone11でようやくおいついているし。

 

また、Google系だとGoogleクロムキャスト(HDMI接続、ワイヤレスストリーミングデバイス)もスマホで動画配信(Netflix、アマゾンプライム、YouTubeなど)をデジタルテレビの大画面でワイヤレスストリーミングで視聴するデバイスとしておすすめ。

アップルテレビと違って、アンドロイドのみらず、iPhoneでも接続できるし、パソコンのクロームブラウザからパソコンのミラーリング可能となる(つまり簡単にHDMI対応ならばワイヤレスディスプレイが利用可能となる。)。

4k対応は1万円近くするが、非対応のものならば、5000円前後で購入できるコスパのよさ。アップルテレビも新しいのがでると思うが、値段は高いでしょうね。現在もっている古いアップルテレビは第3世代でたしか9000円前後でポイントカードで購入したので実質ただであったが、最近、データが重いのかダウンしがちである。さすがに2万円以上出して新しいのを購入する気がしない。iPhone及びiPadのミラーリングが簡単にできるのは魅力的であるが。

 

ちなみにアップルウォッチは機能性とコスパからすると手を出しにくい。画面は小さいし(老眼にはきつい)、健康管理で利用するのならば、もっと安いデバイスも多い。この値段を出すならば、iPadの新しいのがかえる。結構驚くのが、新しいアップルウォッチではじめて常時点灯ができて普通の腕時計と同じように使えるという点である。しかし、充電が必要なのは従前と同じなので、充電不要な普通の腕時計よりも、残念なデバイスとなのはいたしかたない。まだまだ発展途上のデバイスであり、アップル信者のお布施の対象品という位置なのかもしれない(メジャー受けしなくてもよい)。

 

電子書籍リーダーとして、春先、初めてKindleを購入した。amazonは安売りセールをときどきやるので、型落ちのものを4900円くらいで購入。バックライトなくても小説を読む分には何ら問題なく、パソコンアプリでは使えないXRay機能が面白い。作中の登場人物の登場箇所、キーワード辞書検索、イラスト等画像一覧が可能というすぐれもの。バッテリーも長持ちするし、デジタルデバイスとしては、コスパよし、amazonKindleの各種サービスと連携するとなかなか良いです。

ただし、漫画や雑誌は、iPadやパソコンの大画面のほうがよいです。ちなみに初代iPadでもKindleアプリは現在も使用可能で、書籍をダウンロードして読めます。アプリが進化していないことということもあるが、バージョンアップで使用できなくなる電子書籍アプリもある中で良心的です。ちなみに判例百選のようなものは、一覧性のある画像固定でiPadみたほうが見やすい。通常のイーインクの電子書籍では、小説を読んでいるのと同じで文字情報が多すぎて、よむのがかえって苦痛である。

ただし、iPadで、法律の基本書をよむのはおすすめできない。こういうのは普通の本があっとうてきに使いやすいので。

 

次回は、デジタルデバイスの法律事務での活用を書く予定。

 

 

 

 

 

刑事手続きの基礎「別件逮捕勾留と余罪取り調べの限界」その5


 

4 別件逮捕勾留と余罪取り調べの限界の関係

 

   ア 従来、両者は手続きとしては別個であるから、まず、①別件逮捕勾留の適法性を吟味し、適法な場合は、②余罪取り調べの限界を吟味するという形式論理を展開した。それ故、別件基準説【捜査実務、下級審の一部】では、逮捕勾留の適法性は、容易に認められるので、余罪取り調べの限界の問題の検討にウェートがおかれた。

 

   イ しかし、既述したとおり、取り調べの態様に着目して、別件逮捕勾留の適法性を吟味するアプローチが有力化しつつあり【実体喪失説ないし令状主義潜脱説】、実質的全体的考察による違法性判断が注目される。そこでは、事前の司法的抑制だけでなく、事後の取り調べをどう規制するのかの多元的視点が必要である。この点、新しい別件基準説は、必要性判断の資料に本件取り調べを考慮するが、それ自体、事件単位の原則を逸脱しているのであり(川出・別件逮捕勾留の研究223頁参照)、また、どうして別件の罪証隠滅逃亡のおそれ防止という必要性に関係するのか明瞭でない。

 

    よって、本件基準説+令状主義潜脱説の考えを基本として、具体的状況に応じて違法性を判断すべきと考える。なお、捜査実務との整合性から取り調べ受忍義務肯定説+本件基準説+令状主義潜脱説と解することも理論上可能ではあるが、その場合でも、出頭要請、滞留要請(取り調べ受忍義務の要請)は説得の域を超えることはできず、被疑者が拒否の意思を明白にする場合は、取り調べ受忍義務は解除されるという解釈を付加すべきであろう(川出敏裕・判例講座刑事訴訟法 捜査・証拠篇 42頁以下の「出頭滞留義務と取り調べ受忍義務区別説」の解釈の応用)。

