おはようございます(こんにちは)。三重心身クリニックのドクター臼井です。
三重心身クリニックではこころの病やメンタルヘルス不調に対し、お薬の処方をしたり、カウンセリングでの治療も行っていますが、分子整合栄養医学という学問に基づいた、栄養素による治療も行っております。
最近の記事で、私たちの身体は一定の状態であるのではなく、物質が入れ替わりながら状態を維持していること、そして食事はそのために重要なことを連載してきました。内臓、皮膚、骨、筋肉のみならず脳も、私たちの身体は全て食べたものからつくられているのでしたね。
神経伝達物質のバランスによって、こころの状態は様々に変化しますが、それには栄養が深い関係があるのでしたね(→過去記事1 、2 、3 、4 、5 )。
神経伝達物質の乱れはメンタルヘルス不調や精神疾患の原因となります。現在ではお薬での治療が主流ですが、神経伝達物質と栄養の関係に注目し、治療に取り入れた先人がいます。カナダの精神科医エイブラム・ホッファー(Abram Hoffer)博士です。
ホッファー博士が栄養に注目するようになったもともとのきっかけは、ガン治療だったそうです。わたしも精神科医ですから、特に大学病院(三重大学医学部附属病院)時代はガン治療の際にガンの専門医とともに治療を担当させていただいたことが多数ございます。なぜならガン患者にはうつ症状や、せん妄と言われる錯乱状態などをよく合併するからです。
さて、ホッファー博士の話に戻ります。博士はうつ状態などのメンタルヘルス不調の患者にナイアシンなどのビタミンB群、そしてビタミンCなどの栄養素を用いて治療を行っていました。ある時、博士は自分が受け持っているガン患者では、栄養素を用いてうつの治療をしている患者のほうがガンの進行が遅く、生存日数が長いことに気付いたのです。
ホッファー博士は精神科医であると同時に生化学の博士号の所持者でもありました。身体の変化は分子レベルの変化の結果現れるものだと考えていた彼は、メンタルヘルス不調においても脳の中の分子的変化―神経伝達物質等の変化に原因があると考えたのでした。
ホッファー博士が始められた治療は、うつなどのメンタルヘルス不調の領域にとどまりません。ガンにも有効だったのです。
現在でも栄養素を持ちたガン治療が行われていますし、抗ガン剤や手術と併用することで治療効果を高めることも行われてきています。また様々な内科系の疾患(アトピー性皮膚炎、不妊症、喘息、脂質異常症、糖尿病など)にも有効です。病者のみならず健康な方のアンチエイジングや美容、ダイエットにも分子整合栄養医学の治療は多大な効果を発揮します。
今日はこのあたりで失礼いたします。
(参考文献)
溝口徹:脳から「うつ」が消える食事.青春出版社,東京,2010.
溝口徹:「うつ」は食べ物が原因だった!.青春出版社,東京,2009.