ポット育苗の原点を見つけた秋旅23 | レムの里山紀行

レムの里山紀行

時の流れを忘れて土を耕したり野を歩いたり山を観たり

美幌~斜里の大地のまっすぐな道(どこでも真っすぐですが)。

 

法定速度より気持ち早めで走ってますとこんな山をあちこち見つけました。

ワザワザ止まりませんのでカミさんが望遠レンズで撮りながら

何?ジャガイモ?と言ってます。

 

アップで撮ってもらった写真。

ジャガイモよりはデカいだろ?

ジャガイモで規格外で捨てている?

 

収穫の様子は撮影し損じて、帰宅してからネット拝借。

(ビートハーベスターというらしい)

 

 

 

積み上がった不明品の山の近くの圃場、その前で車を停めて望遠レンズで撮った写真。

(圃場に入り込んで撮るようなことはしませんよ!誰とは言わないけど)

カメラのモニターを見ながら、大根っぽいというカミさん。

大根!?どこかで読んだアレか?

 

カミさんがネットで調べて、やはり甜菜(てんさい)っぽいと。

 

さらに走ってるとキタキツネがこっちに走ってきます。

すれ違いざまにカミさんが撮った写真。

被写体ブレしてますが。

 

野生動物の食料になるくらいですから、栄養価高い甜菜ですね。

 

ご存じ甜菜は別名サトウダイコン、洋名でいえばビートです。

 

 

ネット検索するカミさんが、帯広の『ビート資料館』の情報を見つけました。

ニッテン(日本甜菜製糖社)関連の施設のようです。

 

カミさんが読み上げていく中で、気になるキーワードが出てきました。

『ペーパーポット育苗』

 

家庭菜園をやってる人は、育苗に使う資材は凡そ樹脂材ですよね。

売られている苗も樹脂製のポットに入れられてます。

ですが、大型のホムセンの農業資材売り場では時々『紙製のポット』を見かけてました。

 

気になります。

 

 

ということで、数日後に『ビート資料館』に寄ることになります。

ザックリ見学して20分の規模です。

ですが、今回4時間近く滞在して展示物を詳細に見たり、膨大な資料をめくったり、奥にいた館長を呼んで技術的な質問をして、楽しみました。(次は丸一日、詰めて資料を読みたい)

 

 

子細を下記に。

甜菜概論は①、ペーパーポットの発明は②に。

見聞した内容が多いので、メモ的に書き残します。

ご興味あればどうぞ。

 

 

①まずは甜菜概論

 

日本の砂糖自給率は3割。

その内1/4がサトウキビ、3/4が甜菜(てんさい=サトウダイコン)。

甜菜から製糖してるのは日本甜菜製糖社を含む3社へ整理統合。

日本甜菜製糖社のシェアは甜菜製糖の約45%で1位。

ということは日本で流通する砂糖の約1割が日本甜菜製糖社製。

 

資料で確認したところでは、日本甜菜製糖社の砂糖は主に道内で消費されているとのことなので、他の地域ではなじみがないはず。

ちなみに日本甜菜製糖社製の砂糖のブランド名は『すずらん印』。

レム地方では見かけたことはない。

 

ざっくり掻い摘んで書くと、、、、

甜菜は寒冷地を好み、特に夏場は気温が低い方が糖度が上がり良い砂糖が作れる。

圃場ごとに甜菜サンプルを糖度を検査して買取価格が決まるとのこと。

甜菜の栽培は、3月にポット播種、5月に定植、10月に収穫。(菜園愛好家の北のブロ友さんの栽培サイクルに似てる)


収穫された甜菜は日本甜菜製糖社の3つの工場にて製糖される。(所謂、農業の6次産業の代表格かなと)

 

ただし、工場の生産キャパシティの制約から生産期間は10月から3月までの半年。

その間原料の甜菜は保管する必要がある。

圃場に積み上げられた甜菜も加工待ちの保管。

積雪するまでに日本甜菜製糖社の保管場所(200×数百メートルの山積みでシートをかけて保管)に集荷される。

 