 

 

 

ウ 各手続きの段階での本件の取り調べのための身柄拘束であることが明白になった場合に、以下の対応が考えられる。

 

(1)逮捕状・勾留状請求段階 :裁判官は、逮捕状・勾留状請求を却下すべきである。

 

(2)勾留決定に対する準抗告段階:違法な別件勾留であることが判明した場合、裁判所は勾留を取り消すべきである。

 

(3)違法な別件逮捕勾留後の本件の逮捕状・勾留状請求:不当な蒸し返しであり、裁判官は請求を却下すべきである。

 

(4)本件の勾留決定に対する準抗告段階:本件勾留は不当な蒸し返しであるから、裁判所は勾留を取り消すべきである。

 

(5)起訴後、公判段階:違法な別件逮捕勾留中での取り調べにより採取された自白は、違法収集証拠として、裁判所は、証拠能力を否定すべきである(証拠採用しない)。

 

 

 

 実際、裁判で問題となるのは、(5)の段階であり、そのため、事後的に別件逮捕勾留+余罪取り調べの違法性が、自白排除の検討の前提として争われることになる。

 

 

 

5 近時の下級審の展開

(以下、次回に続く)


 

 

 

  

 
 

刑事手続きの基礎「別件逮捕勾留と余罪取り調べの限界」その4 



 余罪取り調べの限界、つまり限定する見解として、事件単位説と令状主義潜脱説がある。

 

 

 

ア そもそも、事件単位の原則とは、逮捕勾留の基礎は同一の事件であり、司法審査は当該同一事件を対象とするから、Aという事件の逮捕勾留状で、Bという事件の逮捕勾留は許されない。B事件の司法審査つまり逮捕勾留の理由と必要性が判断されていないからである。したがって、司法審査を経たA事件の逮捕勾留後、さらに司法審査を経たB事件の逮捕勾留は可能である。反面、A事件の逮捕勾留後、さらにA事件で逮捕勾留すること【同一事件の再逮捕・再勾留】は許されない。これを逮捕勾留の一回性の原則ないし再逮捕再勾留の禁止の原則という。

 

 

 

イ この事件単位の原則を逮捕勾留中の取り調べに適用すると【取り調べ受忍義務肯定説と整合的である。それゆえ、否定説からは逮捕勾留状が取り調べ令状となり、罪証隠滅・逃亡防止を目的とする逮捕勾留の趣旨に反すると批判される。】、逮捕勾留の基礎となった同一事件の取り調べしかできないことになる。しかし、事件単位説は、例外的に逮捕勾留の基礎と同一でない事件について、密接関連している場合【例えば窃盗など同種余罪など】は取り調べできるという。この例外の許容性の根拠は、あまり明快でない。密接関連している事件は、実質は同一の事件といえるのであれば、事件単位の原則の一場面でしかない。つまり例外ではなくなる。また、密接関連していなくても、純粋に任意の余罪取り調べが禁止される法的根拠は見いだしがたい。密接関連している場合は、取り調べ受忍義務が及び、密接関連した事件の再逮捕再勾留が禁止されるとすれば、一貫性があることになるが、令状審査が及ばない密接関連事実に取り調べ受忍義務を認めるのは、疑問である。そもそも事件単位説は、例外の理論的明確性を欠くと同時に具体的な許容ないし禁止の範囲がせますぎるのではないであろうか。

 

 

 

ウ これに対し、令状主義潜脱説とは、①本罪と余罪の関係、②罪質・軽重の相違、③余罪の嫌疑の程度、④その取り調べの態様などを総合判断し、余罪取り調べが具体的状況のもとで令状主義を潜脱する段階に至っているときに余罪取り調べが禁止される見解をいう【田宮裕・刑事訴訟法新版136頁参照】。この見解は、本罪の逮捕勾留が、専ら余罪の取り調べに利用され、実質余罪の逮捕勾留した場合と同じ状況にいたっている場合は、余罪の令状審査がなされていない状態での逮捕勾留がなされたのと同様であり、これを利用した取り調べは、令状主義を潜脱した身柄拘束下での違法な取り調べとして禁止されるとするものである。総合判断であるから、密接関連している事件で許容されることもあれば【逮捕勾留後、被疑者の自白により発覚した余罪など】、禁止されることもある【逮捕勾留令状発付時点から余罪の嫌疑はあったが、証拠がととなわないため、自白獲得のため、専ら本罪の身柄拘束を利用する場合など】。この見解の着眼点は、当該逮捕勾留は、余罪取り調べにどこまで利用できるかをケースバイケースで考えるものである。そして、この見解が違法な別件逮捕勾留中の本件取り調べの禁止を主張する限り、別件逮捕勾留と余罪取り調べの限界は、一連一体の手続きとして把握し、逮捕勾留を取り調べに利用できる許容範囲を実質的に画していくものといえる。