(408)大問題(便秘の話) | 大阪肛門科診療所 院長 佐々木いわおブログ──『過ぎたるは及ばざるにしかずだよ、佐々木君』

大阪肛門科診療所 院長 佐々木いわおブログ──『過ぎたるは及ばざるにしかずだよ、佐々木君』

「切りすぎた肛門は元には戻せないんだよ・・」故隅越幸男先生の言葉をいつも心の真ん中に置いて「切りすぎない手術」「切らない肛門診療」を追求する肛門科専門医が、手術のこと、治療のこと、日常のことを、綴ります。

 

読者の皆さんの多くは、今回のタイトルを見て

凄く期待していると思います。

予想通りの盛り上がりを見せると思いますが、

要注意です。

下ネタが苦手な人は

読まない方がいいかも。(笑)

あと、良い子は真似をしないでね。



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脳出血を発症し、戸惑いながらも、

前向きに、そして平和に

リハビリをこなしていた日々でしたが、

問題が起こりました。



予兆は入院から7日目に始まりました。
その日は1日、排便がありませんでした。

5日目と6日目には

それなりに排便はあったけど… 

看護師さんは毎日
「今日は排便がありましたか」
とチェックしてくれていました。

「今日は出ませんでした。

まぁ、食事も軽いし、仕方ないかな。」
と言うことで、翌日へ。




次の日(つまり8日目)、また排便なし。

私の場合、2日出ない事は非常に稀です。

その日は看護師さんのチェックの時、
「今日も排便がなかったんです。

心配なので下剤ください。」
と言って下剤を処方してもらいました。

しかし、出てきた下剤は当然のことながら

酸化マグネシウムです(笑)。

ウチのブログで評判の(?)酸化マグネシウム

決して悪い薬じゃないんだけど、

詰まった後で飲んでも効かないんですよね〜。

さらに、

大量の硬い便が詰まっている

(便栓塞といいます)と、

こいつのせいで柔らかくなった新しい便が、

古い硬い便の隙間をすり抜けて、

便漏れの原因になる可能性があるんです。

しかし、

そんなことは私には関係ないはず、

という根拠のない自信に満ちて、

下剤の効果を待ちつつ、

眠りにつきました。

 

 


9日目です。

朝食後に期待通り便意がありました。

「おお、キタキタ。」
と喜んで便所へ。

しかし、普通に便意はあるのですが、

肝心の便は出ません

「後から出るかも知れん。」
と、希望的観測を無理矢理作って、

諦めてトイレから出ます。

このとき初めて、

「やばい、便秘っぽい・・・」
と不安が頭をもたげました。

看護師さんチェックの時に、
「今日も排便はありませんでした。

必要だったら浣腸ってできますか?」
と尋ねました。

 

「必要があれば先生の指示でできますよ。

でも、本来はあまりやりたくないですね。」
とのお返事。

当然ですね。

「血圧の変動が怖い病気なんだから。

浣腸なんて俺が主治医でも

やりたくないわ・・・」
と、常識を共有している安心感と、

便が出せない不安

ないまぜを抱えたまま翌日を迎えました。

 

 


10日目。

やばい。
何をしていても、

うんこの事ばかり考えている。
本を読んでいても、食事を食べていても、

「すぐそこまで来てるんだよなぁ・・」


ほんとにやばい。

昨日一応相談はしたけれど、

他人に浣腸してもらうのは

やっぱりちょっと恥ずかしい。
恥ずかしいというより、

自尊心が傷つくという感じ。

 

やはり、

排便の自立というのは重要なんだなぁと

かつて教科書で読んだ内容に

1人で納得しつつ、

思案すること約1時間

10時過ぎ、恥を忍んで看護師さんに相談。
 

「絶対便がすぐそこまで来てるんだけど、

自力で出せない感じです。

浣腸してもらってもいいですか?」

 

「分りました。

先生の許可を取りますのでお待ちください。」

おお、助かった。
かつて

「寝ても覚めても便のことばかり考えている」

と言っていた患者さんがいたけれど、

こういう事なんだな。
幸い俺はまだうんこでパンパンではないけど

勉強になったな。

そんなことを考えていたら、

11時過ぎに看護師さんが

浣腸を持ってきてくれました

「佐々木さん、トイレまで遠いけど大丈夫?」
私の部屋はトイレまで

一番遠い部屋だったのです。

 

「いつも浣腸を使ってましたから

慣れているんで、大丈夫だと思います。」
と軽く返事をしました。

このときの浣腸の操作がどんな風だったか、

思い出せません

 

型通りにベッドの上で

横になって浣腸してもらったのか、

便所の中で中腰でやってもらったのか、

いずれかだと思います。

 

浣腸が恥ずかしかった記憶はありません

 

それほど切羽詰まっていたのか
あるいはその後の記憶が強烈すぎたのか。(笑)

 


とにかく浣腸を入れてもらって、便所の中。

 


出したい、出したい・・

もう我慢できん。えいっ。


シューッ。

 

???
何?液だけ?
うんこが水に落ちた音がしない・・


便器の水を覗くと、うんこはなく、

きれいな水だけがあります。


まさかの空振り。(笑)


