判例評釈 「ビラ配りが風営法における「客引き」に当たらないとされた事例」その2 | 刑事弁護人の憂鬱

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判例評釈 「ビラ配りが風営法における「客引き」に当たらないとされた事例」その2




「4 前提事実

関係各証拠から認められる事実は以下のとおりである。

(1) 被告人のBでの職務等

被告人は,平成217月初旬ころから,Bの従業員として稼働していた。被告人は,稼働当初,キッチンやホールの担当であったが,同年12月ころから,B店舗周辺の路上で,本件ビラの配布をすることがあった。

(2) 本件ビラについて

本件ビラには「クラブB」「S E T 料金(2名様以上) 20:00~21:00 ¥2,500 21:00~last 3,500」「初回に限りこのカードをお持ちになられたお客様には,吉四六・・・・のいずれか1本サービスさせて頂きます。」などと記載されている。

Bの従業員による本件ビラの配布に関して,道路使用許可申請がなされ,一定の条件のもとに道路使用が許可されていたが,本件公訴事実記載の日時,場所における本件ビラの配布の許可はなされていない。


(3) Cらが本件に関わった経緯等

ア Cは,元警察官であるが,本件の約12週間前ころ,警察官から電話で,客引き行為をしている者の取り締まりをするため,客引きをしている人に向かつて歩いて行って,声を掛けられたら,その状況等を話して欲しいなどと捜査の協力を依頼された。Dは,Cと小学校時代からの友人であるが,本件の約1週間前ころ,警察官から電話があり,Cと同様の依頼をされた。

イ CとDは,本件当日,一緒に本厚木駅に赴き,警察官と合流した。CとDは,警察官が乗ってきた車両に乗り,車内で警察官から「客引きをしている人はあの人だよ。」と被告人と他1名を示された。また,CとDは,警察官から,捜査協力の報酬などとして,それぞれ2万ないし3万円を受け取った。CとDは,警察官から,ここから歩き始めて欲しいと指示された場所で車から降り,その後,警察官から電言舌で指示され,神奈川県厚木市中町2丁目35号先路上(以下「本件路上」という。)に向かつて歩き始めた。


(4) 本件に至る経緯等

ア 被告人は,本件当日,クラブBに出勤し,同日午後815(以下「本件

日時という。)ころ,本件ビラを右手に所持し,インカムを付けた状態で,

本件路上に立っていた。

イ 本件路上付近は,銀行支店,その北東側に車道を経て書店があり,銀行支店前と書店前(いずれも南西側)には幅4メートルの歩道があり,銀行支店前の歩道の間の車道には,約6メートルの長さの横断歩道がある。


(5) 警察官は,本件日時ころ,神奈川県厚木市中町2丁目222号先路上から,本件路上における被告人らの動静を,デジタルビデオカメラで撮影しているが,その動画画像(甲第12号証)及び静止画像(甲第13号証)からは,以下の状況が認められる。

ア 被告人は,本件日時ころ,銀行支店側の横断歩道端の角辺りに立ち,銀行支店側に体を向けたり,書店側に体を向けたりしていた。

イ C(車道側)とD(歩道側)は,書店前の歩道から銀行支店方面(本厚木駅方面)に向かつて歩いてきて,横断歩道を渡り始めたところ,書店側の歩道に顔を向けていた被告人は,右腕を肩より下くらいの高さまで横に上げた。

ウ C及びDは,被告人の右斜め前方辺りで立ち止まり,向かい合う状態がしばらく続き,その間,被告人は,数歩後ずさったり,両手を少し広げる動作をしたりした後,Dが,一人で本厚木駅方面に歩き去った。

エ Cと被告人は,その場でしばらく向かい合っている状態が続き,Cは,車道を横断し,その少し後ろを被告人も車道を横断した。」