何をしてても痛くて生活に支障を来すようになった産後の切れ痔 | みのり先生の診察室

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5万人以上の「オシリ」を診察してきた
肛門科専門医の女医がつづる
お尻で悩める人へのメッセージ

今日の患者さんは30代女性。

 

授乳中なので赤ちゃんを連れて東京から受診されました。

 

今までの経過

10代後半からたまに切れて出血していた。

 

20歳頃に見張りイボが出来た。

 

それからも切れたり、たまに出血したりを繰り返し。

 

28歳の第1子妊娠を期に便秘になり、後期には毎日のように切れ、便器が血だらけになった。

 

産院から注入軟膏をもらい毎日ぬっていた。

 

産後2か月ほどし悪化。

 

お尻を押さえないと痛くて出せないほどに。

 

ネットで調べ痔専門の鍼治療をして通っていたのに、切れては治りの繰り返し。

 

30歳の第2子妊娠の際にまた便秘がちに。

 

毎日マグミットを飲み排便していた。

 

しかし出産してから痛みがひどくなり近所の肛門科を受診。

 

ヘモレックス、強力ポステリザン軟膏、マグミットなどで治療するも痛みはますますひどくなり、何をしてても痛くて生活に支障を来すようになったため受診を決意。

 

東京に住んでいるので大阪は遠いなぁと思っていたけれど、あまりの痛みに日常生活にも支障を来していたので生後2か月の赤ちゃんを連れて思い切って受診されました。

 

現在の排便と習慣

便は毎日出ています。 

 

マグミットを飲んでいるので軟便で細いです。

 

でも出始めだけは硬い

 

しかもコロコロ便が出ることも・・・。

 

残便感もあり。

 

便通に良いと思ってオリゴ糖やアロエベラなどの健康食品も飲んでいます。

 

ウォシュレットは自宅でのみ排便後の洗浄に使っていましたが、当院のブログを読んでからは洗うのをやめられていました。

 

ウォシュレットを使わないと紙に何度も便が付いてくるため5〜7回拭いている。

 

入浴時には石鹸などの泡をつけてお尻を洗い、シャワーを肛門に直接当てて洗い流しています。

 

紫雲膏や馬油なども肛門につけたりしたことがある。

 

診察の結果

肛門周囲の皮膚は洗い過ぎ、拭きすぎで赤くなっています💦

 

割と大きな見張りイボが前方と後方に2カ所あります。

 

前方の見張りイボは皮膚のたるみのようにやわらかくなっていますが、後方の見張りイボはコリッとして硬いです。

 

相当前から切れ痔を繰り返し慢性化していると思われます。

 

肛門鏡で確認すると見張りイボの奥には深い切れ痔(裂肛)がありました。

 

指を中に入れて診察すると肛門が少し狭くなっています。

 

そして予想通り便があります💩

 

マグミットやアロエを飲んでいるため軟便です。

 

便を出す坐剤を入れて排便してきてもらいました。

 

そのあともう一度診察。

 

ちゃんと1回の坐剤でキレイに出し切れています✨

 

そして肛門が狭くなっているのでSザルベで肛門マッサージをして、明日から自分でやってもらうようやり方を指導。

 

坐剤の入れ方も具体的に指導しました。

 

治療はシンプル。

 

痔の薬も下剤も使いません。

 

  1. 坐剤で便を出し切ること
     
  2. Sザルベで肛門マッサージ
     
  3. 温水洗浄便座をはじめ肛門を洗うことを禁止
     
  4. 市販薬を含め痔疾薬の使用を中止
     
  5. マグミットやアロエなどの下剤の中止
     

遠方で赤ちゃん連れということもあり次回の診察は1か月後としました。

 

治療経過

今まで良かれと思っていた鍼治療もマッサージもウォシュレットも全て逆効果だったことを知りショックだった反面、もっと早く行けば良かったというのが正直な感想だったそうです。

そして想像していなかった治療法だったようで(笑)。

今まで肛門科でもらった薬も全く使わず、え?これだけ?というシンプルなものだったと。

 

私たちにとってはこれがスタンダードな治療なんですけどね。  

 

排便後に坐剤を入れると毎回便が出ます。

 

しかも結構たくさん出ます😱

 

やはり残っていたんですね。

 

しかも1回の坐剤だけでは出し切れていない時もあって、肛門マッサージをすると指に便が付くので、そういう時はもう一度入れてもらいました。

 

私の傷は古く、最初の2週間ほどは毎日痛かったですが、日を追う毎に傷も治ってきて痛みもなくなり、初回の診察から一度も切れなかったと!

 

そして患者さんが

 

「もっともっとたくさんの悩んでいる方に知って欲しいと思います!!そして早く行って明るい生活を送ってほしいです。」

 

と言われました。

 

1か月後の受診

切れ痔(裂肛)は薄皮状態で治っていました。

 

まだ完璧とは言えない状態ですが、痛みや出血などの症状は消失。

 

快適に生活出来るようになっています。

 

洗うのをやめたので肛門周囲の皮膚の赤みもなくなっています。

 

坐薬にもすっかり慣れて習慣化できていました。

 

肛門マッサージを頑張られたようで狭かった肛門がだいぶ広がっていました。

 

これなら手術しなくても良さそうです。

 

このまま坐剤も肛門マッサージも続けてもらって半年後に来てもらうことにしました。

 

生後2か月だった赤ちゃんが生後3か月になっていて、成長していました👶

 

半年後の受診

もう全く切れなくなっていました。

 

あれだけ辛かった動けないくらいの痛みと出血も全く起こっていません。

 

坐剤も肛門マッサージもまじめに毎日続けておられます。

 

診察すると・・・

 

なんと!

