子犬のワルツ | Diary of a Lover

Diary of a Lover

中村隆宏の手記

音楽を聴くと、誰が作った曲なのか、誰の演奏なのか、知りたくなる。音楽の出自を知ると、知らないときには聴くことができなかった音楽を鑑賞できるようになる。

 

ピアノの詩人、フレデリック・ショパンを知っている人は多いと思う。ジェイムズ・ブッカーというニューオーリンズのピアニストは、たぶん、ショパンほど有名ではない。

 

これは1976年の演奏だけど、ショパンのピアノ曲「子犬のワルツ」をブッカーが弾くと、こうなる。

 

 

もし、ブッカーの「ブラック・マイニュート・ワルツ」を、ショパンの「子犬のワルツ」を知らない人が聴いたら、どう感じるだろう?原曲を知らなければ、ジャズのスタイルでアレンジされていることも分からない。

 

逆に、ブッカーの「ブラック・マイニュート・ワルツ」だけを知っている人がいるとして、その人がショパンの「子犬のワルツ」を聴いたら、どう感じるだろう?間違いなく、優雅なクラシックのスタイルにアレンジされていると感じるはずだ。

 

音楽の歴史を知っている人にはジョークのような話を書いた(ショパンはブッカーより129年先輩)。だけど、ネットで自由に音楽を聴ける現代では、アレンジされた曲を先に聴いてオリジナルだと思い込むことは、フツウにあり得る話だ。

 

2005年のショパン・コンクール優勝者、ラファウ・ブレハッチが「子犬のワルツ」を弾くと、こうなる。

 

 

聞こえてくる音を楽しむだけの音楽鑑賞もある。歴史を知ることで鑑賞できるようになる音楽もある。音楽を聴こうとする人は、音楽を知ろうとする人でもあると思う。