分子整合栄養医学の歴史2~時々ビタミンCに脱線 | 精神科医:みえしん院長

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おはようございます(こんにちは)。三重心身クリニックのドクター臼井ですニコニコ


三重心身クリニックではこころの病やメンタルヘルス不調に対し、お薬の処方をしたり、カウンセリングでの治療も行っていますが、分子整合栄養医学という学問に基づいた、栄養素による治療も行っております。

三重心身クリニック 院長 ドクター臼井のブログ
前回は「分子整合栄養医学の歴史」というテーマで、メンタルヘルス不調や精神疾患の原因となる神経伝達物質と栄養の関係に注目し、治療に取り入れた先人としてカナダの精神科医エイブラム・ホッファー(Abram Hoffer)博士を紹介しました。またホッファー博士が始められた分子整合栄養医学の治療は、うつなどのメンタルヘルス不調の領域にとどまらず、ガンやアトピー性皮膚炎、不妊症、喘息、脂質異常症、糖尿病などさまざまな疾患に有効でしたね。さらには病者のみならず健康な方のアンチエイジングや美容、ダイエットにも分子整合栄養医学の治療は多大な効果を発揮することを紹介させていただきました(→過去記事 )。


さて、分子整合整合栄養医学の歴史においてもう一人重要な人物が、ノーベル化学賞とノーベル平和賞の2つを受賞した、ライナス・ポーリング(Linus Carl Pauling)博士です。ポーリング博士はビタミンが栄養欠乏症の予防以外に重要な生化学的効果を持つ可能性や、精神疾患の原因の一つに酵素の機能障害が関係していること、また病気の本質的な治療や予防のためには身体を分子レベルで考える必要があると考えていました。


実はエイブラム・ホッファー博士、ライナス・ポーリング博士の考えは当時斬新であり、なかなか受け入れられませんでした。そんな逆風の中2人が出会い、ポーリング博士はホッファー博士の研究結果を注目し、アメリカの科学誌「サイエンス」にて「分子整合栄養医学」という考え方を提唱されたのです。


ポーリング博士は、非常に広範囲の分野で多くの研究を行い、現在の物理・化学の基礎を作った功績があります。脳の機能について、化学的に研究することによって作られた学問が「分子整合栄養医学」になるのです。

ポーリング博士が分子整合栄養医学の分野で強調されていたことの一つに、個人差を重視するというものがあります。ポーリング博士は、どのような栄養素であっても同じ効果を出すためには個人差が大きく20倍程度の差があることを常にお話しされていたそうです。


いまでこそ「オーダーメイド医療」「テイラーメイド医療」という用語が増えてきました。当時としては画期的なことであったと思います。現在でも栄養に関しては「所要量」という概念が強く、欠乏症、過剰症にならないための基準が中心です。つまり個人差への配慮がほとんどなされていないのが実際でしょう。


ちょっとビタミンCに脱線しますが、たとえば国の一日当たりの推奨量はなんと100mgとなっています。私から言わせると少なすぎるとは思います。ただそれは目をつむるとして、たばこやアルコール摂取、薬を服用・・・そういった要因があるとビタミンCの消費量が大量になり、ビタミンCの必要量が増大することはあまり想定されていないように感じるのです。
また意外に知られていませんが、脳は血液中の濃度よりもはるかに高い濃度でビタミンCを含んでいます。それは脳がビタミンCを大量に必要とするため高濃度に維持する作用があるからなのですが・・・。
大きなストレス、多くの薬剤、喫煙、飲酒などの生活習慣が加わると、それらの要因が重なるたびにビタミンCの必要量が増し、通常存在する個人差である20倍を超えることも予想できます。
つまり仮に国の一日当たりのビタミンCの推奨量100mgが正しいとしても、100mgで済む人も、2000mg・・・さらにはそれ以上必要な方もいるということなのです。

(参考文献)
溝口徹:脳から「うつ」が消える食事.青春出版社,東京,2010.
溝口徹:「うつ」は食べ物が原因だった!.青春出版社,東京,2009.