その話、本当?と話の出所を調べると胡散臭い話は数多ありますね。
そうでなくても本当っぽい説明がよくよく考えると怪しかったりする。
先日の記事でヒガンバナのお話を書きました。
『もぐらは肉食で彼岸花の根は食べないので効果は無い』との情報が。
ネット検索してみると、たとえばこちらの『モグラ撃退器を扱う業者さん』の記事には、
①モグラは完全なる肉食、彼岸花をそもそも食べない
②土手が赤く染まるほど彼岸花が咲いているにも関わらず土手の土はモグラでぼこぼこなんてことはよくある話
③彼岸花から毒が染み出して土壌に彼岸花の毒が移行することもない。もしそうであれば畑の土を毒することにもなるので畑の作物は育たなくなる
④つまりモグラにとっては彼岸花はそのへんに生えている植物と何ら変わりないため、モグラよけにはならない。
⑤モグラの生態から考えると敏感な聴覚と感覚に訴えてモグラが逃げ出す超音波と振動を用いたモグラ撃退器を使う方法が効果を発揮します!
とのこと。
とても説得力ある説明ですね。
カミさんも⑤を除いて反論の余地がないと言います。
私も①には納得です。
菜園をやってる人は、モグラがミミズを食べるが野菜はかじらない、掘った穴に住み着いてネズミが野菜をかじる、ということを知ってます。
でも②はどうでしょう?『よくある話』なら見たことがありますか?
私は無い。ネットで画像(彼岸花+モグラ塚)を探しましたが出て来ません。
③はどうでしょう。前半はイメージできます。でも後半は怪しい。
動物にとっての毒性と植物にとっての毒性を混同させてるところが変。毒性はそんな単純なものではない。野菜栽培で話題になる連作障害や負のコンパニオンプランツは、土の中のセンチュウの活動との関係だけれど、とても複雑なことを菜園愛好家は知ってる。一言で『畑の土を毒することにもなる』などと軽々しく言えるものではないでしょう。
④はどうでしょう。②と③を根拠に、彼岸花の毒を口にしないから、害にならず、退治できない?モグラ対策として退治してしまう作戦なら効果なしと言えますが、、、退治することだけがモグラ対策ではないですからね。モグラの嗅覚から阻害する忌避剤の研究は下記の通りです。
『理路整然と並べられた業者さんの説明』ですが、⑤に行きつきウチの商品が良いよというストーリとなってますね。結局はセールストークでは?
彼岸花を田んぼや土手に植えるという行為は、日本人が何百年もかけて経験し伝承してきた知恵です。効果があるから他地域へと広がり日本中至る所で実践されている技法です。これを否定するには、それ相応の『実験データ』を提示するべきではないでしょうか?ね、業者さん。
コロナもロシアも何から何までネットには情報が溢れているけど、読めば読むほど根拠が怪しい噂話でがっかりです。
正しい情報かどうかしっかり見極めないと騙される。
フィッシング詐欺にも似ている気がします。
こんな話が重なって、疑心暗鬼な今日この頃です。
-----以下自分用検討メモ-----------
彼岸花の毒性等の研究や書籍を調べてみました。
モグラへの忌避効果なしを実験・実証した事例はまだ見つかってません。
逆に効果ありを類推できる研究報告は多数ありました。
以下書籍情報。
〇J. Japan Association on Odor Environment Vol. 47 No. 2 2016
市販忌避 剤 5 種類の効果を飼育下において調べたところ,「ヘビ・モグラ忌避ジェット」,「モグレス」,「モグラヨラズ」 に少なくとも短時間の忌避効果があったが,「ニゲダス」と「とおせん棒」には認められなかった.(以下略)
ヒガンバナに忌避効果はない という意見もあるが,本実験では独特の反応が見られ, その意味は不明である
〇日本お米協会
美しく凛と咲く「ヒガンバナ」が農家の天敵から田畑を守る!
ヒガンバナの特長を生かして先人たちが広く植え続けた
〇農林水産省 農業環境技術研究所
ヒガンバナに含まれるリコリンには,哺乳動物 の中枢神経麻痺作用がある
ネズミ等の忌避,防虫や抗菌性など も広い意味での他感作用である。
それで,ヒガン バナは伝統的に畦畔に植えてモグラによる穴を防 ぎ畦畔が崩れるのを防ぐために用いられていたと 考えられる。
〇香川県立図書館
ヒガンバナがモグラよけになるということについて書かれたものは?
彼岸花の球根には毒があるのでミミズが寄りつかず、従ってモグラが来ない。彼岸花は、棚田のアゼの守り神なのだ。
球根のにおいがモグラよけになる。彼岸花が棚田に多いことには、理由があるのです。
〇日本雑草学会 雑草研究/25 巻 (1980) 1 号/書誌
鱗茎中に含まれるアルカロイドはマウスの忌避作用を促すことが, 鱗茎の生抽出液の強制的投与, 鱗茎を混入した土壁穿孔実験および鱗茎の生抽出液を土壌表面に処理した場所におけるマウスの行動観察から認められた
〇環境生物部植生管理科他感物質研究室
ヒガンバナの雑草抑制作用については,四国学院大学の高橋道彦教授の研究が端緒である.ヒガ ンバナの鱗茎には雑草の生育を強く阻害する物質が含まれており,特にセイタカアワダチソウなど のキク科雑草を強く阻害するが,イネやイネ科植物への阻害は弱く,したがって畦畔管理に最適な 性質を持っていることが明らかにされている.
〇農研機構 中央農業総合研究センター 農林水産省 農林水産技術会議事務局
ヒガンバナはアレロパシーが強く、球根、茎葉、花茎に植物毒であるアルカロイド を有する植物で、古くから野ネズミ対策として利用されてきた。ヒガンバナが繁茂している 法面ではイノシシの痕跡が認められず、ヒガンバナのアルカロイドによる影響を指摘する報 告がある。本調査でも畦畔・法面のイノシシによる掘り返しが認められなかったことから、 ヒガンバナの栽植による効果が期待できると思われた。
〇福岡県立鞍手高等学校
ヒガンバナには毒性の ある物質が含まれていて、他の植物の発芽抑制に 使用した例や松枯れ病を引き起こす線虫を駆除 に使用した例が報告されている。
ヒガンバナには虫や動物を避ける効果があると 言われているが昆虫に対する今回の実験では、臭 いによる防虫効果も摂取による殺虫効果も期待で きないという結果になった。今後、ネズミやモグ ラに対しても効果があるのか検証したい。
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