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ちょっと専門的な内容になりますが是非お読み下さい。

 

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母体の新型コロナ感染による新生児予後への影響――観察研究での媒介分析の活用
執筆:重見大介(東京大学)、監修:康永秀生(東京大学)
スペシャリストの視点2021年8月31日 (火)配信 一般内科疾患小児科疾患産婦人科疾患感染症


今回扱う論文
Association of Maternal SARS-CoV-2 Infection in Pregnancy With Neonatal Outcomes
JAMA. 2021; 325: 2076-2086

 

 

はじめに

 

 今回は、出生コホートを用いて、母体の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染と新生児予後の関連を検討した論文1)を紹介します。

 

その中で、著者らが関連のメカニズムを深く分析するために用いた媒介分析(mediation analysis)を解説します。

 

 

妊娠と出産にみられるSARS-CoV-2感染の影響
 

 世界中で感染が拡大している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ですが、妊産婦への影響も非常に大きなトピックであり、研究報告が徐々に蓄積されてきています。

 

妊娠中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症による母体予後への影響に関するsystematic review/meta-analysis2)では、6例に1例が重症化し、4例に1例が早産となっていました。

 

死亡率は2%で、重症化の有意なリスクに肥満、喫煙歴、糖尿病、妊娠高血圧腎症などが挙げられています。

 一方で、母体のSARS-CoV-2感染による新生児予後への直接的、間接的な影響は不明な部分が多いままでした。

 

 

媒介分析(mediation analysis)とは
 

 今回紹介する論文では、出生コホートを用いた観察研究の中で媒介分析を実施しています。

 

媒介分析とは、単に「ある曝露因子がアウトカムに影響を及ぼすかどうか」だけでなく、「因果関係のメカニズムがどうなっているか」を検討する場合に利用される手法です。

 今回の論文では、「母体のSARS-CoV-2感染がどのような経路を介して新生児の予後へ影響を及ぼしているか」を検討するために媒介分析が用いられています。

 

つまり、「母体感染による直接的な影響」「母体感染が早産や他の合併症を引き起こすことによる間接的な影響」などの関連性の強さを検討したということになります。

論文の概要

 

スウェーデンの大規模出生コホートデータベースを解析

 

 この論文では、スウェーデンのSwedish Pregnancy Register、Neonatal Quality Register、Register for Communicable Diseasesという3つのデータベースを、母親と新生児の個別IDを用いて連結しています。

 

これにより、母体、妊娠、出産の背景因子に加えて、母親が妊娠中ないし出産後1週間までにSARS-CoV-2に感染したかどうか(PCR陽性の有無)の情報を取得できています。

 なお、スウェーデンでは、2020年2月からCOVID-19症例を全例登録開始しているとのことです。

研究対象者と調査期間、曝露因子とアウトカム 

 

 対象症例は、2020年3月11日から2021年1月31日までの間にレジストリに登録された全分娩とその新生児としています。

 

なお、妊娠期間は、very preterm(妊娠32週0日未満の早産)、moderately preterm(妊娠32週0日-34週6日の早産)、near-term or term(妊娠35週0日-41週6日)、postterm(妊娠42週0日以降)の4つに分類されています。

 曝露因子は「母体のSARS-CoV-2感染」として、妊娠中ないし出産後1週間までの感染と設定しています。

 主要アウトカムについては、「本研究は探索的にデザインされたものであり、主要アウトカムは事前に定義しなかった」と記載されており、新生児のアウトカムとして12種類の疾患・状態(新生児蘇生、呼吸障害、循環障害、院内死亡、入院期間、新生児のSARS-CoV-2感染など)を設定していました。

 

なお、先天性の構造異常(birth defect)はアウトカムに含まれていません。

主解析の統計手法

 

 この論文では、因果推論のため傾向スコア分析を実施しています。

 

感染妊婦から産まれた新生児は、非感染妊婦から産まれた新生児(最大4例)と4つの因子(経産回数、多胎妊娠、医療機関の地域、傾向スコア)を用いてマッチングされました。

 傾向スコアは、従属変数を「母体のSARS-CoV-2陽性」として算出〔母体年齢、妊娠初期BMI、教育水準、出生国、喫煙、パートナーとの同居、妊娠前の合併症(高血圧、心血管疾患、糖尿病、肺疾患、腎疾患を含む複合指標)からロジスティック回帰モデルを利用〕されています。

 

なお、傾向スコア算出時に、欠損値は欠損カテゴリーを作成して代用しています(いずれも1-2%未満と少数でした)。

 最終的に、マッチング後にオッズ比と95%信頼区間を推定しました。

媒介分析:母体SARS-CoV-2感染による新生児アウトカムへの影響経路
 

 媒介分析は、平たく言えば、「曝露因子によるアウトカムへの全影響」のうち「媒介因子を経由しない直接的影響」と「媒介因子によって媒介される間接的影響」の程度を知るために実施される分析手法です。

 詳細な分析手法については本記事では割愛しますが、論文中ではEtminanらによる論文3)が媒介分析の引用文献として紹介されています。

 

この引用文献は、理論の説明というよりは臨床医に向けた因果推論の解説といった内容になっており、比較的分かりやすいものになっていると思います。

 論文では、オッズ比と95%信頼区間の推定に加え、媒介分析として「母体SARS-CoV-2感染と新生児アウトカム(あらゆる呼吸器疾患)との間にあるメカニズム」を検討しています。

