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Drunk on Speech

このサイトは慶應義塾大学英語会Chief of Speechだった作者が、今まで学んできたこと・感じてきたことを公開しているものです。

大学生向けのエッセイを次々と公開していく予定です。どうかみなさんのSpeech作りの参考にしていただければと思います。


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最近では年が明けると就職活動を行う学生の姿をよく見かけます。就職活動で一番大事なのは面接でどのように自分をアピールするかです。すべての学生は、「自分にはやる気があります」と主張するので、面接をする側としては、いかにして本心を暴きだすかということが最大の関心事項になります。

今も昔も、学生のやる気の有無を確かめるには、ちょっと脅かしてみるという手が良く使われます。「私はお客様と接することに情熱を傾けたい」と言っている学生には、「関西に行くとお客様の要求事項がとても厳しいからね。中には胃潰瘍になっちゃう人もいるし、怖い人担当になるケースも結構あるよ。それでも大丈夫なの」と聞いて見ます。その時に、「ぜんぜん大丈夫です」としっかり目を合わせながら即答できる人と、「あ・・」と間を置いてから返事をする人とでは次のステップに登れるか否かが違ってきます

Speechでも全く同じことが言えます。QAのときにQuestionerはSpeakerが主張していることに対して、かなり極端な例を質問してその真意を確かめます

例えば夫婦別姓のSpeechで、「結婚後に苗字が変わることは神経症などの疾病を招くだけでなく、個人の尊厳の喪失にまで発展する」と言っている人に対しては、「何年間も愛していた人とついに結婚になりました。その人は人柄も良くて経済力もあって、姑さんも優しい。ただ一点だけ、夫婦別姓だけは反対している。そうしたらあなたは結婚をあきらめますか」などと聞いてきます。その時に「いやぁ、どうしようかなぁ」と、はにかんだような表情を見せてはだめです。個人の尊厳の喪失にまで話を広げている以上、「それではそういう人とは結婚しません」と真顔で即答しなくてはいけないのです。

とにかく即答で結論を最初に述べることが重要です。それだけで終わらすのが少しはばかられると言う場合は、その次に「しかし私はボーイフレンドと付き合うときにはいつも夫婦別姓のことを最初に聞いておきます。結婚まで発展する前にあらかじめ何度も確かめていますので、そういうケースは少ないと思います」と言っておけばよいのです。

即答できないということは、自分の主張を信じていないということです。自分の主張を信じられない人が優勝できるはずがありません。

『勝利のために25』
迷わず即答する


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私たちがSpeechをする上で想定しなくてはならない人間はどのような人達でしょうか。それは、言うことを聞かず、怠け者で、自分の利益以外には目もくれないような人達です。ところが、多くのSpeechに現れる人間は、聞き分けがよくて、勤勉で、他人の便益のために進んで行動を起こすような人達です。「悪いことだからやめなさい」と言われれば進んで従い、「良いことだから積極的にやりなさい」と言われれば、ハイハイと動き出すのです。しかし、これでは世の実情とまったくあっていません。

具体例を挙げましょう。毎年数多く登場する医療系Topicがその代表例です。その中で登場する医者たちは、自分たちの利益を最優先し、軽度の症状を重症のように扱い、薬を山のように出して暴利をむさぼっています。そのような悪人達を登場させておきながら、「教育的効果を期待する」とだけ言って終わってしまうSpeechが非常に多いのです。

「教育的効果」というのは事前的対策の中で最も多く使われる手段のひとつです。つまり、「医学部の授業の中で医療倫理を説く授業を増やせば、悪いことをしでかす医者は少なくなる」というのです。きちっと教育しておけば、そもそも問題を起こす人物がいなくなるので、事前的にすべての問題は解決されるらしいのです。

しかし、医学のように高度な知識を駆使するサービスでは、医師と患者の間に情報の非対称性が存在します。簡単に言ってしまえば、難しいことを扱っているので悪いことをしてもばれにくいということです。人間はそういう状況におかれると、自分の利益を最優先する行動をとります。教育によってそういうけしからん連中の数も「少しは」減るでしょうが、それだけでは抜本的解決にはなりません。

こういうケースでは、問題が起きてしまった後に、悪事をどう暴き、それに対してどのような罰を与えていくのかという事後的なアプローチの方が有効になります。つまり、悪いことをばれやすくして、厳しく断罪することによって利益最優先のことを仕出かそうとする欲望を抑制するのです。

悪人が教育だけですべて善人になると考えるのは浅はかです。悪人をどのようにコントロールするのかというシステムを考えることがSpeakerの腕の見せ所なのです。

『勝利のために24』
教育的効果だけに期待しない


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人間は強い生き物ではありません。いくら事前に覚悟して準備していたとしても、いざ自分が窮地に放りこまれると突如パニックになる生き物です。しかし、多くのSpeechではこの様な基本的なことが忘れ去られてしまっています。

例えばガン告知の問題などがそうです。年間数本は必ず耳にするTopicですが、これまで私が聞いてきた限りでは、「事前に家族で告知するか否かをしっかり話し合っておき、いざというときにそれに従う」というのが、多くのSpeechで共通している部分です。しかし、ガンとは無縁の日々を送っている事前に決めたことが、いざガンになった事後に有効かどうかは多いに疑問です。

世の中には、「俺がガンになったときは嘘をつかずにしっかりと告知してくれよ」と言っていた人でも、実際にガンに罹ってしまった後に告知をされてパニックになるというケースが多々あるはずです。ですから、そうした問題が起こってしまった後に、その人達をどのようにサポートしていくべきかを考える事後的対策に目を向けてみてはどうでしょうか。

事前的な対策を取らなかったことによって困難に直面してしまったとしても、それでその人の人生が終わるわけではありません。苦悩の泥沼にはまってしまったとしても、そこから抜け出すチャンスはいくらでもあるのです。

