身柄事件の刑事弁護その2 | 刑事弁護人の憂鬱

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弁護人接見と起訴前の身柄解放への努力


逮捕勾留されると、弁護人ないし弁護人となろうとする者は、被疑者ないし被告人が留置ないし勾留されている場所へ面会にいく。これを弁護人接見という。この弁護人接見は、立ち会い人なくして行うことができる(刑訴39条1項)。

すなわち、弁護人接見は原則として自由な秘密接見であり、被疑者・被告人には防御権として弁護人との接見交通権という権利があるということである。

これとは、逆に一般人の面会は、法令の範囲内で可能な制限的なもので、面会時間(20分程度)と会話内容(事件に関することは禁止、外国人であっても言語は日本語)も限定され、警察官等の立ち会いもある。また、接見禁止がついている場合は、弁護人以外の者とは面会できない。(一定の親族との面会を認める接見禁止の一部解除を裁判所に求めることができる。たいていは許可がおりるので、必要があれば申し立てをしたほうがよい。)


被疑者の拘束場所は、起訴前ならば、たいてい警察の留置施設(代用監獄)である。したがって、起訴前の弁護人接見の場所はたいてい警察署ということになる。もちろん、身柄が検察庁にいっている場合は、検察庁での庁内接見、裁判所にいっている場合は、裁判所での所内接見となる。


被疑者が取調中でも、最近の警察の運用では、事前に連絡をしておけば、中断して弁護人接見を認める傾向がある。この点は、刑訴39条3項の「捜査の必要があるとき」に時間等の指定を認める、いわゆる「接見指定」の基準、限界に関する判例等の影響も大きいのであろう(この論点については代表的な刑訴法の教科書を参照していただきたい)。


身柄が拘束されている被疑者にとって、弁護人接見は唯一、安心して話せる場であり、家族等の安否、外部の情報を得る手段である。刑事手続きの説明、初めての取り調べに対するアドバイス以上に、事件の事実を詳細に聞き取り、今後の弁護方針を固める意味で、身柄事件における弁護人接見の実務上の意義は大きい。

また、弁護人の立場としては、取り調べの中身、態様から捜査機関の意図は何か、どういう供述を巻こうとしているのかを知る唯一の手がかりであり、違法不当な取り調べがある場合は、直ちに是正措置(検察官に対する上申書、意見書)、早期の身柄釈放に向けた活動等を行う。


起訴前においては、保釈のような身柄解放手続きはない。

もちろん、法的には勾留取り消しの決定をもとめる準抗告(そもそも勾留の理由ないし必要性相当性がない)、勾留執行取り消しによる身柄解放があるが、要件が厳しく実務上、なかなか認められない。


しかし、以下の手段で、早期の身柄解放の弁護活動を行うこともある。


1 10日勾留でおわらせ、勾留延長を防ぐ。

  軽微な事件、自白事件の場合、むだに20日間も勾留する必要はなく、早期の手続き進行の利益は、「迅速な裁判を受ける権利」(憲法37条)に照らし、被疑者の場合にもある。そこで、検察官に対し、早期の起訴不起訴の決定を促す。また、保釈請求を早期に行うため、10日で起訴してもらい、翌日に保釈請求をするといった方法もとることがある。

  また、勾留延長10日を7日とか5日に短縮する方向で動く場合もある(保釈のねらい、長期の身柄拘束が持病に悪影響を与えることを理由に勾留延長が短縮された例がある)。この場合は裁判所にも意見書提出あるいは面接をする。

  なお、不起訴処分や、罰金等をめざす場合は、被害者との示談交渉の時間をとる関係から、勾留延長10日があったほうが、時間かせぎとして有益なこともあるので、勾留延長の防止ないし短縮が必ずしも被疑者の利益となるわけではないことに注意。


2 勾留請求の回避

  一歩進んで、逮捕後の勾留請求そのものを回避する。本人の自白、身柄引受人、長期の勾留が健康や子供の養育など大きな支障がでる、事件が軽微、被害者と示談がついているなどの事情をあげ、検察官と面会、意見書等で交渉する。これは、逮捕段階ないし逮捕前から早期の弁護活動をしていないと対応できない。これは、身柄事件を在宅事件に切り替える手法の一つである。


3 逮捕の回避

  2をさらに一歩進めて逮捕を回避する。この場合は任意捜査が先行している場合がほとんどであり、任意調べに協力するという形で在宅事件から身柄事件に発展するのを防ぐという意味である。

 まれに逮捕状が発付され、その執行を防ぐということがある。現に誘拐事件(離婚に伴う子の引き渡し紛争)において、逮捕状をもった刑事5人と交渉し、任意調べの出頭、子の安否確認をして、逮捕状執行を回避し、在宅事件に切り替えた経験があるが、まれなケースである(最終的に不起訴処分で終結)。


弁護人接見において日常的によくつかう手続きとしては以下のものがある。


1 弁護人は被疑者又は被告人に対し、書類または物の授受を行うことができる。


いわゆる「差し入れ」である。着替えの下着、服、書籍など。写真も差し入れすることができる。

現金を差し入れする場合もある。現金は何に必要なのかというと、留置場の中で、下着や日用品を買ったり、弁当を買ったり、手紙を書く際の切手代などにつかう。


書類の例では、私選の場合は、弁護人選任届の差し入れがある。(署名後、本人の指印証明付きで宅下げしてもらう。)なお、弁選は署によっては、文書発信扱いで差し入れ、宅下げ手続きで行わないところもある。


2 逆に、被疑者又は被告人から弁護人に対し、書類又は物の授受を行うことを「宅下げ」という。


※差し入れ、宅下げは、一般人でも可能である。


なお、差し入れ品は法令上の制限があるので注意。たとえば、自殺防止等の理由から紐付き、フード付き、金具付きの服はだめ。女性の下着も派手なもの、レース付きなどはだめと規制は厳しい。