製糖生産のシステムは効率化をターゲットにいくつかの方式に切り替えられてきた。

(子細は省略)

 

製糖事業は明治時代に西洋から導入される。

甜菜の性格上、寒冷地での栽培が必須であり、国策として栽培がひろめられた。

戦後、後進国で甜菜の栽培が広がり、国内の製糖産業の衰退が進む。

 

度重なる業界再編により、現代の国内生産はトップシェアのニッテン、他がホクレン、北糖の三つに集約された。

 

 

 

 

②ペーパーポット栽培

 

戦後の混乱期を経て、製糖産業への期待が高まるとともに、効率的な生産の要請が広がる。

昭和30年代初頭、生産効率の切り札として開発されたペーパーポット栽培。

 

 

27年の入社の増田氏が目を付けたのが甜菜の生産性向上。

寒冷地で如何に大根の糖分量をアップさせるか。

 

栽培期間が短い北の大地で、疑似的に栽培期間を延ばすか?

露地栽培では5月播種だったものを、雪深い3月に播種して5月の定植する方法としてペーパーポット栽培を発案。

寒い時期、苗ごとの微小エリア(ポット)に播種して加温栽培して育苗するという発想を思いつく。

 

微小エリア(ポット)の材質としての紙、最初に試されたのが新聞紙。

だが吸水してボロボロになり頓挫。(素人でも予想できる(笑))

様々な紙、その製法を試しながら、吸水に強い筒状のペーパーポットにたどり着く。

 

家庭菜園の愛好家なら、ニンジンやダイコン等の根菜は根がダメージ受けるのでポット育苗は不可で直播必須であると刷り込まれた。

甜菜=サトウダイコンも同種のはずなのだか、日本甜菜製糖社の増田氏の発想のすごい所がココ。

甜菜は実の大きさは高々15cm、ポットの高さを15cmにしたらダメージは受けないだろうと。

 

甜菜用のペーパーポットの高さは15cm。(写真のオレンジ字のもの)

この写真は現代の物(現地撮影)。

 

苦節5年程、昭和35年頃に甜菜のペーパーポット栽培技術は確立される。

筒状のペーパーポットごと圃場に定植され、ポットは土にかえる。すげー。

甜菜の生産効率(撮れる砂糖の量)は5割増し。すげー。

 

その後も改良が進み、自動定植機対応、肥料対応など様々な技術革新が同社によって続けられた。

同社はペーパーポット栽培技術の特許を取得、その後の技術も特許化。すげー。

 

技術開発の主役の増田氏は昭和45年に特許庁より表彰を受けている。

また後進の技術者らも多数の特許を出願、同社の特許群はおおよそ300件。すげー。

 

さらに、甜菜以外への応用も考えられ、上記写真でも高さが低い(緑字のポット)など各種野菜向けのペーパーポットも商品化されている。すげー。

 

 

ペーパーポット栽培技術は例えば種子大手のタイキのホームページでも紹介されている。

 

 

一方、現代で市販されている苗はポリポットが主流。

ポリポットは耐久性がペーパーポットより上回る。

でもポリポットはそのまま土には植えられない。どっちがいい?

 

ポリポットの主要製造メーカを調査したが、思った通り創立や事業化はペーパーポットのより後の時代。

(ポリポットの出現を調査したが、情報は見つかっていない。

 

こうしたこと勘案すると、

 現代、家庭菜園で一般的に行われている『ポット育苗』は『甜菜ペーパーポット栽培』の応用である

と言って良さそう。

 

ちなみに広義には、ペーパーポット栽培であれ、ポリポット栽培であれ、移植栽培技術の一分野であるが。

 移植栽培:よく知れたところではお米の田植えもこれ。

 

 

いずれにしても家庭菜園で普通に行われている『ポット苗』が70年程昔の甜菜栽培にそのルーツを見つけたことに驚いた次第です。

 

 

 

 

 

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