トイレが殺人現場?! | みのり先生の診察室

みのり先生の診察室

5万人以上の「オシリ」を診察してきた
肛門科専門医の女医がつづる
お尻で悩める人へのメッセージ

「トイレが殺人現場みたいなんです!」

と、排便後の便器を表現した若い女性患者さんがいました。

そう。

別に殺人事件があったわけじゃなくて、排便の時に痔で大出血して、トイレが血まみれになってるんです(;。;)

これだけ派手な出血は、痔の中でも「イボ痔(痔核・脱肛)」で起こることが多いです。

この女性患者さんもそうでした。

痛みもないのに血だけ出る

というのが典型的な症状ですが、イボ痔の根元が裂けたり破れたりすると痛みを伴うようになります。

便器が真っ赤になるような出血が毎日続くと、貧血になります。

だってオシリから血液がどんどん失われていってるわけですからね。

放置するとどんどん貧血がひどくなるわけです。

実際に、血液検査をすると、かなりひどい貧血の人が多いです。

貧血になると、体がだるくなったり、動悸や息切れがしたり、階段の上り下りをしただけで息が上がってしまったり、日常生活にも支障が出てきます。

歩くのもフラフラ状態で診察室に入ってこられた患者さんもおられました。

顔は真っ青、少し動くだけでフラッと倒れそうな状態です。

便器が真っ赤になるような出血だと、出血量が相当多いので、2~3週間くらい毎日続くと貧血症状が出てきます。

ところが、
そこまでいかない、
ポタポタ落ちるくらいだったり、
紙に付く程度の出血だと、
徐々に貧血が進むため、
自覚症状がない人もいます。

少しずつ貧血が進むので、体も慣れていくのでしょうか。

症状が出始めたときは、かなり重症の貧血であることも多いです。

blog79

診療所のセラピードッグ「ラブ」
後列の真ん中がラブです。
セラピー犬の認定条件・その3
「社会性」
どんな環境下に連れて行っても、
すぐその場になじむことができるかどうか?
嫌がったり怖がったりしないこと。




過去にお一人だけ、貧血が重症化して倒れ、救急車で運ばれて、輸血までされた方がおられました。

貧血の指標にする「ヘモグロビン」が通常であれば12~14くらいあるのですが、その方は2でした。

救急病院から当院を紹介され受診されました。

お聞きすると、何年も前から毎日、排便の時に出血していたそうです。

痛みもないし、何も困ってないから、痔を放置したんです。

貧血の治療は近所の内科で受けておられました。

痔のことは恥ずかしいから内科の先生には内緒です。

貧血が改善しないので、困った内科の先生は白血病を疑って検査をされたそうですが、いくら検査しても異常は見つかりません。

だって痔から出血してるんですもんね・・・(-_-;)

内科で貧血の治療をしても、一向に良くなりません。

そりゃそうです。

いくら薬で補っても、下(肛門)からじゃじゃ漏れ状態ですからね(-_-;)

痔の手術をして根本的に治療して、やっと貧血が治りました。

「漏れ」を止めないと貧血は治りません。

症状が軽ければ止血剤などの座薬や軟膏でおさまることもありますが、ひどくなると薬も効かなくなります。

痔で貧血になっている人は意外に多いです。

特に女性に多いです。

恥ずかしいからと内科の先生に黙っていたり、受診せずに家でこっそり痔を治そうと頑張っていたり・・・。

でも、出血が毎日続くと貧血になります。


体調が悪くなったりフラフラしてませんか?

最近、階段の上り下りがつらくないですか?

顔色が悪いって周りの人から言われてませんか?

動悸や息切れはしてませんか?

疲れやすくなってませんか?


たかが「痔からの出血」と侮っていると、知らず知らずの間に貧血が進行していることがあります。

肛門科を受診するのが恥ずかしいのであれば、せめて内科で貧血がないかどうか血液検査でチェックだけでもしてくださいね。