 

今回は、早産(妊娠期間37週未満)、分娩様式(帝王切開)、出生5分後のアプガースコア4点未満(新生児仮死)の3つの経路(媒介因子)の影響度を分析し、いずれかを経由した「間接的影響」と、いずれとの関連もない「直接的影響」の程度を評価しました(論文中のFigure 1を参照)。

得られた結果
 

 対象の新生児8万8159例(女児49.0%)のうち、2323例(1.6%)がSARS-CoV-2陽性の母親(2286例)から出生していました。

 傾向スコアマッチングでは、両群で患者背景のバランスが概ね良好に取れ、SARS-CoV-2陽性妊婦の新生児では対照群の新生児に比べて、複数の新生児アウトカムの発生が有意に多い(出生時の挿管、呼吸窮迫症候群、呼吸器系疾患、高ビリルビン血症など)という結果でした。

 

新生児死亡は曝露群0.30%と対照群0.12%で、統計学的に有意差は認められませんでした。

 媒介分析では「早産」が最も強い媒介因子であることが分かり、母体のSARS-CoV-2感染と新生児呼吸器疾患との推定関連性の89.3%を媒介していました。

 

そして、母体のSARS-CoV-2感染によるアウトカムへの直接的影響はなかった(=完全媒介)という結果でした(論文中のeTable 3を参照)。

私の視点

 

大規模コホートデータベースを用いた観察研究での因果推論

 

 近年、出生コホートデータベースを活用した周産期領域の研究が世界的に増えてきており、スウェーデンの他にノルウェー、カナダ、アメリカ、韓国などからの報告が目立ちます。

 

残念ながら日本では、妊婦と新生児のデータを個人ベースで連結できるデータベースやその仕組みが十分に整っておらず、同様の研究を実施することは難しい状況です。

 論文では、曝露群と対照群を比較することで、曝露因子(母体のSARS-CoV-2感染)によるアウトカム(新生児予後)への影響を検討しました。

 

このように、ある集団で曝露や治療介入などがアウトカムに及ぼす効果や影響を推測する方法を因果推論と呼びます。

 このとき、リアルワールドデータやコホートデータを用いた観察研究の場合、種々のバイアス(特に交絡)が問題となります。

 

例えば、曝露群の方が重症患者を多く含んでいるような場合、そのままアウトカムを比較すると正しい因果推論はできません。

 

このため、いかに種々のバイアスを取り除くかが重要なポイントとなります。

 この研究では、傾向スコアマッチングを用いて2群間の患者背景を近似させることで、可能な限りバイアスの減少を試みています〔傾向スコアの解説については、本連載『第1回 傾向スコア分析(その1)』、『第2回 傾向スコア分析(その2)』参照〕。

 

なお、もともと傾向スコアは一般的には「治療などの介入行為」に対して算出され、マッチング等に用いられますが、今回のように介入行為ではなく「曝露因子」に対して算出され、分析に活用する事例も増えてきました4,5)。

 

ただし、このような曝露因子に対して傾向スコアを用いる場合には、傾向スコア分析を実施する上で遵守すべき前提条件(傾向スコアの算出には、曝露因子の発生より前の時点の共変量しか利用できない、など)をどの程度満たしているかに注意が必要です。

因果推論で得られた結果を深く考察するための媒介分析

 

 この研究の特徴に、因果推論(傾向スコア分析)の後に媒介分析を実施している点が挙げられます。

 

前述の通り、媒介分析は「曝露因子がアウトカムに及ぼす影響のメカニズム」を検討するために実施します。

 今回紹介した論文では、媒介分析によって、

 

1)母体のSARS-CoV-2感染自体による新生児アウトカムへの直接効果は小さい、

 

2)母体のSARS-CoV-2感染が引き起こす早産によるアウトカムへの間接効果が最も大きい

 

――の2点が浮き彫りとなりました。

 

つまり、母体が妊娠中や分娩直後に感染したとしても、感染自体が胎児へ悪影響を及ぼす(ウイルスが胎盤を通じて胎児へ感染するなど)わけではなく、あくまでも早産が増えることが新生児アウトカム悪化に関与しているという示唆が得られたと考えられます。

 このように因果効果のメカニズム(媒介因子の存在と影響度)が分かることで、臨床現場での治療戦略や、患者さんへの説明などに応用できる可能性が高まるでしょう。

 大規模データベースを用いた観察研究を報告する論文数は年々増加しており、様々な統計手法を活用した因果推論も数多く実施されています。

 その中で、因果効果のメカニズムを分析することは、臨床に応用したり次の研究へつなげたりするために、多くの領域で意義があると思います。

 

研究者も、臨床医も、媒介分析をもっと活用できるようになることが求められているのかもしれません。

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妊婦さんがコロナに感染しても、感染自体が赤ちゃんへ悪影響を及ぼすわけではなく、早産によって新生児に問題が生じるということですね。

 

知り合いの産科の先生が、「妊婦さんがコロナに感染しても普通に分娩してるし、赤ちゃんも全然大丈夫やねん」と言っておられましたが、これからもそうであってほしいです。

 

私の患者さんでコロナ妊娠ラッシュなので、皆さんがどうか無事に出産できますようにお願い

 

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