「これはやばい。予想以上にやばい。

まさかの便栓塞か?」

便栓塞とは上でも述べた通り、

硬い便が出口周辺で詰まってしまい

自力で便が出せなくなった状態のことです。

 

ついさっきの甘い考えを反省しました。

「うんこでパンパンやん、オレ(汗)」

 

「後から出せるかな?」
と一瞬考えますが、即座に打ち消します。

私は仕事柄、便栓塞の患者さんは

たくさん見てきました。
通常詰まってしまった便は

誰かが掘り出さねばなりません
この掘り出すことを摘便といいます。

摘便せずに

運良く自力で出せる場合もありますが、

出せなければ

待った分だけさらに辛くなるのが便栓塞

という病気です。

「・・・今出すのが1番いいよな。」

当然の結論です。(笑)

普通の病院では、

医者が摘便をすることはまずありません。
お願いすれば、当然

看護師さんが摘便をしてくれるはず。

自尊心との葛藤が始まります。
恥ずかしい、排便の自立・・・。
問題とも、そうでないとも言えそうなことの

堂々巡り。
 


ちなみに、普段私が摘便の時に使う道具は
・ゼリー
・摘便用のヘラ
・手袋

です。

摘便用のヘラはこの病院にはもちろんありませんが、

特殊な技術で、普通の医者は使いませんし、

もちろん看護婦さんも使いません。

ゼリーは潤滑剤です。
なくてもなんとかなるけれど、ちょっと痛い。

そして手袋。
肛門の診察、処置には必要不可欠。


ここまで考えて、ふと思ったのです。

「はっきり言って、

今この病院にいる人間の中で、

一番摘便がうまいのは俺だよな。」

当たり前です。
普段からある意味

それを自慢にしている位です。(笑)
右手が使えないからといって、

経験までなくなるわけではありません。

そう、

自分で摘便できれば何も問題はないはず。

今なら浣腸の直後ですから、

グリセリンが肛門に付着しています。
グリセリンはゼリーの成分の1つで、

潤滑剤でもあります。
よって、ゼリーはなくても問題なし

・・・しかし、手袋がない!
このシチュエーションは経験がありません。

 



ぐぬぬ・・・




上に書いた
まさかの空振り。(笑)
からここまで高速で考えること約1分弱

もう一回浣腸してもらうと言う選択肢は

もちろんありました。
しかし2回目の浣腸は、

ある程度便を出してからする方が

効率が良いのです。

しかも2回目の浣腸をやってくれるという

保証はありません。

 


・・・・。

 


私はおもむろに

トイレットペーパーをガラガラと引っ張り

大きめの束を5つぐらい作りました。

 

次に、手洗いの蛇口をひねり水を出します

 

そして、左手の表裏を目で見て確認、

そのまま人差し指を肛門に挿入、

うんこを尻の穴から引っこ抜きました。

 

コロコロのうんこが、2、3個出ました。
が、全然足りません。

「ええい、毒を食らわば皿までよ。」

 

ひとたび触ってしまえば、

もう怖いものはありません。(笑)


何度か肛門の中に指を入れ、

自分で便を摘出したのです。

 

 

(注意)決して真似をしないでください。

 

 

後始末が秀逸でした。

 

指についたうんこを

用意していたトイレットペーパーの束で拭い、

出しっぱなしにした水で手を洗います。
我ながら事前の準備が完璧でした。
何も考えずに素手で摘便したら、

どこも触れない。(笑)

 

我ながらプロだなぁと思ってしまいました(笑)


手を洗うのも、

左手だけですからうまく洗えません。
時間をかけてしっかりと洗いました。

ちなみに、

うんこだけでなく血もついていました。
肛門か直腸を傷つけたのですね。
「やっぱり自分でやる摘便って難しいな」
というのが、正直な感想です。

お腹、と言うよりお尻の感覚は、

随分マシになりました。

 

 


部屋に帰り、看護師さんに報告します。
「浣腸では出なかったので、

結局、自分で摘便しました。」

 

看護師さんも
「あー、佐々木さんはご専門だから(笑)」

「もう一回浣腸してもらえますか?」
と恐る恐る尋ねると、

主治医の了解を得て

やってくれることになりました。

「浣腸を入れる前に、

便が残ってるかどうか確認しますね。」
と直腸指診(肛門から指を入れる診察)。

 

「・・・これだよ、これ!

最初に絶対やんなきゃダメでしょ。

危ないよ。」
と、看護師さんにアドバイスしたかどうかは

忘れました。(笑)
※理由は看護roo!の私の記事を参照してください。

 

 

 

 

書いているうちに自分で盛り上がってしまい、

思いのほか事細かな描写になってしまいました。

 

尾籠な話にお付き合いいただき

ありがとうございます。

 

記憶に残っているのは、このぐらいです。

 

 


ただ、私の記録には、
11:20〜 浣腸+自己摘便、

     ナースにより摘便、再度浣腸
と、書いています。

なんだ。

結局は看護師さんに摘便してもらってんじゃん