その薬で本当に合ってる? | みのり先生の診察室

みのり先生の診察室

5万人以上の「オシリ」を診察してきた
肛門科専門医の女医がつづる
お尻で悩める人へのメッセージ

第43号
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オシリに異変を感じたら「痔」・・・
と思い込んでしまう人が多いです。

「痛み」も「腫れ」も「でっぱり」も「かゆみ」も
症状が違っても、とにかく「痔!」って思っちゃうみたいです^_^;

で、「痔」ってどんな病気か知ってます?

医学的には「痔」は一つの疾患を指すのではありません。

肛門周囲の疾患の総称・俗称です。

主に「痔」には「痔核」「裂肛」「痔瘻」の3つがあります。

「痔核(じかく)」というのは俗に「イボ痔」と呼ばれているものです。
痔核が外に飛び出している状態を「脱肛(だっこう)」と言います。

「裂肛(れっこう)」「切れ痔」のことです。

「痔瘻(じろう)」は俗に「穴痔」を呼ばれているようです。

一言で「痔」と言っても色々あるんです。
一つの病気じゃないんです。
どの種類の痔であるかによって対処や治療も異なります。

だから、

ひとまとめに「痔」ってしないで~!

って思うんですけど・・・^_^;

今日、海外の患者さんから頼まれて診断書を英語で書いたんですけど、
医学英会話辞典で「痔」と引くと「hemorrhoid」とだけ記載されてました^_^;

えっ?!
それって「痔核」のことやん!
裂肛や痔瘻は???
載ってない-!!(・O・;

正直ビックリしました。
専門書でもその程度の扱いなのね・・・と悲しくなりました^_^;

ま、医療従事者でもこの程度の認識ですから、
シロウトの一般人には「痔」って言われても分かりませんよね^_^;

そして昨日に引き続き、薬局の話です。

オシリに異変を感じた患者さんがとる行動とは・・・

「肛門科に行こう!」じゃなくて「薬局で痔の薬を買おう!」なんです^_^;

だって、恥ずかしいし恐いし、行きたくないですよね・・・^_^;

そして薬局に行くと痔の薬がたくさん並んでいるわけです。

座薬もあれば皮膚科でもらうような大きなチューブに入った軟膏らしきものもあるし、
注入するタイプのものもあります。

どれを買おうか・・・
どれを買ったらいいのか・・・

悩みに悩んで購入されることが多いのが、大きなチューブタイプの軟膏です。

それを指に出して肛門に塗っておられるんです。

で、症状が良くなったのか?

いえいえ。
良くなってたらここに来てませんよ^_^;

と患者さん。

そりゃそうだ!
治らないから受診されてるわけです^_^;

なぜ良くならなかったのか?
効かない薬が悪いのか?

いえいえ。違います。

使い方が間違ってるんです^_^;

だって考えてみて下さい。
例えば裂肛(切れ痔)。

どこが切れてます?
肛門の中なんですよ。
硬い便が通るときに肛門の中が切れてるんですよ。

なのに薬をどこに付けました?

肛門の外ですよね?^_^;

患部に全然、薬が付いてませんよね?^_^;

だから一生懸命、穴の周りに薬を塗っても何も変わらなかったんです。

中に入れるタイプの「注入軟膏」や「座薬」の方が適切だったんですが、
座薬は傷に当たって痛いので挿入しにくいという人も多いです。

また、注入軟膏の挿入の仕方によっても傷に当たります。

挿入するときに潤滑ゼリーのようなものを先端に付けるとスッと入りますが、
何も付けないと入れにくいですし、結構痛いです^_^;

肛門科を受診して、自分に合った薬を合わせてもらうのも大切だと思います。

軟膏の種類にも色々ありますし、使い方も患者さんによって変わります。

例えば右側に傷があるのであれば左側から沿わせて入れると楽に入ります。

診察すれば傷の位置まで分かりますので、そこまでアドバイスできます。


診療所のセラピードッグ「ラブ」
生まれて間もない頃のラブです♥
とってもちっちゃかったです(*^_^*)




また多いのが、

オシリのかゆみに市販薬を塗って、余計にかゆくなったというケースです。

軟膏でかぶれることがあります。
「痔用」の軟膏を塗っても、皮膚疾患なのであまり効果がありません。

またよく効くからと、ステロイド入りの軟膏をずっと使っていると、依存性も生じますし、副作用も出てきます。

だからダラダラ使い続けないことです。

症状がある時だけ塗って、良くなったらぱっとやめる・・・

これも良くないです。

このような使い方をしていると、最初効いていた軟膏がだんだん効かなくなっていきます。
そしてどんどん強い薬に手を出すようになります。
気がつくと薬を塗っている期間の方が長くなってきます。
そうやってステロイドをやめられなくなる人が多いです。

だから安易に薬に手を出さないことです。

誤った自己診断・自己治療で、かえって症状を悪化させているケースも多いです。

きちんと専門家に診てもらって、ご自分に合った薬を出してもらいましょう。

そもそも、薬が必要かどうかも分かりません。

痔であるかどうかすら、分かりません。

穴の中までは自分で見ることが出来ませんから、肛門科でしっかり診てもらいましょう。

肛門科がもっと身近で受診しやすくなれば嬉しいです(*^_^*)