刑事手続きの基礎…起訴前手続き・捜査について その1 | 刑事弁護人の憂鬱

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刑事手続きの基礎…起訴前手続き・捜査について その1


 検察の証拠改ざん事件で特捜部の捜査の問題性が話題になっているが、前提として、検察捜査及び捜査手続き全般について基礎的知識がなければ、問題点の把握がしづらい。
 そこで、起訴前手続き・捜査について概説してみたい。


1 捜査とは、捜査機関が犯罪が発生したと考えるときに、公訴の提起・遂行のため、犯人を発見・保全し、証拠を収集・確保する行為をいう(田宮裕・刑事訴訟法新版40頁)。ここでいう捜査機関とは、第一次的には警察をいう。警察官は、「司法警察職員」であり、「一般司法警察職員」である(刑訴法189条1項。海上保安官など特別な職務についている司法警察職員を「特別司法警察職員」という。190条)。検察官・検察事務官も捜査機関であるが、二次的な捜査機関とよばれる。すなわち、警察が、犯罪事件を捜査し、その結果を検察官に事件送致する(全件送致主義)。そして、検察官は、送致された事件が起訴するか、起訴しないか(これには、そもそも証拠不十分で起訴できない=公判維持できないもの、起訴すなわち有罪立証可能であるが、諸事情から起訴が不当とされる起訴猶予などの分類がある)の判断を行う。検察官は警察の捜査により収集された証拠を吟味し、足りないものがあれば、指示し、補充の取り調べ等を行う。身柄事件については、検察官は勾留請求・延長請求・取消等の権限をもつ。身柄事件においては、最初の10日勾留の後半で、一度延長するか決めるため、検事調べを行う。これを中間調べという。検察官の取り調べ調書は、信用性が高いものと評価され、いわゆる伝聞例外証拠として緩やかに許容されるている(321条1項2号。この問題性は次回に論じる)。このように通常の捜査では、検察官が警察の捜査に対する監督、補充的立場にあり、違法不当な捜査に対する抑制という機能を果たしている。ところが、検察官自体が、警察とは独自に最初から捜査する特捜部の検察捜査では、かかる補充、チェック的な機能が十分に果たせない。


2 捜査には、その態様から任意捜査・強制捜査に分類できる。後者は、法律上特別の規定がなければできず、法定の厳格な要件及び裁判所の令状発付が原則とされる(強制処分法定主義・令状主義)。強制処分の具体例として、逮捕、勾留、捜索・押収などがある。
  被疑者から供述を得る捜査を取り調べ(狭義)という。取調は任意が原則であるが(198条1項)、逮捕・勾留されている場合は、取調室への出頭、滞留義務(取り調べ受忍義務)があり、強制処分の一種と理解するのが捜査実務である(強制処分説。ただし、この見解でも、自白の強要が許される訳ではない。被疑者の黙秘権を奪う危険のある取調は、認められないのであり、不任意自白排除の原則からしても、強制処分と理解すること自体問題であり、学説は、あくまでも任意処分と解すべきとする。田宮・前掲131頁)。


3 捜査実務の現実からすれば、被疑者の取り調べが重要視され、自白の獲得、その裏付け等に捜査官のエネルギーが注がれる。その意味で、捜査実務の実態は取り調べ中心主義であり、供述の証拠化、調書化こそが、捜査の中核となる。これが、自白調書の場合、有罪立証の要となることはいうまでもない。被疑者は、捜査機関からすれば、取調の客体であり、身柄拘束中は、その状態を徹底的に利用し、自白獲得に向けて取調を行う。ここでの自白の強要、利益誘導、脅迫等が密室の取調室で行われると、被疑者の意思に反した自白調書が作成されることになる。取調の可視化がいわれるゆえんである。(その2に続く。)