刑事政策の基礎「自由刑・施設内処遇・仮釈放と執行猶予」その7 | 刑事弁護人の憂鬱

刑事弁護人の憂鬱

日々負われる弁護士業務の備忘録、独自の見解、裁判外の弁護活動の実情、つぶやきエトセトラ

(2)規律及び秩序維持のための措置

      刑事施設内では、矯正処遇のための適切な環境維持、集団生活上の規律が当然必要とされ、そのための制限の一種として、前述した外部交通等の制限がある。さらに積極的な規律及び秩序維持のための措置として、懲罰、身体検査、隔離、制止、保護室のへの収容などを新法は定めている。これらの措置は、受刑者の自由を物理的に制限するものであるが、いきすぎると受刑者の尊厳や自律性を損なうだけでなく、生命身体に対する危険を伴うことになる※。そこで、新法は、規律及び秩序に関する一般規定を置いている(法73条)。

 

※名古屋刑務所受刑者死傷事件

  2001年(平成13年)12月に刑務官が受刑者1名の尻に向け、散水栓を水利とした消防用ホースで放水したことによって傷害を負わせ死亡させたとする事件が発生。

2002年(平成14年)5月に腹部を革手錠で締め付けたことが原因とする受刑者死亡事件が発生。同年9月には、受刑者が刑務官から革手錠を施用されたことが原因とする負傷を負い、外部の病院に移送された事件が発生。現職刑務官が特別公務員暴行陵虐罪で起訴された。

20025月および9月の事件では、被告人側弁護士は「転倒によって受刑者が死亡した」と主張していた。2007年(平成19年)330日に、名古屋地方裁判所は「懲らしめ目的で革手錠を使用した」と認定し、刑務官4名に有罪判決を下した。刑務官4人は判決を不服として、45日までに名古屋高等裁判所に控訴した。2010年(平成22年)226日、名古屋高等裁判所は、刑務官4名の控訴を棄却した(ウィキペディアより)。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8D%E5%8F%A4%E5%B1%8B%E5%88%91%E5%8B%99%E6%89%80#.E5.90.8D.E5.8F.A4.E5.B1.8B.E5.88.91.E5.8B.99.E6.89.80.E4.BA.8B.E4.BB.B6

 

         かかる事件が、監獄法全面改正の機運となった(川出=金・前掲155頁参照)。なお、日本の刑事施設における保安事故は少ないが、2005年から2009年の5年間で最も多い保安事故は受刑者の自殺(94件)である(日本の刑事施設20頁)。

 

(ア)懲罰

新法が定める懲罰は6種類ある(法151条)。

  戒告

  禁錮・拘留受刑者の作業停止(10日以内)

  自弁物品の一部または全部の使用等の停止(15日以内)

  書籍等の一部または全部の閲覧の停止(30日以内)

  報奨金計算額の削減(3分の1)

  閉居(30日以内 ただし、成人について、とくに情状が重い場合は60日以内)※

※閉居罰

 閉居とは、他者と隔離し、原則として昼夜居室内において起居させ、反省を促すために謹慎させるものであり、閉居と同時に自弁物品の使用、宗教上の儀式行事の参加、書籍の閲覧、面会、信書の発受などが停止される(法152条)。

 

懲罰の要件は、3つの事由(類型)がある(法150条1項)。

 

ア 遵守事項(法74条)違反

イ 外部通勤作業等における特別遵守事項違反

ウ 生活行動に関する刑事施設職員による指示に対する違反

 

      いかなる懲罰を科すかどうかにあたっては、年齢、心身状態、反則行為の性質、軽重、反省の態度、改善更生への影響等の事情を考慮すべきとされる(法150条2項)。もちろん、懲罰は、反則行為を抑制するのに必要な限度を超えてはならない(同条3項)。

      また、反則行為の調査、受刑者の弁解の機会の保障等、懲罰執行等の手続きは法定されている(法154条、155条、156条)。

 

刑事収容施設法

 (刑事施設の規律及び秩序)

第73条 第1項「刑事施設の規律及び秩序は、適正に維持されなければならない。」

第2項 「前項の目的を達成するため執る措置は、被収容者の収容を確保し、並びにその処遇のための適切な環境及びその安全かつ平穏な共同生活を維持するため必要な限度を超えてはならない。」

 

(遵守事項等)

第74条 第1項 「刑事施設の長は、被収容者が遵守すべき事項(以下この章において「遵守事項」という。)を定める。」

第2項 「遵守事項は、被収容者としての地位に応じ、次に掲げる事項を具体的に定めるものとする。

一  犯罪行為をしてはならないこと。

二  他人に対し、粗野若しくは乱暴な言動をし、又は迷惑を及ぼす行為をしてはならないこと。

三  自身を傷つける行為をしてはならないこと。

四  刑事施設の職員の職務の執行を妨げる行為をしてはならないこと。

五  自己又は他の被収容者の収容の確保を妨げるおそれのある行為をしてはならないこと。

六  刑事施設の安全を害するおそれのある行為をしてはならないこと。

七  刑事施設内の衛生又は風紀を害する行為をしてはならないこと。

八  金品について、不正な使用、所持、授受その他の行為をしてはならないこと。

九  正当な理由なく、第九十二条若しくは第九十三条に規定する作業を怠り、又は第八十五条第一項各号、第百三条若しくは第百四条に規定する指導を拒んではならないこと。

十  前各号に掲げるもののほか、刑事施設の規律及び秩序を維持するため必要な事項

十一  前各号に掲げる事項について定めた遵守事項又は第九十六条第四項(第百六条第二項において準用する場合を含む。)に規定する特別遵守事項に違反する行為を企て、あおり、唆し、又は援助してはならないこと。」

第3項 「前二項のほか、刑事施設の長又はその指定する職員は、刑事施設の規律及び秩序を維持するため必要がある場合には、被収容者に対し、その生活及び行動について指示することができる。」

 

(懲罰の要件等)

第150条  第1項「刑事施設の長は、被収容者が、遵守事項若しくは第九十六条第四項(第百六条第二項において準用する場合を含む。)に規定する特別遵守事項を遵守せず、又は第七十四条第三項の規定に基づき刑事施設の職員が行った指示に従わなかった場合には、その被収容者に懲罰を科することができる。」

第2項 「懲罰を科するに当たっては、懲罰を科せられるべき行為(以下この節において「反則行為」という。)をした被収容者の年齢、心身の状態及び行状、反則行為の性質、軽重、動機及び刑事施設の運営に及ぼした影響、反則行為後におけるその被収容者の態度、受刑者にあっては懲罰がその者の改善更生に及ぼす影響その他の事情を考慮しなければならない。」

第3項 「懲罰は、反則行為を抑制するのに必要な限度を超えてはならない。」