刑事政策の基礎「自由刑・施設内処遇・仮釈放と執行猶予」その8 | 刑事弁護人の憂鬱

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(イ)その他の措置…懲罰とは別に刑務事故(逃走、自殺など)の防止、規律違反の鎮圧のため以下の実力措置を新法は定めている。受刑者の心身の負担が大きく※、その人権に対する配慮から、手続き要件は厳格である。

 

  身体検査(法75条1項)

  受刑者の隔離(法76条 隔離期間は原則として3ヶ月)

  制止・拘束等(法77条)

  拘束具の使用(法78条 捕縛・手錠・拘束衣がある。)

  保護室への収容(法79条 収容期間は原則72時間内)

  武器の携帯・使用(法80条)

  収容のための連れ戻し(法81条)

  災害時の応急用務(法82条)

  災害時の避難・解放(法83条)

 

 受刑者の身体の自由に対する拘束

  受刑者が暴れたり、大声を出したりなど規律及び秩序を害する場合、受刑者の身体の自由や行動の自由を物理的に拘束せざるをえない場合がある。新法は、①他の受刑者と隔離して終日単独室で処遇する受刑者の隔離、②現に行われまたは行われようとする規律及び秩序を害する行為を制止し、拘束する措置、③捕縛、手錠、拘束衣による身体拘束を定めている。特に直接的な実力による身体拘束である③の拘束衣の場合、補充性の要件や使用時間など厳格な要件が定められている(法78条2項3項)。さらに、著しい興奮状態や精神的に不安定な状態にあり、自殺・自傷のおそれなど規律及び秩序を著しく害する行為に及んだ受刑者に対して、④保護室への収容が予定されている。保護室(旧監獄法における「保護房」)は、自殺・自傷を防止するため危険物を取り除き、騒音防止など特別の設備と構造を備えた単独室である。保護室のへの収容は、受刑者の強度の圧迫感、心身に対する負担が大きいことから、収容要件と手続きが厳格に定められている(法79条)。