10月29日は院内研修会でした | 精神科医:みえしん院長

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おはようございます(こんにちは)。三重心身クリニックの臼井ですニコニコ


三重心身クリニックの保険医療部門では、主に精神科・心療内科の診療を行っております。 10月29日は、院外講師を招いて抗うつ薬の一つルボックス®(フルボキサミンマレイン酸塩)と、うつ病や統合失調症さらには胃潰瘍と多彩な疾患に有効で最近の抗うつ薬(SSRIなど)と併用することでお薬の抗うつ効果を増強するドグマチール®(スルピリド)というお薬に関す る研修を実施しました。
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抗うつ薬に関してはこれまでもいくつかレポートさせていただいている(→過去記事 )ので、簡単なレポートにとどめますが、ルボックス はうつ病に伴う「不安」にとくに効果的で、他の新しい抗うつ薬(SSRI)に比べ、お薬代が安いのも強みだそうです。


私は医療現場では全てのスタッフが一定以上の専門知識を有していることが必要と考えています。お薬の処方をするのは医師ですが、患者様が医療用医薬品をより適正にご使用いただくためには、スタッフのサポートが重要だからです。この日も医師のみならず、隣接の調剤薬 局の薬剤師の先生方、保健師、看護師のほか医療事務従事者も参加しての研修でした。

(ちなみに三重心身クリニックではより安全で効果的で新しい医療を提供するため職員研修を月に1回程度開催して職員の研鑽に努めてい ます。)

さて今回の研修のメインであるドグマチール®(スルピリド)というお薬についてです。日本では1973年に導入され、1979年からはうつ病な どに対しても国の認可が下りています。 特徴としては自律神経系に作用(正確には視床下部の交感神経中枢)し、胃腸症状を改善します。またノルアドレナリンに作用し憂うつ感 や意欲の低下を改善するのみならず少量投与することでドパミン機能を向上させ、うつで損なわれやすい「快感」を改善するとも言われて います。

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うつ病に対し薬物療法を行う場合、一般的にはSSRIを主剤に用います。SSRIとは日本語で「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」と言い、 セロトニン系の活性化を行います。とても良い薬なのですが、セロトニンにだけ働きますので、うつ病の症状に関係する「ノルアドレナリ ン」「ドパミン」への作用はほとんどありません。ドグマチール®はそのSSRIの欠点・弱点を補うことができるため、併用薬としてよく用い られるのです。

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古い薬=安い薬=悪い薬という風潮があります。確かに新薬は副作用が少ないものが多いです。ドグマチールよりはるかに良い特性を持つ 新しいお薬が多数あるのも実際です。しかしドグマチールには他の薬にはない特徴もあります。あなたの症状に合わせて主治医の先生に調 整してもらいましょう。

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研修会の後は昼食とカンファレンス(院内会議)でした。今回は保険診療による収入の低下とその対策についての報告と全体での審議でした。

最近、多くの医療機関で診療報酬の低下のみならず、過剰な薬や治療行為という理由で、保険から医療機関にお金が支払われないこと(減額査定)が増えてきています。たしかに過剰な医療は保険制度を揺るがすものであり許されるものではありません。しかし、医療の進歩に比べて保険適用の 拡大は遅くなりがちなのも事実で、最新の知見に基づいた最善の治療なのに保険を使えないということも多いのです。患者、医療機関、保険者(保険組合など)の三者みな納得するような査定ならば理想的なのですが、国が医療費抑制に大きく舵を切っているために、近年は医療費抑制の手段になりつつあり、我々医療機関の経営に悪影響を与えつつあります。国民皆保険という素晴らしい制度を持続させるため、私たち医療機関としては、効果や安全性と同時に医療費も意識しながら、経営を維持 していくために医療サービスをさらに効率的に提供していくことが求められているといえます。10月29日は職員全員で情報共有を行いまし た。皆さまのニーズに応えられるようなサービス展開を常にこころがけ全員で頑張っていきます。

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