みなさんはSpeechのTopicを決めるときに、「こっちのTopicとあっちのTopicとどちらにしようか」と迷った時にどうしますか。どちらにしようか迷ったときに、ひとつの判断基準となるのは、「どちらをとれば自分が生まれ変わることができるのか」ということです。

無難な事前的対策を主体としたTopicは、PHCSにしやすく、実際に自分で経験したり考えたりすることをあまり求めません

反面、事後的対策を主体としたものは、苦難に喘いでいる人をどのようにサポートするかが中心なので、自分で問題にぶつかって必死に物事を考える必要があります。それだけ苦労が多い分、自分自身が変わることができるのです。

困難から抜け出そうと必死でがんばっている人に接するときは、自分も頑張ろうと思わなくてはなりません。そして、あなたが頑張っていれば、聴衆はあなたのSpeechに魅力を感じてくれるのです。

『勝利のために23』
自分が変われるTopicを選ぶ


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世の中には2種類の対策があります。事前的対策と事後的対策です。火災に例えてみれば、事前的対策は防火対策で、事後的対策は初期消火活動にあたります。どちらも重要であるにも関わらず、多くのSpeakerは事後的対策にはあまり関心がないようです

この傾向は、毎年多く発表される医療系Topicに顕著に表れます。脳溢血を防ぐには、ガンを予防するには、HIVに感染しないためには、などがそうです。これらのSpeechでは、病気というリスクが顕在化しないための策に論点が絞られており、そのような症状に陥ってしまった人をどのように励ましていくのかという事後的な視点が驚くほど欠如しています

例えば、毎年3本はお目にかかるHIVのTopicについて考えてみましょう(薬害エイズは除く)。私はこの手のSpeechを10本ほど聴いたことがありますが、すべてが事前的対策について講じたものでした。すなわち、不特定多数の人間との性交渉をしない、コンドームの着用を心がける、麻薬をしない、注射針の共用をしないなどがそうです。

ここで問題になってくるのは、事前的対策の多くが一般的によく言われていることであるという事です。たとえ聴衆が知らないことでも、予防法や兆候を見分けるポイントが医学大辞典に書いてあるような平板な内容であれば、聞いてもさほど面白いとは思わないのです。加えて、いくら予防を講じても、リスクをすべて消し去ることは出来ません

ですから、もっと事後的対策を考えてもいいのではないでしょうか。HIVに感染してしまった人や感染したのではないかと悩んでいる人は、かなりの精神的ダメージを受けているはずです。その様な過酷な状況にいる彼らをどのように支援することが出来るのでしょうか。本や雑誌からだけでなく、実際に彼らと接して真剣に思い悩むことで、Originality溢れる具体的なアイデアがいくつも生まれてくるのです。聴衆はそこに動かされます。

予防が大事だという人に限って、いざリスクが顕在化してしまった人達のことは全然考えないという事はよくあることです。何故なら、予防を講じることはたやすくても、苦境にあえいでいる人を事後的にサポートすることにはかなりの困難が伴うからです。しかし、SpeechのOriginalityやPassionというものは、困難に立ち向かって初めて生まれてくるものです。困難から逃げてばかりいては、あなたは熱くなれないのです。

『勝利のために22』
困難に立ち向かって熱くなる


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「最近のSpeechはTopicが矮小化されすぎだ。もっと『大きいこと』を考える必要がある」ということが声高に叫ばれています。実はこの『大きいこと』に対してどのようにアプローチしていくが非常に重要なのです。概して私達は『大きいこと』を考えようとすると、『大きな世界』を考えてみようとしてしまいます。ところが『大きな世界』は私達の生活の一つ一つが積み重なったものに過ぎません。ですから、『大きな世界』を考えるには、日常の中から『世界』を発見していかなくてはならないのです。しかし、ほとんどのSpeakerは図書館の中から『世界』を発見しようとするので、Originalityのない社説の二番煎じのようなSpeechしか生み出せないでいるのです。

あなたが毎日通っている通学路を思い出してみてください。あなたの通学路こそがあなたの日常です。そこからあなたは『大きな世界』に通じる考えを見出すことが出来ますか。

例えばあなたの近所に巨大玩具ディスカウントのトイザラスができたとします。近隣のプラモデル屋さんが瀕死のダメージを受けています。しかし、半年経って逆にプラモデル屋さんに子供達が帰ってきているのです。実は、店ではレースに勝つためのプラモデルの改造の仕方や、レースで目立つ色の塗り方を子供達に指導し出したのというのです。そのおかげで、利幅の低いプラモデルはトイザラスに取られたが、プレミアムの高い周辺機器や指導料が増えたおかげで、かえってお店が儲かるようになったことを知るのです。

図書館の中で商店街のTopicを考えると、「商店街は弱者だ」という意見ばかりに目がいき、「商店街に行ってあげましょう」というおきまりのSpeechが出来あがります。しかし、実際に成功している店は、大規模店にはない発想で勝負をして、互角以上の戦いを繰り広げている例が数多くあるのです。この様な『日常』を発見すると、弱者を弱者だと決め付けて、弱者保護政策ばかりに目がいくのは浅はかだという『世界』が広がるのです。弱者を過保護から引き上げて初めて、強者に挑む覚悟が生まれるのです。弱者保護政策は、弱者が強者になるチャンスを奪っている可能性があるかもしれません。

実際のところ、図書館の中で『大きな世界』を浅く見るよりも、身の周りの『日常』を小さく覗いて大きく育てることの方に価値があることも多いのです。ですから、自分の『日常』にもっと目を向けてください。そうしないと、あなたの『世界』も広がらないのです。

『勝利のために21』
小さく覗いて大きく育てる