私にとって忘れられない患者さんがいる。東京・三鷹台に住んでおられた鈴木正志・ ひとみご夫婦である。ご主人が新宿で不動産業を営んでおられ、奥様は主婦業の傍ら奉仕活動をしておられた。
開業当初より通院しておられた患者さんの紹介でお見えになった。最初は奥様が通われ、しばらくしてご主人、娘さんが体の不調で診察にこられた。ひとみさんはもともと虚弱体質であるため貧血や関節痛が出て、体が思うように動かずお勝手仕事が出来ないということであった。体の基盤である骨盤の調整を行い、全体的なバランスを取ることに専念し、内分泌系の働きを高め、代謝機能を活発にしていった。
その結果、自律神経がスムーズに働き、肩こりや腰の症状がなくなり、元気になられた。その様子を見ておられた、ご主人が「私も体が硬いし、肩痛、背部痛があるので診てもらおう」と来院された。最後には娘さんまでの通院され、まさに鈴木さん一家のファミリードクターになった。
これがご縁で、新宿に新たに本院を開設する時に、鈴木さんが経営されていた「(有)三栄不動産」に大変お世話になり助かった。どこにご縁があるか分からない。今はご主人は他界されたが、奥様は鎌倉で過ごされていると風の便りでお聞きしている。新宿のクリニックの沿革を見るたびに、鈴木さんご夫婦のことが懐かしく思い出される。
Dr.中島の思い出日記(16)