 

硬かった見張りイボがやわらかくなっています!

 

そして指を入れると肛門が広がっています!

 

フワッとしたやわらかい肛門になっていました。

 

もう肛門狭窄もありません。

 

見張りイボ皮膚のたるみ(皮垂になり残っていますが、気にならないので切除の必要もありません。

 

今日で完治終了!

通院も終わりです!

 

切れ痔(裂肛)は治りましたが、便秘(出残り便秘)は治っていません。

 

だから坐剤は継続です。

 

そして肛門が再び縮んで来ないように1日1回、Sザルベを肛門の中と外にぬることも、お尻ケアとして継続してもらうことにしました。

 

次回は1年後。

 

お尻健診で来てもらうことにしました!

 

「次回は家族みんなを連れて大阪観光を楽しみたいと思います。」

 

と来年は家族旅行を兼ねて大阪に来ようかなと帰って行かれました。

 

きっと赤ちゃんも大きくなって「赤ちゃん」じゃなくなって、歩いてるんだろうなぁ。

 

私からのコメント

気になった点をいくつか解説したいと思います。

 

この患者さんにもお話ししたのですが「痔を治す鍼治療」というのは医学的には考えられません。

 

しかも肛門や痔に鍼を刺す行為については危険です。

 

医師免許を持っていない無資格者が肛門の診察をしたり肛門に指を入れる行為は法的に禁止されています。

 

医学的に何の根拠もエビデンスもありませんので注意して下さい。

 

鍼灸師は肛門の診察も出来ないですし、肛門の穴や肛門の中に鍼をする行為は考えられないと、私たちが患者さんを紹介したり自分もお世話になっている鍼灸師、倉橋美保子先生がおっしゃっておられました。

 

痔を治す鍼にしても、病院でよく出されるマグミットなどの下剤にしても、肛門には効きません。

 

おなか(腸)には効きます。

 

腸に便が停滞して便秘をしている人には効果がありますが、出口(肛門)で便秘をしている痔の人には、飲み薬やサプリメントなど口から入るものは直接的な効果はありません。

 

だから何をやっても治療をしても切れ痔が治らなかったのです。

 

色々な病院を回ってから受診される患者さんの多くが私たちの提案する治療に衝撃を受けられます。

 

え?たったこれだけ? と😓

 

でも痔疾薬を使わなくても、Sザルベだけで切れ痔(裂肛)は治りますし、腸が動いている人には下剤も必要ありません。

 

そして切れ痔(裂肛)の人によくありがちなのが、痛いからやわらかい便を出すようにすること。

 

その方が一時的に痛みが楽になりますからね😓

 

便秘でもないのに便をやわらかくする薬を飲んで軟便ばかり出していると肛門が狭くなってしまいます。

 

大切なことは「便をやわらかくすること」よりも「便をスッキリ出し切ること」なので、出てくる便がやわらかくなくてもスッキリ出てればOKなんですよ。

 

残った便が傷を汚染すると、傷が炎症を起こし、見張りイボ肛門ポリープを作り、傷はどんどん治りにくくなり、慢性化すると傷の周囲が炎症で硬くなって傷が深くなり、肛門が狭くなっていきます。

 

そうなる前に治療すれば切れ痔(裂肛)なんて1週間たたないうちに治ります。

 

でもちょっと切れたくらいじゃ肛門科を受診しようなんて気になりませんから、皆さん、いよいよひどくなってから受診・・・となるワケです😓

 

だから本当は痔になる前に来て欲しい。

 

教えてあげたい。

正しい排泄。

 

そうすれば一生、痔にならずにすむかもしれない。

 

あなたはちゃんと排泄出来ていますか?

 

 

この患者さんが実際に書いて下さったアンケートはコチラ下矢印


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東京に住んでいるので、大阪は遠いなぁと思っていましたが、あまりの痛みに日常生活にも支障をきたしていたので、生後2ヶ月の赤ちゃんと思い切って行かせて頂きました。

 

今まで良かれと思っていた鍼治療もマッサージもウォシュレットも全て逆効果だった事を知り、ショックだった反面、もっと早く行けば良かったというのが正直な感想でした。

 

まだまだ薬を使って便を出していますが、便通が整うとこんなにも生活が明るくなるんだなぁと嬉しい毎日です。

 

早く自分の鈍感なお尻が治るよう、先生に教えて頂いたことを守っていきたいと思います。

 

 

想像していなかった治療法でした。

 

薬(今まで肛門科でもらった)も全く使わず、え?これだけ?というシンプルなものでした。

 

私の傷は古く、最初の2週間ほどは毎日痛かったですが、日を追う毎に傷も治ってきて痛みもなくなり、みのり先生に診て頂いてから一度も切れませんでした。

 

もっともっとたくさんの悩んでいる方に、知って欲しいと思います!!

 

そして早く行って明るい生活を送ってほしいです。

 

次回は家族みんなを連れて大阪観光を楽しみたいと思います。

 

みのり先生、ありがとうございました!!

 

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切れ痔(裂肛)についてのまとめ記事はコチラ下差し

 

切れ痔が治らない理由

 

手術を何度受けても切れ痔を繰り返す理由

 

切れ痔(裂肛)について

 

 


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