おはようございます(こんにちは)。三重心身クリニックの臼井卓士です。
最近ダイバーの方から良く受ける健康上の悩みについて少し書いています(→過去記事1
,2
)。
ダイビングは、多くのスポーツやアドベンチャーに比べて安全性が高いレジャーと言えますが、やはり自然相手ですし、水の中でのレジャーですのでやはりそれなりの危険は想定しておく必要があります。ダイビングにおいては、スキルアップも大切ですが、自分の体調を整えて楽しむことがトラブルの予防に大切です。また健康問題についてはダイビングに限らず他のスポーツにも共通しているものも多いと思います。
さて、今回は、「船酔い」「痛み」と並んで多い相談の「鼻炎で耳抜きができない」「花粉症の時期、薬を飲むと眠くなるが飲まないと潜れない」などについて書いてみます。ただこのブログの読者はダイバー以外の方のほうが多いので、まずは基本からお伝えしていきます。ライセンスをお持ちの方などダイバーの方はスルーしてくださいね。
素潜りの経験のある方ならわかると思うのですが、たとえ1メートルでも水に潜ると水圧が増し身体が締め付けられます。プールの底へもぐる程度でも、特に耳に圧迫感を感じることが多いと思います。
耳の構造は断面図で下の図1のようになっているのですが、水の圧力で、耳の鼓膜が外から押され中耳(腔)が圧迫されることが原因です。
図1
ではその圧力の差を解消するにはどうすればよいのでしょう。水圧の場合と反対になるのですが、たとえば高所に登り耳に圧迫感を感じることがありますよね。あれも鼓膜の内外で圧力に差ができるのが原因です。そんな時、唾液を飲むとすっきりした経験ってないでしょうか?実は唾液を飲むことで図の⑭耳管が開き内外の圧力の差が解消されるからなのです。
ともあれ、ダイビングの用語では水圧が強く痛みや不快感を伴う場合「スクイズ」と呼びます。内外の圧力を同じに保つためには内部の圧力を高め外の水圧と同じにする必要があります。これを「圧平衡」といい通常「耳抜き」と言われるテクニックになります。
ダイビングで潜行していくときも唾液を飲むことで耳の圧迫をとることもあります。でも意外と水中ではやりづらい場合も多く、
「口を閉じて鼻をつまんで、鼻に空気を送り込む」
ことをします。
図2
図1にもありますが、中耳(腔)からは耳管が伸びこれは鼻とつながっているのです。しかし肺からの空気を直接耳に送り込もうと思っても、ほとんど口や鼻から出て行ってしまいます。そこで口と鼻を閉じて空気が出ないようにすれば、肺からの空気は、鼻→耳管→中耳(腔)
と耳に送り込まれるのです(図2の右)。
さて、冒頭の「鼻炎」「花粉症」では鼻の粘膜の炎症がおこりますが、炎症がおこると耳管が狭くなることがあるのです。すると圧平衡(=耳抜き)ができなくなりダイビングができなくなるのです。
長くなるので以降は次回に。
(参考文献)
今日の診療プレミアム.医学書院。2007.
PADIオープン・ウォーター・ダイバー・マニュアル.PADIジャパン.2000.