神経伝達物質の合成 | 精神科医:みえしん院長

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おはようございます(こんにちは)。三重心身クリニックの臼井卓士ですニコニコ


三重心身クリニックではこころの病やメンタルヘルス不調に対し、お薬の処方をしたり、カウンセリングでの治療も行っていますが、分子整合栄養医学という学問に基づいた、栄養素による治療も行っております。


この数回はカニのレシピの記事が続きましたが(→過去記事1 )、その前の分子整合栄養医学の記事では、神経伝達物質が筋肉や臓器、皮膚、爪などと同じく原料はタンパク質であることをお伝えしました(→過去記事 )。


具体的には、血流からL-グルタミン、L-フェニルアラアニン、L-トリプタファンという形で脳に取り込まれます。そして、いくつかの反応経路を経て神経伝達物質に合成されます。

たとえば、
L-グルタミン右矢印γ-アミノ酪酸(GABA)
L-フェニルアラアニン右矢印ドーパミン右矢印ノルアドレナリン
L-トリプタファン右矢印セロトニン右矢印メラトニン

という経路が知られています。


特に私は精神科医でもありますので、これらの物質には関心を持って分子整合栄養医学外来の診療を行っております。ここで一例をあげましょう。L-トリプタファンから作られるセロトニンですが、これは気分を安定させる作用があります。よく「ストレスのせいで落ち着かない」とおっしゃる方が多いですが、セロトニンが不十分になると気分が不安定になります。ちなみにセロトニン不足は一般に「うつ症状」の原因とされます。そしてうつ症状の一つとして「不眠」がありますが、睡眠にはメラトニンが重要なのです。つまりL-トリプタファン→セロトニンの経路が十分に働いていないとその下流にあるメラトニンも不十分になり、睡眠障害の原因になるのです。


すると、セロトニンやメラトニンがスムーズに合成できるようにアプローチすればうつ症状が予防・軽減できることになります。ではなぜセロトニンの合成がうまくいかなくなるのでしょうか。


L-トリプタファンから目的とするセロトニンやメラトニンが合成されるためには、その合成反応に対応する多くの酵素や、その酵素の活性のために必要な補酵素(補因子)などの多くの栄養素が必要なのです。特に最も大切な合成過程に葉酸、鉄、ナイアシン、ビタミンB6、マグネシウムなどが補因子として作用します。


まとめるとセロトニンの主要な原材料はL-トリプタファン(アミノ酸の1つでタンパク質を構成します)です。ですからタンパク質をたくさん摂ることが重要です。そしてそこからセロトニンを合成する経路で様々な補因子が必要で、それらが足りないと、それだけで大切な神経伝達物質の合成に支障が生じるのです。


(参考文献)
溝口徹:診たて違いの心の病 ― 実は栄養欠損だった!.第三文明社.2006.

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